片っ端からエントリーした結果、応募数だけが増えていく“バッドスパイラル”に…「猪突猛進型の転職活動」が危険すぎるワケ【エグゼクティブ転職のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月8日 11時15分
(写真はイメージです/PIXTA)
転職活動に積極的に取り組むことは決して悪いことではありません。しかし、多くの内定を得ようと求人に片っ端からエントリーするような「猪突猛進型」のアプローチは非常に危険です。本記事では、株式会社経営者JPの代表取締役・CEOの井上和幸氏が、エグゼクティブ転職において「多数内定獲得」を目指すことがなぜ危険なのか、その理由を詳しく解説します。
求人案件への「猪突猛進型」エントリーがなぜ問題なのか?
人材エージェントから紹介された案件に片っ端からエントリーする人。転職サイトで検索で出てきた案件に片っ端からエントリーする人。一見、アクティブに転職活動をしているように見えます(ご本人がそう思っていらっしゃいます)。
実際、こうした活動を進めている人材エージェントが存在していることも認知していますが、率直に申し上げて、そのようなエージェントには気をつけたほうがよい。業界素人か、あるいはこれから述べるような危険にあえて皆さんを陥れようとしている可能性もあります。
通常の心ある専門性の高い人材エージェントが皆さんからの案件エントリーを通じて感じることは、大きく次の2つに分かれます。
「このかたが、今回、この案件にご興味をお持ちになるのは、なるほどきっとこのご経験を活かして、今後、このようなことをされたいのだろうな」
「うーん、このかた、これまでのご経験やご専門をみるに、この辺りが主戦場でいらっしゃると思うのだけれど、今回、なぜこの案件に応募されているのだろう?」
私たちがお会いすることになるのは、前者の方々です。
後者の方々には、お力添えしたい気持ちはあれども、どうして差し上げればよいかわかりかねる。また、ご検討頂くべきポジションはこれこれの類だと思うのだが、あいにくそれに該当する案件は現在、当社の手持ちにはないので、お時間を頂いても具体的に進めていくお話ができない。こうした理由で、ご面談を差し控えることが多くなります。
特に困ったな、と感じるのは、脈絡なく様々な求人案件に多数同時に応募してこられるかたです。
これが私たちにどう映るかといいますと、何をされたいかや、ご自身のお力の活かしどころを自覚できていないのではないか。深く考えて転職活動されていらっしゃらないのではないか。焦って「どこでもよいから移りたい」となってしまっているのではないか。こうしたかたに見えてしまうのです。
もちろん転職活動においては、様々な案件を検討してみることが大事です。しかし、そこにはあなたのこれまでのキャリアとの接合点が必要であり、また、今後どうされたいのかについての一貫性が重要です。特に組織や事業を背負う幹部・管理職の皆さんですので、当然、企業側は一般職以上にこの部分について着目しています。
「とにかくアプローチしないと」と、業種、業界のみならず職種、職責もかなりバラバラの求人に片っ端からエントリーする、<下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる型>の応募は、ご本人の気持ちとはおそらく裏腹に、百害あって一利なしです。
こうした典型的な「転職活動を一生懸命にしているつもり症候群」は、企業側からすると「なぜ?」「できるの?」の嵐。結果、エントリー全滅に……。
応募総数=転職活動度合い、ではないということを認識頂ければと思います。
<経験・専門性>と<今後の志向、希望>でしっかり応募先を絞り、想いのこもったエントリーを重ねましょう。それだけで、エージェントや企業からの反応が変わると思います。
面接時の「私を見てください」スタンスは、何が問題か?
