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「石破総裁誕生=円高」とはいえないワケ【ストラテジストが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月3日 8時15分

「石破総裁誕生=円高」とはいえないワケ【ストラテジストが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2024年9月30日に公開したレポートを転載したものです。

本記事のポイント

・「高市期待」からの振れ幅は、「行ってこい」でチャラ ・中央銀行の政策は左右されない ・経済政策全般について当面は岸田政権の政策スタンスを継承

市場が円高・株安で反応したワケ

石破氏が自民党総裁に選出されたことで起きた急激な円高・株安は短期的な反応にとどまるだろう。

まず、なぜ市場は円高・株安で反応したか、その理由を整理しよう。第一には、高市氏の総裁就任を期待して市場が大きく円安・株高に振れていたため、その期待が「梯子を外された」ということである。高市氏はアベノミクスの継承者=金融緩和と財政出動に積極的な人物と目されていただけに、高市氏の目がなくなって反動が大きく出たという面がある。

次には、石破氏の増税論に対する警戒である。石破氏は金融所得課税や法人税増税に言及した経緯がある。また、財政についても健全化を目指すスタンスだ。増税や緊縮的な財政というのは、いうまでもなく景気にマイナスであり、すなわち株式市場のネガティブ要因である。

上述の理由による円高・株安であれば、市場の動きは短期間で収束するだろう。「高市期待」は剥落してしまえば、それで終わりである。つまり、「行ってこい」でチャラである。

中央銀行の政策は左右されない

ポイントは、日銀の政策への影響である。高市氏は「ここで利上げするのはアホやと思う」と日銀の利上げに批判的であったが、だからといってそれだけで中央銀行の政策が左右されるわけがない。その裏返しで、利上げに批判的な人物が自民党総裁=首相にならなかったからといって、「日銀が利上げをしやすくなった」と解釈するのも誤りであろう。あくまで「データ次第」が基本である。したがって、

石破氏の総裁就任=日銀利上げ=円高

というストーリーは早晩、消滅するだろう。

経済政策全般について当面は岸田政権のスタンスを継承

では増税論はどうか。これは岸田政権のときに市場の拒否反応を経験しているので、同じ過ちを繰り返すとは思えず、早晩、増税の主張を封印するだろう。石破氏は岸田政権の資産運用立国などの方針は継続すると表明しており、経済政策全般に当面はドラスティックなものは出てこないと思われる。

その背景は2つ。いちばん大きいものは、石破氏の勝因は「岸田派」の票が回ったからという点である。今回の総裁選は「派閥なき総裁選」と謳われたものの、結局、決め手になったのは「派閥」の力だった。石破氏は岸田さんの政策を継承するしか選択肢はなく、岸田政権で最も成功とみなされる資産運用立国の方針に水を差すような真似はできないということだ。

次に、今回の総裁選はそもそも自民党の人気が凋落し、このままでは選挙を戦えないので選挙の顔となる看板を変えようというのが趣旨だ。選挙をにらんでの人気回復が至上命題であり、国民に不人気な政策は(少なくともすぐには)実行しないだろう。金融所得課税は一部の富裕層だけが対象になるので、数を重視するポピュリズムでは問題にならないという面もある。しかし、いまや新NISAやイデコなどで投資が広く一般にも普及している。金持ちを叩いても人気取りにはならず、それで株式市場を下落させれば、かえって一般大衆の人気も失うのである。そのあたりのことはわかるだろう。

よって石破氏は、経済政策については岸田政権の政策スタンスを継承し、当面はなにも行わず、本人の思い入れがある地方創生と防衛に注力するものと考える。

まずは「国民に信を問う」衆院選で自民党がどのような勝ち方(負け方)をするか、それを見極めることが肝要だと思われる。

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

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