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「遺留分」と「法定相続分」の違いを知らないと…相続から10年後に発覚する、とんでもない事実【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月12日 14時45分

「遺留分」と「法定相続分」の違いを知らないと…相続から10年後に発覚する、とんでもない事実【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

遺留分と法定相続分とを混同している人も少なくありません。遺留分と法定相続分とは、相続においてどのような役割があり、主にどのような違いがあるのでしょうか? 本記事では、遺留分と法定相続分との違いや注意点について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

「遺留分」と「法定相続分」

はじめに、遺留分と法定相続分の概要を解説します。

「法定相続分」とは?

法定相続分とは、法律(民法)で定められた各相続人の相続分です。相続が起きると、亡くなった人(「被相続人」といいます)は、もはや権利義務の主体(財産の所有者など)となることはできません。そこで、相続の開始と同時に、被相続人の有していた財産は、当然に分割される財産を除き、自動的に相続人全員による共有となります。

このとき、それぞれの相続人の持分は、原則として法定相続分となります。とはいえ、共有状態のままでは遺産の使い勝手がよくないほか、原則として預金を払い戻すことなどもできません。そこで、相続人全員で話し合い、確定的に遺産をわけることとなります。これを「遺産分割」といいます。この遺産分割は、原則として法定相続分をベースとして行います。

ただし、相続人全員が合意する場合、法定相続分とは異なる割合で遺産をわけても構いません。また、一部の相続人が被相続人から生前贈与を受けたなど「特別受益」がある場合や、一部の相続人が被相続人の事業を無償で長年手伝ってきたなど「寄与分」がある場合は、法定相続分に修正を加えて遺産分割を行います。

「遺留分」とは?

遺留分とは、配偶者や子どもなど一部の相続人にだけ保証された、相続での最低限の取り分です。

たとえば、被相続人の相続人が長男と二男の2名であるにもかかわらず、被相続人が長男に全財産を生前贈与したり、「長男に全財産を相続させる」旨の遺言書を遺したりした場合には、二男は遺産を受け取ることができません。

このような場合であっても、二男には遺留分があるため、長男に対して遺留分相当額の金銭を支払うよう請求することができます。

遺留分と法定相続分との主な違い

遺留分と法定相続分は、どのような点に違いがあるのでしょうか? ここでは、両者の主な違いについて解説します。

問題となる場面

1つ目の違いは、問題となる場面です。遺留分が登場するのは、被相続人による生前贈与や遺言書がある場合です。生前贈与も遺言書もない場合には、原則として遺留分は登場しません。一方、法定相続分は遺産をわける基準となります。

ほかに、相続税の基礎控除を計算する際など、さまざまな場面で基準となります。

権利者

2つ目の違いは、権利者です。法定相続分の権利を有する法定相続人は、次の者です。

1.配偶者

2.第1順位の相続人:被相続人の子ども。被相続人の死亡以前に亡くなるなど相続権を失った子どもがいる場合は、その亡くなった子どもの子どもである被相続人の孫

3.第2順位の相続人:被相続人の父母。父母がいずれも亡くなっている場合は、被相続人の祖父母

4.第3順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹。被相続人の死亡以前に亡くなるなど相続権を失った兄弟姉妹がいる場合は、その亡くなった兄弟姉妹の子どもである被相続人の甥姪

なお、第2順位の相続人と第3順位の相続人は、第1順位の相続人が1人でもいる場合は相続人となりません。同様に、第1順位の相続人がいなくても第2順位の相続人が1人でもいるのであれば、第3順位の相続人は相続人とはなりません。被相続人に配偶者がいれば、第1順位の相続人から第3順位の相続人とともに、常に相続人となります。

一方、遺留分の権利のある者は、相続人のうち、第3順位の相続人以外の者です。相続人ではない者に遺留分がないことはもちろん、兄弟姉妹や甥姪はたとえ相続人になる場合であっても、遺留分権利者とはなりません。

割合

3つ目の違いは、割合です。遺留分の割合は、原則として法定相続分の2分の1です。ただし、第2順位の相続人だけが法定相続人である場合は、遺留分割合が例外的に3分の1となります。遺留分割合と法定相続分の具体例は、後ほど改めて解説します。

相続放棄の方法

4つ目の違いは、放棄をする方法です。相続人としての権利の放棄を「相続放棄」といいます。相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。一切の遺産を相続する権利がなくなるほか、被相続人の借金を承継することもなくなります。また、遺留分の権利は法定相続人であることが前提となっているため、相続放棄をすると当然に遺留分の権利も喪失します。

相続放棄ができるのは、相続発生後だけです。また、相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったこと)を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをとらなければなりません。

一方、遺留分の放棄は被相続人の生前に行うこともできます。ただし、被相続人の生前に放棄を行う場合は、遺留分権利者が自ら家庭裁判所で手続きをして許可を受ける必要があります。

なお、相続開始後であれば、遺産を多く受け取った者などに対して自発的に「遺留分は請求しません」などと告げて、放棄できます。この場合、家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分と法定相続分の具体例

