天井からの水漏れ…物件所有後の大規模修繕費「まさかの2,500万円」にめまい【不動産鑑定士兼税理士大家の実体験】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月11日 9時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
不動産投資における修繕リスク。新築でも中古でも、一定年数が経過すると、将来的な資産価値を維持していくためにも、修繕の必要が出てきます。そこで今回は、現役不動産投資家である不動産鑑定士兼税理士の沖田豊明氏が自身の賃貸経営の実例とともに不動産投資における修繕状況確認の重要性について解説します。
仕事から帰宅した入居者がドアを開けると…
築27年、利回り7%といわれて筆者が実際に購入した中古一棟マンションでの実例です。
このマンションの1階へ20代の会社員女性が入居してきました。入居からわずか2週間後、仕事を終えてマンションへ帰宅し、ドアを開けると自室がとんでもない有様になっていたのです。
なんと、部屋全体が水浸し。天井から水が漏れ続けているのです。女性は慌てて管理会社へ連絡しました。
水漏れの原因
1階と2階のあいだを通る給排水管のつなぎ目部分に穴が開いてしまい、水が漏れたようです。調べてみると施工不良などではなく、築年が古いための経年劣化が原因であることがわかりました。マンションの給排水管の耐用年数は一般的に20~30年といわれているため、妥当な時期といえます。
実際に管理会社の担当者が女性の部屋へ入ると、ベッドはダメ、服もすべてダメ、冷蔵庫もダメ……。甚大な被害を受けていることがわかりました。女性には一時的に別の住居を用意し、避難してもらうことに。修理のために2階にある真上の入居者のもとへ相談に行きましたが、運悪く法事で地方に帰省中。2日は帰ってこないことがわかります。早急な対応ができず、オーナーとしては踏んだり蹴ったりです。
困り果てながらも、なんとか対応し、次はお金の問題がやってきます。
保険会社からの請求「500万円」
当然、保険に加入していたため、女性の持ち物は保険ですべて弁償しました。しかし、一度は保険会社が当該入居者へ費用を支払うのですが、これは立て替えに過ぎません。
今回のケースでは、オーナーの建築物の管理不備と判断されました。そのため、保険会社から筆者に損害賠償請求があり、500万円を支払うことに。事故ではないため、こうしたケースでは保険会社からは補償がおりず、オーナーの責任となるのです。
余談ですが、この部屋の女性が水漏れの直前に50万円程度の高級美顔器を購入していました。「これも弁償してくれ」と言われたのですが、その女性の母親が美顔器を持って帰っていたのです。
「まだ使えるから母親が持って帰ったのではないか、だったら弁償の必要はないじゃないか」「いや、水漏れのせいで壊れてしまった」と揉めたのですが、結局美顔器も含めて弁償することに。今回弁償したもののなかで最も高価なものとなりました。
修繕状況の事前確認の重要性
中古不動産投資を行う際、物件視察をすれば表面上の瑕疵は見つけられたとしても、今回のような内部の経年劣化を見た目から判断することは当然不可能でしょう。
ではどうすればいいか。これはやはり、築年数が経過してきたら、壊れる前に取り替えていくしかありません。しかし、マンションの鉄筋や鉄骨、RC造の場合、給排水管はコンクリートに埋まっています。これをひとつひとつ剥がしていかなければなりません。
筆者の所有していたマンションの場合、築27年で13年ほど大規模修繕を行っていなかったため、2・3年以内には大規模修繕の必要がありました。全部の給排水管を順に修繕していった場合や外壁の補修を行った場合の見積もりを管理会社に出してもらいました。なんとその額は2,500万円。膨大な費用にめまいがしてきました。
中古物件を購入する際は、必ず修繕状況の事前確認をしましょう。直近で修繕が行われているか、行われていないとしたらいつ、どのくらいの修繕費用がかかるのか。中古物件の賃貸経営では、修繕費用のコストを踏まえた資金計画が大前提です。
中古物件の修繕リスク
購入前は高利回りを謳う家賃収入ばかりに目を奪われがちです。
しかし、当然リスクも存在します。中古物件の最大のリスクは修繕コストです。「割安な物件だと思って購入し、蓋を開けてみたら、中身はボロボロ。直すのに何百万円もかかってしまった」といったことになると、キャッシュフローを健全に保つことは難しいでしょう。特に、昭和56年5月よりも前に建築確認を取得している旧耐震物件やRC造の物件は劣化の可能性・修繕費用のリスクが大きくなるため、要注意です。
今回のような配管関係、そのほかにも屋上防水や外壁塗装、エレベーター、耐震関係などの修繕費用は高額になりやすいです。今回紹介した物件ではありませんが、エレベーターの修繕は見積もりをしたことがあります。エレベーターの寿命は約30年といわれているなか、筆者の所有物件に設置されていたエレベーターは26年が経過していました。そこでの見積もりは1,000万円といわれ、絶望したのを記憶しています。
過去の修繕履歴を事前確認し、キャッシュフローを正しく管理することを強くお勧めします。
監修: 沖田 豊明(沖田不動産鑑定士・税理士事務所)
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