人生の先行きが見えません…「月収60万円・60歳元部長」定年後も再雇用で働き続けるも、元部下から「老害認定」でモチベ崩壊
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月2日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
60歳定年後もほとんどが継続雇用で働き続けるなか、「なぜ働いているのか」がわからなくなり、モチベーションがダダ下がりのシニア社員が増えています。またモチベーションの低下には、働く環境にもあるようです。
再雇用のシニア人材のモチベ向上を狙い給与水準引上げ
2025年、高年齢者雇用に関して、「65歳までの雇用確保の完全義務化」と「雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小」の2つの法制度が改正となります。
65歳までの雇用確保の完全義務化では、「65歳までの定年の引き上げ」「再雇用制度など65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの雇用確保措置を講じなければなりません。
高年齢雇用継続給付は、高年齢者の雇用継続を援助するために賃金の補助として支給されるもので、5年以上の被保険者期間がある60〜65歳の労働者で、定年後の賃金がそれまでの75%未満の場合、賃金の15%が支給されます。来年4月1日以降、支給率は60歳に到達する人から順次最大10%に縮小されます。
厚生労働省『令和5年 高年齢者雇用状況等報告』によると、全企業のうち3.9%が定年制を廃止、26.9%が定年の引上げ、69.2%が継続雇用制度を導入しています。
定年制の状況をみていくと、前出のとおり3.9%は定年制を廃止。66.4%が60歳定年、2.7%が61~64歳定年、23.5%が65歳定年、1.1%が66~69歳定年、2.3%が70歳以上定年を採用。また60歳定年企業において、87.4%が継続雇用、0.1%が継続雇用を望むも継続雇用されなかった人たち、12.5%が継続雇用を希望しない定年退職者です。60歳定年を迎える8人に1人だけが、60歳を機に会社を去ります。
松本孝さん(仮名・60歳)。10年弱、営業部長として活躍したのち、60歳定年を機に一度退職。再雇用制度で営業部をサポートする部署に配属されたとか。
再雇用制度は以前からありましたが、その際、正社員から非正規社員へと雇用形態が変わるため、給与は3~4割減。役職が上の人ほど減少幅は大きく、部長職であれば半減というケースもあったそうです。当然モチベーションも低下し、せっかくのシニア人材を活かせていないという議論になり、給与水準が引き上げられたとか。
松本さんの場合、定年前の給与は月収で80万円で、定年後は月収60万円に。役職がなくなった分は減給となったものの、それまでの規定では月収38万円と半減以上となるところでした。
松本さん、「お金がすべてではないけれど」と前置きしつつ、定年後の意気込みを語ります。
――モチベーションは全然違いますね。俄然、これまでの経験をお客様や後輩たちに還元しないといけないという気になります
たまたま聞こえてきたシニア社員への愚痴
リ・カレント株式会社が東京都の働く50代・60代就業者に対し行った『働くシニア社員の本音調査』によると、シニア社員の幸福感要因でトップとなったのは「仕事に意味・意義を感じられること」で29.5%。「自分の強み・経験を活かして働けていること」が29.1%と続きます。
営業部長だった経験を活かし、定年以降は営業のバックアップにまわる――松本さん、これまでの強みも活かせるし、仕事に意義を感じられる、まさにお手本みたいな定年後のキャリアを歩んでいける……はずでした。
ある日、元部下から話を聞いた、正確にいうと、聞いてしまったときのこと。たまたま入った居酒屋で、元部下たちが集合。話題は定年を迎えた再雇用の社員たちに対しての愚痴でした。
・腹が立つ…もう上司でもなんでもないのに、なぜ偉そうなのか
・腹が立つ…「昔は~」が枕詞。あなたたちのやり方が通用したのは、何十年も前の話
・腹が立つ…シニア社員の給与水準をあげたせいで、下の世代の給与水準が下がった
松本さんが同じ店にいたことは、元部下たちは気づいていない様子。また名指しで松本さんのことをいっていたわけではありませんが、何度も何度も「腹が立つ」と聞こえてきたといいます。
――定年を迎えたシニア社員は、こんなにも煙たがられているんだ
――自分の経験を還元しようなんて、おこがましいことだったのか
現役社員に「老害」と烙印を押されながらも、会社にしがみつくことが幸せなのか……わからなくなったという松本さん。一気に仕事へのモチベーションは崩壊してしまったといいます。
前出の調査に戻り、働くシニア社員のストレス要因をみていくと、トップは34.6%で「給与・収入」。続いて24.8%「人生の先行きが見えない」でした。
社会人になり、仕事ひと筋。仕事=生きがいといっても過言ではなかった。そして定年以降は「自身の経験を還元すること」が働くことの意義であり、やりがいだった。なのに……松本さん、人生の先行きが見えない状態に陥ってしまいました。
――同期のほとんどが再雇用を選んでいたから、何も考えずに、自分も再雇用を選んだんですが……そもそも、それが間違いだったのかもしれません
松本さん、いま一度、定年以降の働き方、生き方を考えようとしているといいます。
[参考資料]
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