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一歩間違えば大きな接客クレームにつながることも…お客様対応で「正論を述べること」を優先してはいけないワケ【元ルイ・ヴィトン トップ販売員が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月15日 10時15分

一歩間違えば大きな接客クレームにつながることも…お客様対応で「正論を述べること」を優先してはいけないワケ【元ルイ・ヴィトン トップ販売員が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

接客では、お客様への対応を間違えると深刻なクレームに繋がることもめずらしくありません。例えば、お客様が自社製品について誤りを述べた場合、どのように対応すると訂正も叶い、お客様の気持ちも波立てずに済むのでしょうか。本記事では、元ルイ・ヴィトン トップ販売員の土井美和氏の著書『元ルイ・ヴィトン トップ販売員の 接客フレーズ言いかえ事典』(大和出版)より一部を抜粋・再編集して、お客様の心をつかむフレーズをご紹介します。

お客様の誤りを訂正しなければならないときは、わたしたちの誤りも可能性に含める

【無難なフレーズ】

価格改定はしていませんが、何か別の商品を見られたのですかね。(本当に)こちらの商品でしたか?

心が動くフレーズ】

価格改定はしていないのですが、もしかしたらこちらで価格を出し間違えてしまっていた可能性もあります。申し訳ございません

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どんなことにも〝絶対〟はないですし、もしかしたらこちらに非があったのかもしれないと、常にその可能性を持っておくことが大事です。その意識があれば、初めからお客様に非があるような伝え方にはならないはずです。

忘れられない接客クレームからの学び

お恥ずかしい話ですが、私には10年経った今でも鮮明に覚えている「接客クレーム」を起こした経験があります。サービスエキスパート(SE。一定以上の販売実績・顧客数を持つ人に与えられるポジション)に認定されて間もない頃、私は「SEとして、プロの販売員として、手本になるような接客をしなくちゃ」と意気込んでいました。

そんなある日、会社の同僚と思われる男女2人組のお客様を接客する機会がありました。男性のお客様は、ご自身が知っているルイ・ヴィトンの歴史や知識をたくさん話されています。そして、「なんかさ、すっごい値上げしてるよね? 半年前に来たときは1万6千円だったからね」とおっしゃられたのです。

私は〝ここ1年以上値上げはしていないし、1万6千円で販売していたのは何年も前だな……〞と思いました。そして、すぐに価格改定歴を調べて、「ここ1年価格改定はしていませんが、何か別の商品を見られたのですかね。(本当に)こちらの商品でしたか?」とお伝えし、初めからお客様に非があると決めてかかってしまったのです。

何をそんなに必死で戦おうとしたのか、その頃の私はSEになったことで力みすぎて片意地を張ってしまったのだと思います。

お客様は大変ご立腹され、そこから3時間以上店頭でお話しされました。「謝罪しろ」「何が悪かったのか言ってみろ」と何度もおっしゃられ、「プロの販売員として本当に失礼な発言でした」と伝えたところ、「プロの販売員? プロ?」と大声で笑われました。

おっしゃる通り、そのときの私は、ただただ自分本位な接客で「プロ」どころか「販売員」としても失格でした。「もしかしたら私が間違っていたのかも」「もしかしたら自分の記憶違いかも」「もしかしたら私の伝え方がよくなかったのかも」とその可能性を常に持っておくことが大事だったと今は思います。どんなことにも、〝絶対〞なんてないのですから。

あのとき、「この1年価格改定はしていないのですが、もしかしたらこちらで価格を出し間違えてしまっていた可能性もあります。申し訳ございません」と〝1年間価格改定をしていない〞という事実はお伝えしつつ、〝でもこちらに何らかの不備があり、お客様に正しい情報が伝えられなかったのかもしれない、そうだとしたら本当に申し訳ない〞ということをお伝えすべきだったと思うのです。

大事なのは正論を述べることよりも、ご来店されたお客様がどんな目的でいらっしゃったのかを汲みとることです。お客様は「知識を張り合いたくて来店した」わけではないでしょう。本来の「商品に興味があって来店した」というお気持ちを損なわないよう、楽しんでいただくことが大事なのです。

クレームには、人と場所を変える

1人でなんとか解決したいという思いから、最初は謝罪してお話を続けていましたが、上司を出せとおっしゃられたため、途中から上司にも対応してもらいました。そして、お席にご案内して、そこでさらにお話をさせていただきました。

自分1人で対応してもなかなかご納得いただけない際には、「人」を変え、さらに「場所」を変えてみることで、お客様も少しずつ落ち着かれることもあります。あとにも先にもこのような大きな接客クレームはありません……。

長く勤めていると、会社や扱う商品に対して愛情たっぷりになり、お客様から否定的な言葉を言われると、全力で戦いたくなってしまうこともあると思います。しかし、私たち販売員は、お客様に寄り添うことを優先すべきです。

このときのお客様はのちに再来店され、ご希望の商品をお買い求めくださったのですが、不愉快な思いをさせてしまい、心から申し訳なかったと思っています。

また、このような販売員の態度や発言に対する「接客クレーム」がある一方で、商品不具合に対する「商品クレーム」もありますよね。商品クレームの場合、正直自分ではどうすることもできない場合が多いため、社を代表してお詫び申し上げるというスタンスで対応します。

しかし、会社側の立場しか見えなくなり「私たちはクレームには屈しません!」という態度を貫いてしまうと、「商品クレーム」から始まった話が「接客クレーム」となって、なかなか消せない大火事になってしまうこともあります。

どのようなクレームでも、お客様がどの部分に対して残念だと思っているのか、どの部分にご立腹されているのか、それをしっかりと理解し、お客様の立場だったら、と考えることが大切です。

お客様の話を伺いながら、「たしかに、私もお客様の立場だったらそう思うかもしれない」と感じるのであれば、それをお伝えすることがあってもいいと思います。「たしかに、この部分が痛んでくるなんて想像もしなかった、とおっしゃるお客様のお気持ちもよくわかります」というように。

「おっしゃることはしっかりと理解しました。そのうえでできることとしては……」と、気持ちに寄り添ったうえで、こちら側の意向を伝えることで、お客様にもご理解いただけるのではないでしょうか。

土井 美和

株式会社Clienteling Advisory

代表取締役

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