給与は月7万円、公営住宅で暮らすシングルマザー「ショックでした」…サッカー好きの息子がポロッと口にした“現実的なひと言”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月30日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
物価高や低い賃金など、ひとり親家庭を悩ませる経済的な障壁。このような格差は、単にお金だけではなく「体験格差」にもつながります。低所得世帯の深刻な実態について、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、シングルマザーの藤原さん(仮名)のケースをみていきましょう。
先の見えない地元での暮らしから、息子と2人で都会へ
最低賃金で働く藤原真理さん……長男(小学生)
過疎地域出身の藤原真理さんは未婚で長男を出産し、実家で両親と同居しながら子育てをしてきた。長男が小学校に上がる頃、公営住宅への応募が当選したことを機に都会へと引っ越した。
―都会の公営住宅に応募しようと思った理由を聞いてもいいですか。
先のことを考えたときに、このまま地元にいるよりは出たほうがいいのかなって。仕事もあんまりないですし、時給もすごく安くて。先が見えなかったです。公営住宅には2年ぐらい応募し続けて決まったので、そこで引っ越しをしようと思いました。
―それまではずっと地元で暮らされてきたんですね。出産も地元でされたんですか。
そうですね。その頃はコンビニで接客の仕事を長く続けていて、出産の2週間前まで働きました。産後に一度辞めたんですけど、早朝に人が足りなかったみたいで、「ちょっと戻ってこない?」と言われて、土日の早朝に3時間だけならということで戻りました。実家に住んでいたので、母親にその時間帯だけ子どもを預けられるようにお願いして。
でも、やっぱり半年もたなかったな。うちは、父親が寝たきりで、母親が在宅で介護をしてるんです。24時間必要で。その中で私の子どもを置いて仕事に行くっていうのがしんどいかなと思って、コンビニの仕事はそこで辞めました。実家暮らしだったのでそこまでお金に困るという感じではなかったんですけど、貯金が少しずつ減っていく感じでしたね。
―子育てに専念される形になったわけですね。
地元の土地柄もあるんですけど、こっちの都会みたいにみんなが保育園とか幼稚園に行かすという選択肢があるわけではなくて。幼稚園もない集落でした。近くに学校はあるんですけど、小さい子にとっての場所ってほとんどないんですよね。公園もなくて。
だから、自分でコミュニティ会館みたいなところに連れていったりしていました。そこは自分と同年代の人があんまりいなくて、「あれ、一人なの?」とか、自分が聞かれたくないことも聞かれずに済むというか、ただそこで子どもを遊ばせることができるような場所で。
―都会に出てこられて、再び働き始めたという形でしょうか。お子さんは小学校に。
働き始めたのは去年です。それまでは私の祖母が自分の蓄えを初めてのひ孫にということで援助してくれて。とてもありがたかったです。ただ、働かないとその貯金も減っていくばかりで。そういう追い詰められた感じになって、働くまでの踏ん切りをつけて。そこから始めて1年やってきたので、今は働くことへの抵抗もないし、この1年は大きかったです。
―一人で子育てをされながら仕事を再開することの大変さもあったと思います。預金も尽きてくる中で、生活保護の利用を考えたことはありましたか。
生活保護は一度も考えたことはないです。そこに頼るのはちょっと抵抗がありました。何かほかに手段があるんじゃないかと思って、ギリギリで生活していました。自分を追い込んで、もう働くしかないという。
時給は最低賃金…休みづらい環境に息苦しさも
―去年始められたお仕事について聞かせてください。
スーパーで品出しとか案内の仕事をしています。週3回、朝から夕方頃まで。時給は最低賃金ですね。1年働いてもまったく上がっていません。
私は品出しみたいな淡々と作業するような仕事が向いていると思っていて、この仕事も好きなのでなんとか続けられているんですけど、周りの人はどんどん辞めていきます。「ブラックだね」みたいなこともよく言われます。
いつもギリギリの人数でやっている感じなので、休みづらいです。一応シフト制なんですけど、ほぼ固定です。調整も難しくて。子どもに何かあったときにもスッと休めない。
私が抜けちゃうとほかの人に迷惑がかかるし、自分が休んだ穴を埋める人からのプレッシャーをすごく感じます。それくらい人が足りてない。みんなでイライラして、というのをすごく感じます。
―職場は女性が多いですか。
店長と副店長は男性で、現場はほぼ女性です。長く働いてる現場の人もいるんですけど、私が休んだ後に「あのとき大変だったんだよね」みたいに言われたりもします。「ですよね、すみません」みたいな。
自分もちょっとネガティブな性格なので、そういうふうに言われちゃうと……。子どもは体もあまり強いほうではなくて、学校も休みがちなんですけど、「風邪はひかないで」、「ひくなら週末ね」と言うぐらいで。ロボットじゃないので無理なんですけどね。だから、平日にちょっと咳とかすると怖いなって。
―現在の仕事を週3回にしている理由とも関わりますか。
私の体の限度もあります。今のお店で働いていると週3回だけでヘトヘトになるんです、本当に。重いものを運んだりしますし、そもそもの仕事量もすごくて。どんどん品出しをしないと店内がスカスカになっちゃうので。家に帰るといつもクタクタで、「あれもできなかった、これもできなかった」みたいなことばかりを考えている1年でした。
私が職場を変えたらもっと家でニコニコできるんじゃないかなと思います。働き始めたことで収入面は前より安定してきたかなとは思いつつ、やっぱり仕事のイライラをおうちに持って帰ってしまうんですよね。「今日、仕事でこうだったんだよね」みたいな愚痴を子どもに言ったりとか。そういうのはなくしたいなと思います。
息子も感じている“格差”
―毎月の収入と出費はどのようになっていますか。
仕事の給料が多くて7万円ぐらいですかね。それと、児童扶養手当とか子ども関連の手当があるんですが、毎月振り込まれるわけではなくて、ゼロの月が年に何回かあるんですよね。その月は給料でやるしかないです。手当が入る月に国民健康保険とかをまとめて払ったりしています。今年の夏休みは本当に暑くて、エアコンを使わざるを得ないというのが本当に大変でした。光熱費が高くなっていて。
出費は毎月10万円いかないくらいです。食費、光熱費、あとWi-Fiですね。学校でタブレットが支給されるんですけど、Wi-Fiが使えないとダメなので。公営住宅で家賃の減免申請をしているので、家賃は1万円ぐらいです。団地の周りだと5万円ぐらいはすると思うので、今の家賃はとても助かっています。
―お子さんは今どんなことに関心を持たれていそうですか。
社会科がすごく好きなんです。ほかの科目は全部普通なんですけど、社会だけずば抜けて成績が良くて。YouTubeで色々な国のことを紹介するアニメみたいなのをたくさん見ています。
去年、カタールでサッカーのワールドカップがあったじゃないですか。それを見て、色んな国のユニフォームを覚えたりもしていましたね。
―サッカーは自分でするのも好きですか。
するのも好きです。でも、サッカーを習いたいかどうかという話をしたときに、「習い事をするのはちょっと無理なんじゃない?」みたいなことをポロッと言っていて、うちの経済的なことを考えてるのかなと思いました。「うちは高校は行けたとしても大学は無理だろうね」と言われたこともあって、ショックでした。そんなことを考えてるんだなと思って、悲しくなりました。
団地に住んでるのをすごく気にしてるみたいです。近くに大きいタワーマンションができたりして、そこに引っ越してきた同じクラスの子たちとはやっぱり違うよね、みたいな。中学受験する子もいるので、自分のうちとは違うと感じているのかもしれません。
インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。
今井 悠介 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 代表理事
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