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不動産の共同所有はやめておけ…亡き妻の「姉」と共有名義人になってしまった男性。共有関係を“イチ抜け”するには?【行政書士が回答】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月11日 12時0分

不動産の共同所有はやめておけ…亡き妻の「姉」と共有名義人になってしまった男性。共有関係を“イチ抜け”するには?【行政書士が回答】

(※写真はイメージです/PIXTA)

亡き妻から「実家の共有持分」を相続したことで、亡妻の姉(=義姉)と不動産を共同所有することになった相談者。専門家の多くは、「不動産の共有」はたとえ兄弟姉妹どうしであっても非推奨としています。相談者が共有関係を離脱・解消するには、どうすればよいのでしょうか? 不動産取引関連書の著者であり、実務にも詳しい行政書士・平田康人氏が解説します。

亡妻から「実家」を相続したが…義姉との共有状態を解消したい

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【相談】

2年前に妻が亡くなり、妻が所有していた「妻の実家の共有持分(2分の1)」を私が相続しました。もともと妻の実家は、妻の母親から妻とその姉が2分の1ずつ共同相続したものでした。妻の実家は現在、空き家となっています。

義姉家族とは普段から付き合いがなく、義姉と私にはそれぞれ子どもがいることから、共有物の管理や処分を巡って揉めたり、将来新たな相続が起きたときに権利がさらに細分化されたりすることのないよう、今のうちに共有状態を解消することを考えています。共有名義不動産の共有関係を解消するには、どのような方法があるのでしょうか?

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《回答》共有解消・離脱する方法としては「売買」「交換」「贈与」「放棄」など

共有とは、複数人が共同して1つの物の所有権を有する状態のことをいいます。各共有者は、共有物の全部について所有権を有していて、各共有者が有する共有物に対する所有権を「共有持分」といいます。共有持分は所有権なので、各共有者は、共有物全体を共有持分に応じて使用することができますし、各自の共有持分を自由に処分することもできます。

ただし、共有物全体については、各共有者が他の共有者と同じように権利を持っていることから、各共有者が「何でも」自由にできるわけではなく、共有物に対する行為の内容によって、共有者間の意思決定の方法が民法で定められています。具体的には、共有物に与える影響の大きさを勘案して、共有物に対する行為の内容を「変更行為」「管理行為」「保存行為」の3つに定めて、各共有者が単独で行えるのか、もしくは共有者全員の同意が必要なのかなどが規定されています。言い換えれば、これらの規制が、「不動産は共有名義にしないほうがよい」と言われる所以です。

共有物に対する「変更行為」「管理行為」「保存行為」とは?

3つの行為を具体的に見ていきましょう。

■1.変更行為

変更行為とは、共有物の形状や効用に変更を生じさせる行為で、共有物の変更をする場合には、共有者全員の同意を要します(民法第251条)。変更行為には、「物理的変化を伴う行為」と「法律的に処分する行為」があります。主な具体例は、次のとおりです。

<物理的変化を伴う行為>

・土地の造成(田畑を宅地に造成する工事、盛土等の造成工事など)

・建物の大規模な改修、建替え、解体

・土地上の建物建築 など

<法律的に処分する行為>

・所有権を失う契約の締結(売買契約、贈与契約)

・短期賃貸借期間(※)を超える、または借地借家法の適用がある賃貸借契約の締結

・共有不動産全体に対する担保権(抵当権等)の設定 など

■2. 管理行為

管理行為とは、共有物の性質を変更しない範囲での利用・改良する行為で、各共有持分の価格の過半数を有する共有者の同意を要します(民法第252条本文)。主な具体例は次のとおりです。

・共有物の使用方法の決定

・賃貸借契約(「民法第252条④に定める期間(※)」を超えず、借地借家法の適用がないもの)の締結や更新、解除

・一般的な賃貸借(サブリースによる例外あり)の賃料変更(増額、減額) など

■3. 保存行為

保存行為とは、共有物の物理的な現状を維持し、他の共有者に不利益が及ばない行為をいいます。そのため、各共有者が単独で行うことができ、他の共有者の同意を要しません(民法第252条⑤)。主な具体例は次のとおりです。

