年収800万円、上場企業勤務の59歳・定年直前サラリーマンを襲った悲劇…絶望の家族を救う〈特別な年金〉に涙「まだ、生きていていいんですね」【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月8日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
ストレスフルな現代社会、誰もが定年まで健康に働けるとは限りません。しかし、定年前の本意ではない離職は「老後破産」に直結する可能性も……。そこで知っておきたいのが、60歳よりも前にもらえる〈特別な年金〉の存在です。定年前にうつ病を発症したAさんの事例を通して、詳しくみていきましょう。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが解説します。
身体に不調が見られるようになった男性会社員
現在59歳のAさんは、妻Bさんと暮らしています。以前は都内の上場企業に勤めており、当時の年収はおよそ800万円でした。しかし、いまは働いていません。きっかけは5年前に息子のCさんを交通事故で亡くしたことでした。
愛するひとり息子を奪われたAさんの喪失感は計り知れません。しかし、そんなAさんのことを会社や仕事は待ってくれないほど、日々慌ただしくなりました。
毎日、日常業務をこなさなければならないのはもちろんのこと、ここ数年間は社内の組織再編などが原因でAさんや周りの人の異動も頻繁にあり、新しい仕事内容にはなかなか慣れず、上司との人間関係もうまくいかないことが多くなりました。
さらに、私生活においては、もともと険悪だった親戚とのトラブルも発生してしまい、Aさんにはストレスが重なります。
やがて、58歳を迎えたころ、Aさんは身体の不調を起こすようになり、頭痛やめまいに悩まされるようになりました。
うつが原因で出勤できなくなった
体調不良が続くため、当初内科を受診していましたが、医師からは「特にこれといった異常はみられない」と言われたため、「医者がいうならそうなんだろう。体に悪いところがないなら無理さえしなければ何とか乗り切れるだろう」と仕事を続けようとします。
しかし、それからしばらくあと、仕事でAさんの深刻なミスが発覚。ミスを追及されたAさんはパニックに陥り、その場で嘔吐してしまったそうです。早退したAさんは、翌日から会社へ行けなくなってしまいました。
そこで今度は、内科の先生の紹介で精神科に行くことになります。すると、医師からうつとの診断を受けました。Aさんは出社できる状況になく、そのまま会社を休職することになります。
順調にいけば60歳の定年後も再雇用で65歳まで勤務する予定だったため、「もう働けないのか……」「生きる気力までも失われそうだ」と、途方に暮れるAさん。
妻Bさんに相談したところ、まずは今後の生活に対するストレスを軽減させるためにも、1度専門家に相談してアドバイスをもらおうということに。そこで、妻の知り合いを通じてFPを紹介してもらい、今後の家計について相談することにしました。
定年は延びている一方、ミドルシニアの離職は増加傾向
Aさんからことの経緯を聞いたFPは、まず「障害年金の請求」について説明しました。
「Aさんのようなミドルシニアの離職が増えています。なるべく長く働けることが最良ですが、それが難しくなった場合にも、あきらめることはありません。障害年金の対象となれば収入を得ることができます。
また、Aさんは現在休職中ですが、入社以来、厚生年金に加入しています。そのため、初診日の証明ができれば、障害等級3級で障害厚生年金が、より重い障害等級2級か1級の場合、障害基礎年金と障害厚生年金が受けられるようになります」
この説明を聞いたAさんは、通っている精神科の先生にも話をし、妻Bさんとともに年金事務所へ相談に行きました。そして、そこで障害年金について詳細な案内を受け、請求できる時期に改めて診断書など必要書類を整えて年金を請求。その審査には3ヵ月以上かかりましたが、障害等級2級と認定され、障害年金の支給の決定がされることになったのでした。
Aさんは年間「約250万円」の年金を受け取れることに
Aさんの場合、障害基礎年金と障害厚生年金が支給され、また、65歳未満の配偶者Bさんがいるため、配偶者加給年金も加算されます。
障害基礎年金は年間81万6,000円(2024年度)支給され、一方、厚生年金の加入記録に基づいて計算される障害厚生年金については、Aさんの場合は140万円弱支給される計算となりました。配偶者加給年金は年間23万4,800円(2024年度)となります。
また、年金とは別に年金生活者支援給付金の対象となり、年間6万円程度支給されることが判明しました。これにより、合計250万円程度となります。最初に内科を受診した日が初診日と認定され、その初診日から1年6ヵ月経過した日(障害認定日)より年金を受給できるようになりました。
休職してから健康保険制度より受けていた傷病手当金の支給は調整されるものの、障害年金などで年間250万円が見込めることになったAさんは、思わず「私はまだ、生きていてもいいんですね」「息子が自分に生きてくれと言っているようだ」と涙ぐみながら安堵の表情を浮かべていました。
結局、会社はそのまま退職することにはなりましたが、Aさんの障害年金と妻Bさんのパート勤務の収入でどうにか生活できるようになります。
不測の事態により仕事が続けられなくなってしまうこともあるかもしれません。その結果、給与収入が得られなくなるケースはありますが、公的な制度から給付を受けられる場合もあるため、必要な手続きは早めに進めましょう。
五十嵐 義典 CFP 株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役
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