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周囲の景観を損なう!? “ド派手な家”から出てきた「真っ赤なセーター、真っ赤なパンツ、派手なメイク」の推定70代女性…土地家屋調査士が出会った家主の「意外すぎる素顔」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月30日 9時15分

周囲の景観を損なう!? “ド派手な家”から出てきた「真っ赤なセーター、真っ赤なパンツ、派手なメイク」の推定70代女性…土地家屋調査士が出会った家主の「意外すぎる素顔」

(※写真はイメージです/PIXTA)

カラフルな色味の外壁や生い茂るツタ、不思議な絵に大小さまざまな置物……街を歩いていると、ときどき周囲とは一風変わった“ド派手な家”を見かけたことはありませんか? 土地家屋調査士で心理カウンセラーの資格を持つ平田真義氏が、実体験をもとにそのような家に住む人の「意外な素顔」を紹介します。同氏の著書『住んでる人の性格は家と土地が教えてくれる』(自由国民社)より詳しくみていきましょう。

「ド派手な外壁」の家から出てきた、「ド派手な服装」の女性

派手な外壁の家が「景観を損なう」として周辺住民から訴えられた事件が、ずいぶん前にありました。

関東のとある県で、私はその事件を思い出すような家の前に立っていました。依頼者さんと隣接した土地に建つ家のうちの1軒です。これからご挨拶をしなければいけないのですが、しばし考え込んでしまいました。こういう家のプロファイリングはどうしたものかと。

その家の外壁は、所狭しとペイントされています。デフォルメされた動物や昆虫、植物、よくわからない模様。それが、赤、黄、緑、青と彩りも豊かに描かれています。ただの落書きには見えず、どちらかと言えばお上手です。派手な外壁ではあるものの、不思議と見ていて嫌な感じはしませんでした。

インターフォンを押して出てきたその人物に、私はまたビックリしました。真っ赤なセーター、真っ赤なパンツ、派手なメイクの70代くらいの女性です。

測量の件でお邪魔した旨を手短にお伝えすると、「そういったことでしたらいいですよ」と、よく通る声ではきはきと答えてくれました。

この派手な外壁の家を含め隣接するお宅へのご挨拶をすべてすませたら、測量作業に入ります。作業を行っていると、小学生らしき子どもたちが6〜7人、次々とペイントされた家に入っていくのが見えました。

「あのお宅は絵画教室をやっているのですよ」依頼者さんのその言葉に、私は「なるほど!」と合点がいった気がしました。

言われてみれば、派手な外壁も立派なキャンバスに見えてきますし、家主の女性の全身赤ずくめの出で立ちもアーティストらしくて素敵だなと思えてきます。まったく現金なものですが、エキセントリックな人でなくてよかった、などと思ってしまいました。

その日は土曜日だったので、お子さんたちはきっと絵画教室の生徒さんだったのでしょう。

2度目の訪問で明らかになった、住人の「意外な素顔」

後日、境界立会いをお願いするために、再びあのペイントの家に伺いました。その日は日曜日で、家主の女性の希望によるものでした。

「相変わらず派手なお宅だなあ」とまじまじと外壁を眺めながらインターフォンを押すと、ドアが開き、家主の女性が出てきました。

その姿を見て、私はまた驚いてしまいました。前回と打って変わって、比べものにならないくらい地味な女性がそこにはいたのです。

面食らいながらもご挨拶をすると、「こちらこそ……よろしくお願いします」と、丁寧な、でも消え入るような声で答えられました。

前回訪問したときはハキハキと滑舌のよい受け答えをしてくれたのに、今日はずいぶんおとなしいイメージだなあ、と思いました。まさか別人なのでは? と思わず疑いたくなる変わりようなのです。

説明した境界に納得していただけたので、立会い自体はすぐに終わりました。

このままお礼を言って立ち去ればそれで終わり。この派手なペイントの家に訪れることはもうないはずです。しかし、私は自分の中で湧き上がってしまったいくつかの疑問を、どうしてもそのままにできませんでした。

“あれはね……、絵の先生用の衣装なの”

「あの外壁のペイント、とても見事ですね。あのような絵を描かれたのは何か理由があるのですか?」

「えっ?」

思いがけない質問をされて困惑したのか、女性は口ごもってしまいました。不躾だったかな、と思ったのですが、恥ずかしそうに、小さな声でこう答えてくれました。

「ええと、あれはね……、子どもたちの興味を引くためにしたんです」

「そうだったのですね。確かにとても可愛い絵ですものね」

「まあ、ありがとう。あの絵のおかげで、絵画教室の生徒さんが一気に増えたの」

女性ははにかみながら、嬉しそうに言いました。

もう少し深くお尋ねしてもよいような雰囲気を感じたので、私は思い切って服装についても尋ねてみました。

「今日のお召し物も素敵ですが、先日の鮮やかな色のお洋服とは随分雰囲気が違いますね」

私はあの服装も、絵画教室と何か関係があるとにらんでいたのです。

「あれはね……、絵の先生用の衣装なの」

「衣装?」

「絵の仕事をするときは、あれを着ないとどうも調子が出なくてね」

想像以上の興味深い答えに、私は嬉しくなりました。

心理学を学び、人の心とは本当に奥が深く、学びが尽きないと思うことばかりです。あの真っ赤な服装は、きっとメイクも含めて、いわゆるコスプレのようなものだったのでしょう。

「でも、今日みたいな格好のほうが実は落ち着くのよね」

女性はまた少し恥ずかしそうに笑いました。

住宅と「コスチューム効果」の関係

心理学の用語に、「コスチューム効果」というものがあります。

スーツを着ると仕事モードがオンになるとか、制服を着ると気持ちが引き締まり、普段よりルールに厳格になるとか、そのコスチュームのイメージに合った意識を持つというものです。

ハロウィンなどのイベントで、派手な扮装をすることで、普段の自分とは別人のように大胆になってイベントを楽しむ人たちも、コスチューム効果によるものと言えましょう。

ペイントの家の女性も、真っ赤な出で立ちになることで、無意識に「こちらのほうが絵画の先生としてはしっくりくる」と感じていたのかもしれません。

「赤」という色は、色彩心理学では「情熱」とか、「活動的」というような意味合いがあるそうです。

この絵画教室の先生にとって、本当は内気で素朴なスタイルを好む自分から、「活発でアーティストらしい絵画の先生」を演じるために、派手な服装とメイクをまとうことは、一種のコスプレなのでしょう。別の人格を作ることで、本当の自分を守ることもできます。

アーティストの方は、やはり敏感で繊細だからこそ、一般人とは違う視点で素晴らしい作品を生み出せるところがあります。繊細な素の自分と、もう1人の「派手な先生」である自分とを切り離すことで、必要以上に傷ついたり、疲れたりすることを防いでいたのかもしれません。

ド派手な外壁も、柔らかい自分を守るためのバリアだとも考えられないでしょうか。一見、近寄りがたいような見た目の家なら、ある種の魔除けのようになって、あやしいものをシャットアウトしてくれそうです。

もしもあなたの周りに派手過ぎる家があったらどう思いますか? すごく変わり者が住んでいるかと思いきや、実は繊細な人が住んでいるのかもしれません。

ただし、冒頭でお話しした訴訟にまで発展したケースのように、派手すぎる外壁は近隣の人にストレスを与えることもあるようです。通りかかるだけならまだしも、ずっとその家が視界に入るような立地なら、少し注意が必要かもしれません。

平田 真義 土地家屋調査士

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