原状回復費用が450万円かかったケースも…孤独死の増加で注目されている「孤独死保険」とは?【CFPの助言】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月8日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
警視庁の発表資料によると、2024年1月~6月の半年間の孤独死者数は約37,000人に上っています。そしてそのうちの約8割を65歳以上が占めている現状からも、孤独死に対する新たなニーズが生じています。それは一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、孤独死の現状や孤独死における新たなニーズについて解説します。
孤独死の現状
警視庁の発表※1によると、自宅で亡くなった一人暮らしの人の数は37,000人となっており、そのうちの約7割は亡くなったあと1週間以内に発見されているものの、亡くなってから1ヶ月以内に発見された人や亡くなってから3ヶ月以内に発見された人もそれぞれ1割存在します。
孤独死の増加原因として※2、単独世帯の増加が挙げられます。実際に2020年に行われた国税調査の結果を見ると、単独世帯は増加傾向にあり、2020年時点では全世帯の約4割を占めています。次回の国税調査は2025年に行われる予定ですが、その結果次第では全世帯の半分が単独世帯という結果になっていることも予想されます。
また、孤独死に占める65歳以上の割合が約8割となっている点も見逃せません。死亡時の平均年齢は62歳で、そのうち男性が占める割合が8割以上となっている点も興味深いところです。
死因については病死が6割を占めているものの、不明として扱われている割合も約25%あります。
※1:以下参照 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/shitai/hitorigurashi/240827_kenshi2.pdf
※2:以下参照 https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/news/kodokusiReport_8th.pdf
孤独死保険とは?
みなさんは「孤独死保険」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
孤独死保険とは損害保険の1つで、孤独死が発生した場合の損害を補塡する役目を持っています。賃貸物件のオーナーが加入するケースが多く見られますが、入居者が加入するケースもあります。そしてオーナーが加入するものを大家型、入居者が加入するものを入居者型と区別し、入居者型には家賃保証はなく、保険金も遺族が受け取る点が大家型と異なります。
人が亡くなると、筋肉が弛緩し、体液が身体から染み出てきます。孤独死の場合、それが放置され悪臭の元となり、そこでやっと発見されるケースも多いでしょう。特に借りている人が一人暮らしで周囲との付き合いもない場合、発見されるのも遅くなる傾向が多く、そうなると汚れた部屋の原状回復費用も通常よりも高額になります。
他に家財の処分費用もかかりますし、孤独死で発見されたことが近所で噂になったら、その部屋を借りたいという人も少なくなるでしょう。その結果家賃収入にも影響を及ぼしてしまうのです。それを考えると賃貸物件を保有している人の孤独死保険への加入は必須だと言えるでしょう。
ちなみに孤独死によって発生する損害額は残置物処理費用の平均は約23万円となっていますが、中には180万円近くかかった例もあります。そして原状回復費用が平均40万円、最大では450万円です。これらの損害を保険で補塡するのが孤独死保険で、2024年1月に発表された資料※3によると支払われた保険金額は残置物処理費用で平均23万円、原状回復費用は約31万円です。
保険料は保険会社によって異なるものの、月280円で原状回復費用を最大100万円まで保障してくれる商品もあります。
※3以下参照 https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/news/kodokusiReport_8th.pdf
持ち家で孤独死した場合【新たなニーズ】
持ち家で孤独死した場合の残置物処理費用や清掃費用は、相続人が負担しなければなりません。
孤独死の約8割を60歳以上が占めていると述べましたが、30代や40代の持ち家での孤独死も発生しています。最近では独身でマンションを購入する人も増えているので当然ともいえるでしょう。そのまま年金生活に入り暮らしている途中、突然家で亡くなることも考えられます。
そのような背景から、持ち家の人でも孤独死保険と同様の補償を考える人が増えているのです。戸建ての場合、いったん取り壊すという選択肢も考えられますが、マンションの場合、遺品整理や室内清掃を行わなければなりません。費用が賄えるだけの終身保険に加入していればいいのですが、受取人が誰になっているかまで知っている人も少ないでしょう。なかには終身保険の保険金額を葬儀代程度に低く抑えている人もいます。
そのような事態になった際の対策の1つとして、残存物取片づけ費用が補償範囲に入っている火災保険に加入することで、残置物処理費用を補塡してもらえる可能性があります。持ち家であれば火災保険そして地震保険は加入しているはずですので、その補償範囲を確認しておきましょう。
そして補償を受けられる火災保険に加入しているなら、その内容を親や兄弟など親族に伝えておくことが重要です。また、一人暮らしならエンディングノートの作成は必須です。どのような保険に入っているのか。金融資産はどこに預けているのか。とくに今はデジタル社会ですので、ネットバンキングを利用している人も多いでしょう。もしものために、ユーザーIDやパスポートなども利用しているサービス毎に書き留めておき、できれば毎年見直すことをおすすめします。
現在、日本少額短期保険協会は孤独死を少なくするための取り組みとして「絆アプリ」の開発を進めています。内容はスマートフォンでその日の歩数を第三者が読み取れる仕組みで、一日全く動いていなければ何かあったのかと判断できます。このような取り組みを経て、社会から孤立する人や孤独死が今後少なくなっていくことを切に願います。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP
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