日本株上昇…「円安」「半導体」よりも、さらに大きな要因【ストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月30日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
本記事は、マネックス証券株式会社が2024年9月26日に公開したレポートを転載したものです。
本記事のポイント
・為替は中長期にわたる円買いのピークアウト ・日米の金融政策は真逆ながらペースダウン ・「グローバル景気敏感株」の日本株に買いが向かう
為替は中長期にわたる円買いのピークアウト
9月25日公開記事『FOMCでトドメ…「円高の限界」が見えた理由【ストラテジストが解説】』で述べたとおり、日本株は上昇基調を鮮明にしている。記事ではこう述べた。
たかだかこの程度の円高修正でやや過剰反応ではないか、とも思えるだろう。実際にそのようなコメントも散見される。しかし、この市場が示した反応が示唆することは大きい。これでこの先の日本株の上昇シナリオが相当程度、確信度が高まったといえる。足元の為替の動きは円高一服というような短期的なものではなく、より中長期にわたる円買いのピークアウトだと考える。その背景は、唯一の円買い材料といっても過言ではない「日米の金融政策の方向感が真逆」というロジックが修正を迫られているからだ。金融政策の方向感が真逆であることに変わりはない。問題は、その進展速度が想定よりも緩慢になるということである。
日米の金融政策は真逆ながらペースダウン
FOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートで示された2025年の利下げ見通しは年末までの累計で1%。ざっくり四半期ごとに0.25%の利下げという示唆なら、そのペースは市場の期待よりゆっくりだ。今回の大幅利下げは「後手に回らない」ための予防的な措置であり、それによって米国経済は景気後退が避けられ、ソフトランディングの可能性が高まる。結果として長期金利は上昇し、ドルもサポートされるということになる。
日本の状況からも為替シナリオの修正要因があった。金融政策決定会合後の記者会見で上田総裁は「時間的余裕がある」と発言。換言すれば、円高になったいまは円高阻止の利上げを急ぐ必要はなくなったということである。
まとめると、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げを急がないし、日銀も利上げを急がない――金融政策の方向は真逆ながら、その進み方は大幅にペースダウンする見通しとなった。円高に歯止めがかかるのは当然だ。9月26日の東京外国為替市場で対ドルの円相場は一時1ドル=145円台に下落した。円高一服を受けて、自動車など輸出関連株が買われたほか、マイクロン・テクノロジー[MU]の決算を受けて半導体関連株も大幅高となった。
足元の日本株は円安、半導体などのテーマで上がっているように見えるが、もっと大きい背景がある。
「グローバル景気敏感株」の日本株に買いが向かう
まず、日銀の利上げが遠のく観測が市場で優勢になりつつあることが株高の根底にある。金利スワップ市場が織り込む政策金利は2025年12月でやっと0.5%。つまり、そこまで次の利上げはないと市場は見ている。これは円高にならない要因ということもあるが、もっと単純に低金利の継続という意味で株価の支えになる。
次に、米国の利下げは上述したとおり、もともと強い米国経済をさらにサポートし、ソフトランディング・シナリオを強めるだろう(個人的にはソフトランディングどころか、そのうちまた「ノーランディング」なんて話まで出るのではないかと思う)。
米国はようやく利下げを開始したが、世界の主要国はとっくに利下げモードに入っている。ドイツDAXやインドの株価指数も史上最高値を更新した。金融緩和による世界株高という様相だ。そして、そこに中国までが加わってきた。これで米欧中という世界のほとんどの国・地域で利下げが行われていることになる。不安心理が先に立つのは世の常だから仕方がない。そんなに景気が悪いのか、と悲観論もあるだろう。
しかし、考えてみてほしい。日本以外の世界中の主要国が金融緩和に舵を切っているのだ。早晩、景気の底入れ期待が台頭するだろう。そうなれば「グローバル景気敏感株」である日本株に買いが向かうのは、当然の流れである。
つまり、足元の日本株高の根底にあるのは、金融緩和による世界景気の底入れを先取りした動きである。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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