遺留分と法定相続分について、具体例を紹介します。ここでは、被相続人の相続人が配偶者と長男、長女の3名である前提で解説します。

このケースにおける法定相続分

このケースでの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

・配偶者:2分の1 ・長男:4分の1(=2分の1×2分の1) ・長女:4分の1(=2分の1×2分の1)

つまり、生前贈与や遺言書などがなかった場合には、この割合をベースとして遺産をわけることとなります。

このケースにおける遺留分

このケースにおけるそれぞれの遺留分は、それぞれ次のとおりです。

・配偶者:4分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分2分の1) ・長男:8分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分4分の1) ・長女:8分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分4分の1)

つまり、この場合において「長女に全財産を相続させる」旨の遺言書があった場合、配偶者は長女に対して遺産全体の4分の1相当、長男は長女に対して遺産全体の8分の1相当の金銭を支払うよう請求できるということです。

遺留分を侵害すると…

遺留分を侵害すると、どうなるのでしょうか? ここでは、順を追って解説します。

遺留分を侵害する内容の生前贈与や遺言書も有効

遺留分を侵害したからといって、生前贈与や遺言書が無効となるわけではありません。

たとえば、相続人が配偶者と長男、長女の3名である場合において、被相続人が長女に全財産を相続させる旨の遺言書があったとしても、遺言書の要件を満たしている場合、そのような遺言書も有効です。同様に、遺留分を侵害する生前贈与も、「あげます」「もらいます」という双方の意思が合致していたのであれば有効です。

遺留分侵害額請求がなされる可能性がある

遺留分を侵害する生前贈与や遺言書がある場合は、遺留分侵害額請求の原因となります。

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう、遺留分権利者が遺産を多く受け取った者に対して請求することです。たとえば、長女に対して全財産を相続させる旨の遺言書があった場合、被相続人の配偶者や長男から長女に対して、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう請求される可能性があるということです。この請求がされると、実際に長女は配偶者や長男に対して遺留分侵害額相当の金銭を支払わなければなりません。

なお、遺留分の請求は以前は「遺留分減殺(げんさい)請求」という名称であり、物権的請求権でした。遺留分減殺請求では、請求することで自動的に遺産である不動産などが共有となるなどの問題が指摘されていました。そこで、2019年7月に施行された改正民法によって遺留分請求が金銭債権へと改められ、改正後は金銭での請求権となっています。

遺留分侵害額請求をする場合には注意点も

遺留分を侵害する内容の生前贈与や遺言書の存在は、遺留分侵害額請求の原因となります。では、遺留分侵害額請求をする際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか? ここでは、主な注意点を3つ紹介します。

遺留分侵害額請求には時効がある

遺留分侵害額請求には時効があり、時効を過ぎてしまうと、もはや請求することはできません。遺留分侵害額請求の時効は、相続の開始(被相続人の死亡)と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間です(民法1048条)。

また、被相続人の死亡や遺留分侵害の事実を知らないまま年月が経過したとしても、相続開始から10年が経過する遺留分の権利は消滅します。そのため、遺留分侵害額請求は、時効に注意したうえで期限内の請求が必要です。

また、遺留分侵害額請求は口頭や普通郵便などで行っても効力は生じるものの、期限内に請求したとの証拠を残すため、一般的に内容証明郵便で行います。内容証明郵便とは、いついかなる内容の郵便が誰から誰に差し出されたか、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明する制度です。

一定の生前贈与も遺留分に算入できる

遺留分の計算の基礎となるものは、被相続人の死亡時に遺っていた財産(遺産)だけではありません。被相続人が行った次の生前贈与の対象とされた財産も、遺留分計算の基礎に含まれます(同1044条)。

・相続発生前1年以内に、相続人以外に対してした贈与 ・相続発生前10年以内に、相続人に対してした贈与 ・これらより前に行った贈与のうち、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行ったもの

そのため、遺留分侵害額請求をする際は、対象とすることができる贈与を漏らさないよう注意しましょう。遺留分計算の基礎に含められるか迷う場合は、弁護士へ相談することもできます。

生命保険は原則として遺留分算定の基礎とならない

被相続人が保険料を払い込んでおり、相続人などが受取人として指定されている生命保険は、原則として遺留分計算の基礎に含めることができません。

ただし、たとえば遺産の大半を生命保険とした場合など「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、例外的に遺留分の計算の対象となる可能性があります(最決平成16年10月29日)。

具体的なケースにおいて、生命保険を遺留分計算の基礎に含めることができるかどうか判断に迷う場合は、弁護士へ相談するとよいでしょう。

遺留分を侵害されたら

遺留分と法定相続分の概要や、主な違いについて解説しました。

遺言書などがない場合、原則として法定相続分をベースとして遺産をわけることとなります。一方で、遺言書などで相続での最低限の取り分である遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害額請求の対象となります。遺留分の請求には期限があるため、遺留分を侵害された場合はお早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

堅田 勇気

Authense法律事務所

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