・共有する建物の修繕

・法定相続による所有権移転登記

・不法占有者等への明渡請求、無権利者への所有権抹消請求 など

法改正により、「変更行為・管理行為」の規制がやや緩和された

近年の共有不動産を巡るトラブルや所有者不明土地の解消に向け、各規制をやや緩和する方向で、改正民法が令和5年4月1日に施行されています。

主な内容として、変更行為では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わないものを変更行為から除外し、全員の同意がなくても行うことができるものとしました(民法251条①括弧書)。例えば、共有する建物のトイレを和式から洋式に変更するリフォーム工事などです。また、他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときには、その所在を知ることができない共有者「以外」の共有者からの同意があれば、共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができるものとしました(民法251条2項)。

また、管理行為では、一部共有者の存在や所在が不明のとき、不明共有者以外の共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できる旨の裁判ができるようになっています(民法第252条②)。

不動産の共有状態を解消する方法

不動産を共有した場合、他の共有者と協議して必要な合意を得なければ、保存行為以外は何もできません。例えば管理行為の場合、過半数の同意が必要です。本事例の場合、共有者は2名なので、2名(=つまり全員)の同意が必要ということになります。相談者からすると、協議する相手が疎遠な関係の義姉であることから、共有関係を煩わしく思い、自分が元気なうちに共有状態を解消したいと考えるのは理解できます。

共有状態を解消するには、次のいずれかの考え方を採用します。

・共有者全員が協力して共有物全体を処分することで、共有物を無くしてしまう

・自分の共有持分をすべて手放して、共有関係から離脱する

・他の共有者の共有持分を全部買い取って、自らの単独所有権とする

以下、共有解消と共有離脱の具体策について解説します。

【方法1】共同売却

売却は変更行為に当たりますので、共有者全員で合意して売却し、売買代金を持分で分配することで共有物は無くなり、共有関係は解消されます。前回記事の不動産オークションが適用できて、納得した売却ができるなら各共有者も共同売却に応じてくれるかもしれません。

【方法2】共有持分の買取りまたは売却

共有持分について共有者間で売買をします。売買条件が合えば、相談者が義姉の持分を買い取って単独所有としたうえで全体を売却処分するか、あるいは義姉が相談者の持分を買取り単独所有にしたうえで全体を売却処分するか、義姉の実家でもあるので子どもに相続させるかなどです。ちなみに、共有持分の処分は自由なので、売買条件が合わなければ共有者以外の第三者へ売却して共有離脱することが可能です。

【方法3】不動産の交換

相談者が他に不動産を所有している場合、義姉の共有持分と相談者の他の所有不動産を交換することで、相談者が共有物を単独所有とすることができます。逆に、義姉が所有する他の不動産と相談者の共有持分を交換し、義姉が共有物を単独所有とすることもできます。物々交換が基本ですが、交換価格が等価にならない場合、その差額は「交換差金」として現金で清算することになります。

【方法4】贈与、放棄

「共有状態を早く解消したい」「無償でも手放してもよい」というのであれば、相談者が義姉に共有持分を贈与して、共有関係から離脱することもできます。ただし、贈与は契約になるので、仮に相談者が義姉に無償で共有持分を譲りたいといっても、義姉が応じなければ贈与契約は成立しません。贈与税や不動産取得税、登録免許税、贈与後の固定資産税の増加を理由に、義姉から「いらない」といわれる可能性もあります。

贈与が難しければ、相談者が一方的に共有持分を放棄して、共有関係から離脱することもできます。放棄は単独でできるため、他の共有者の同意は不要です。そして、放棄した持分は、他の共有者に帰属する(民法第255条)ことになります。

ただし、登記名義を変更しなければ、放棄者は固定資産税の支払い義務を免れることはできません。本事例の場合、不動産の名義変更登記は、相談者と放棄した持分が帰属する義姉との共同申請になりますが、義姉が放棄した持分の引き受けを拒む場合は、相談者は登記引取請求訴訟を提起し、判決を得てから単独で登記手続きを進めることになります。

その他、本事例は該当しませんが、共有物が更地で、間口が一定以上ある整形地であれば、現物分割によって分筆し、共有解消することもできます。

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<注釈>

※「民法第252条④に定める期間」と「短期賃貸借(民法第602条)の期間」は、以下のとおり同じ期間になっています。

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年

二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年

三 建物の賃借権等 3年

四 動産の賃借権等 6カ月

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平田 康人

行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表

宅地建物取引士

国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター

「相続・遺言・終活・不動産」に専門特化した行政書士事務所として活動。“行政書士業務”と“宅地建物取引業”を同時展開する二刀流事務所として、共有不動産の競争入札による売却や、仲介手数料が不要となる親族間・個人間不動産売買のサポートにも対応している。著書に『ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』『最新版 ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』(どちらも同文館出版)がある。

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