書類通過し、面接に進みました。
そこで起こる、クライアント企業の社長や人事部長から共通して聞く採用選考での困った(頭にきた)「あるあるケース」は、こんな場面です。
まず一通りの経歴確認があり、あなたは自信満々でこれまでの歩みを面接官に話しました。相手の反応も好感触です。
そして後半、「で、今回のポジションでは、我が社で現状、〇〇事業における主力製品の市場シェアが徐々に落ちてきてしまっているという課題がありまして、法人マーケティングでテコ入れを図っていただける人を求めているのです。**さんであれば、このような状況に対して、どのような策の仮説を持たれますか?」と面接官が問いかけます。
対する**さんの答えは「はい、え~と、御社ではどのような製品を扱っているのでしょうか?」面接官が椅子からずり落ちたのは、いうまでもないでしょう。
自分から応募して面接に出向いているのに、応募先企業の基本情報をあまりしっかりと見ていないという幹部・管理職クラスの応募者は、想像以上に多いようです。面接者の社長や事業部長、人事部長は「なんで来たの?」となってしまうでしょう。こうした姿勢になる原因は、おそらく次の2つかと考えます。
ひとつは、「面接=自己アピールをする場」という応募者の認識・理解です。「自分はこのような人物です」「こういう仕事をしてきました」という点は、大抵の転職希望者が一生懸命、面接官に伝えようとします。しかし、自分が縁があった際に着任する企業とその職務については、「配属は相手企業が決めること」「入社することになったら理解しよう」というぐらいの心根なのだと思います。
もうひとつは、「俺様・殿様受験」のメンタリティーです。大手企業出身者が幹部クラスで初めての転職に臨むような場面では、「自分はこれだけの出世をしてきた人物。それを三顧の礼で買うのは相手企業だ」というスタンスの応募者も(一昔前に比べれば減りましたが)、いまだに散見されます。こんな姿勢では、応募先企業から疎まれるだけであり、そもそもの仕事力を疑われるだけです。
応募先企業の基本情報をほとんど見ていない、<あなた主導型>の応募はいただけません。あなたのせっかくの貴重な時間と未来を台無しにします。
幹部採用・転職は、企業とあなたの「商談的すり合わせ型」であることを、しっかり認識したうえで、万全の準備で臨みましょう。
自分のことなのに…経験を突っ込まれて失敗?
もうひとつ、幹部・管理職クラスの方が猪突猛進型転職活動で陥るケースをご紹介しておきます。
先ほど、企業側から課題などでのディスカッションを求められて詰まってしまった例をご紹介しましたが、ご自身の経歴についても突っ込まれて打ち破れる方もよく見受けます。
まずひとしきり職歴の概要を話し終え、内心ホッとしていると、面接者である社長からこんな質問を受けました。
社長「で、このプロジェクト経験にとても興味があるのですが、このときは具体的にはどのようなことをされたのですか?」
応募者「えっと……」
通りいっぺんの職歴自己紹介はそつがないのに、部分部分で深掘りの質問を浴びると、各論が話せない。そんな人も、私はキャリア面談でかなり多く見てきました。その際、面接者である社長や、キャリア面談者である私の頭のなかに浮かぶのは、2つのことです。
「ん? この人、実はこの部分、自分でやったことではないのかな?」
「そうか、上から言われたことをやっていただけだな」
自分が直接やっていなかった仕事には、当然、転職先でも期待ができません。自分の頭を使わず、言われたことだけやってきた(としか見えない)経営幹部や管理職を、自社の幹部として採用する企業もありません。
当然のことですが、それは自身が主導したことなのか、プロジェクトの一員だった(だけ)なのか。その時々のプロジェクトや業務の実績について、自分は何を考え、どのように取り組んだのか。こうしたところを、具体的に、事実と数字とロジックをもって明快に語れるようにしておきましょう。
これはなにも転職活動に限ったことではなく、平素の業務執行においてもリーダーにとっては絶対に欠かせないことです。
職歴の棚卸しをして「自己認識」を図ろう
「闇雲応募」を重ねていると、本記事でご紹介したような課題を抱えたまま面接に臨んで、あえなく失敗することを繰り返し続けることになります。
問題の本質を認識せずに、次の会社に応募しては、また同じことを繰り返す。これでは転職活動が長期化するばかりでなく、泥沼の面接NGで精神的にも参ってしまい、ますます活動がうまくいかなくなるというバッドスパイラルに陥ります。
このような負の連鎖から抜け出すためには、しっかり職歴を詳細に棚卸しし、自己認識を図ることをお勧めします。こういうときこそ、「急がば回れ」です。
井上 和幸
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
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