現金のままではもったいない…現金を「不動産」に変えて相続税を軽減!不動産を活かした相続税の節税スキーム【相続専門税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月3日 11時15分
(画像はイメージです/PIXTA)
日本における相続財産の50%が不動産という統計データがあります。相続税の節税を考えたとき、不動産評価・不動産を活用した節税スキームに関する知識は必須といってもいい過ぎでないでしょう。現金を不動産に変える相続税の節税スキームについて相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。
相続税対策は不動産の評価で決まる?
「現金」として財産を持っていても、相続税の計算上その金額の100%評価となり、税負担は重くなります。しかし、「不動産」として持っていれば、財産評価を引き下げることができ、税負担を軽減することができます。相続財産となる現金を土地や建物に変えることで、相続税対策となるのです。
土地の評価を例に挙げれば、宅地の相続税評価は、市街地であれば「路線価」で計算されます。この路線価は実勢価格(=市場価格)の70〜80%程度といわれており、実際の宅地を1億円で買ったとしても、その評価は7,000万円から8,000万円程度となります。
また、家屋の相続税評価は「固定資産税評価額」で計算されます。この評価額は、毎年、各都道府県の役所から送られてくる納税通知書および課税明細書で確認することができます。
日本では、相続財産の約50%を不動産が占めているという統計データがあります。そうであれば、相続税額は不動産の評価によって決まるといっても過言ではありません。それだけに、不動産の評価を引き下げることができれば、相続において節税できる可能性が高くなります。
たとえば、更地を持っている場合、そこに賃貸アパートを建てると、その土地は更地から「貸家建付地」となり、評価を引き下げることができます。これは、賃貸物件の借り主に「借地権」および「借家権」が発生するため、土地の所有者といえども自由に処分できなくなり、また、処分する際にも立退き料の支払いが発生するため、その分だけ価値が減少するからです。
注意したい、資産価値の下落リスク
ここで、現金5,000万円と相続税評価5,000万円の更地(空き地)を保有しているケースを想定してみましょう。下記の図表をご覧ください。
このような場合、空き地になっている土地に賃貸アパートを建てることによって評価を引き下げることが可能となります。
すなわち現金5,000万円で賃貸アパートを建築すると、固定資産税評価額は建築費の概ね5割の評価となり、借家権割合は30%です。したがって、建物の相続税評価は、5,000万円×50%×(1‐30%)=1,750万円となります。
一方、土地については貸家建付地となりますので、借地権割合が60%の地域であれば、以下のように評価は約2割引き下がります。
5,000万円×(1‐借地権割合60%×借家権割合30%)=4,100万円
このように更地に賃貸アパートを建てることによって1億円あった財産は5,850万円(=1,750万円+4,100万円)まで評価を引き下げることができます。すなわち、4,150万円の評価引き下げによって、相続税負担を大きく軽減することができるのです。
しかし、不動産保有に伴うリスクには注意が必要です。すなわち、不動産の市場価格が値下がりするリスク、建物が古くなって、空室率が高くなったり賃料の引き下げを余儀なくされたりするなど、資産価値自体が大きく目減りするリスクです。
たとえば、銀行融資でアパート経営を始めたとしましょう。思いどおり相続税評価を引き下げることができ、そのうえ家賃収入があるため、当初は借入金を完済する勢いで経営することができるでしょう。しかし、地価が一転して急落した場合、保有する不動産の資産価値は下落し、家賃収入も減少することになります。最悪の場合、キャッシュ・フローが赤字となって家賃収入で借入金を返済することができず、資金繰りに行き詰まる事態に陥ってしまう可能性もあります。
不動産を活用した相続税対策は、節税効果の発揮だけでなく資産価値の下落リスクに注意しておく必要があるでしょう。
岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
この記事に関連するニュース
-
相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地の特例」とは?【相続専門税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月6日 11時15分
-
借地人が勝手に「借地権譲渡」して大トラブルに発展…「借地権の相続税を払った」と主張する借地人に、地主は「そんなの関係ねー」と大激怒、はたしてその結末は?【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月2日 11時15分
-
38歳で「持ち家」取得済み、実家は築40年の地方の戸建てです。母が亡くなったら「家」を相続しなければいけないのでしょうか? 正直“相続税”がもったいないと感じてしまいます
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月27日 5時10分
-
71歳・高齢大家、家賃収入「月200万円超」で“困った”…「現金が膨らむ一方で相続対策が必要。でも不動産は増やしたくない」⇒行政書士が教える《解決策》とは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月20日 18時30分
-
配偶者への不動産相続が“非課税”になる〈特例〉とは?…「相続税」の基本的な節税テクニック5選【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月14日 11時15分
ランキング
-
1「太る原因は歯みがき不足」医師が解説、やせられない理由と実はやってはいけない健康習慣
週刊女性PRIME / 2024年10月6日 6時0分
-
2中古ノートパソコンの購入を検討中です。メモリが「4GB」のモデルでWindows 11は使えますか?
オールアバウト / 2024年10月5日 20時15分
-
3連続強盗「狙われた4つのエリア」に"闇名簿"の存在 資産家だけでなく、どの家庭にも危険が迫っている
東洋経済オンライン / 2024年10月6日 10時0分
-
435歳以上の結婚「飲食の相性」重視する人が多い訳 「やっと巡り合えた!」の幸せが伝わってくる
東洋経済オンライン / 2024年10月6日 13時0分
-
5“再放送”だらけのNHKBS、1000億円カットで「カネがない」…番組継続には「まず予算削減を」
読売新聞 / 2024年10月5日 7時2分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください