税務調査官「私が間違っていたみたいですね、すみません」…年商1億円の60歳社長、税務調査で“社用車のポルシェ”がやり玉に→〈経費計上〉が認められたまさかの理由【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月13日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
個人・法人とわず、突然やってくる「税務調査」。その税務調査において、個人事業主や法人が指摘される項目に「経費」があります。大好きなポルシェを社用車にしていたコンサルティング業社長のAさんは、税務調査で指摘を受けました。しかし、最終的には調査官が“謝罪”する結果に。いったいなぜポルシェが経費として認められたのでしょうか。事例をもとに、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。
社用車のポルシェを指摘した税務調査官、まさかの“謝罪”
ーーとうとうきたか……
富裕層向けのコンサルティング業を営むAさん(60歳)は、税務署から「税務調査に伺います」との連絡を受け、こうつぶやきました。
Aさんが代表取締役を務めるB社は、年商およそ1億円。数年前から売上が増えていたこともあり、近いうちに税務調査が来るのではないかと予想していたのです。
当日、和やかなムードで税務調査が始まりましたが、徐々に話はAさんの“社用車”へと移っていきます。
調査官「いやあ、それにしても壮観ですね! こんなに高級車が並んでいる様子はあまり見たことがありません。でも……社用車がポルシェである必要はあるのでしょうか? もし社長の個人的な趣味でお使いになられているのであれば、経費として認めるわけにはいきませんからねぇ」
Aさん「はは(笑) いえいえ、ポルシェは私の趣味で乗っているわけではありません。会社で必要があるものですから……」
このあと、税務調査官による入念な調査の結果、「私が間違っていたみたいですね、すみません」と調査官側が折れ、無事にポルシェは経費として認められることになりました。
では、いったいなぜ高級車が経費として認められたのでしょうか?
「経費」として認められる判断基準は…
そもそも「経費」とは、事業において収益を得る目的で使用した費用を指します。日々の業務で使用する事務用品から取材のための交通費、打ち合わせで使用したカフェの飲食代にいたるまで、経費にできる費用はさまざまです。
法人税は事業の収益から上記のような経費を差し引いた「課税所得」について計算されるため、経費にできる費用が多いほど課税対象となる所得が減り、節税効果が大きくなります。
ただし、当然ですが、なんでもかんでも経費にできるわけではありません。計上経費として認められる判断基準は「売上に結びつくかどうか」です。経費があまりにも多い場合は税務調査で追及されるため、売上との結びつきを適切に判断し、正しく計上しなければなりません。
税務署から狙われないための、3つのポイント
では、税務署に疑われないために、あるいは万が一税務調査を受けても追徴課税を避けるために、どのような点に気をつければよいでしょうか? 考えられる対策は下記の3つです。
1.支出金額が常識の範囲内であること
事業に必要な経費であっても、一般的な常識を超えた金額は経費として認められません。たとえば、高額な飲食代や、高級ホテルでの宿泊代などは“常識を外れている”と判断され、経費として認められない場合があります。
2.事業運営に関わる経費であると証明できること
取引先との食事代や、取引先へ行く出張費用などは事業のために必要な経費と認められますが、それを客観的に証明できる資料がない場合、それが事実であったとしても経費として認められない場合があります。レシートや領収書など、証拠となる資料を保管しておくようにしましょう。
3.支出が「期間損益」に対応した経費であること
企業の会計処理は、会計期間を区切り損益計算を行うため、収益と費用はその発生した期間に正しく処理するという費用収益対応の原則があります。そのため、会社の状況によって経費を計上する期を後にずらしたり、前倒ししたりすることはできないので、事業運営に必要な経費だったとしても、費用収益対応の原則に当てはまらなければ、その経費は計上できないことになります。
ハマる人多数…「経費計上」の落とし穴
企業が営業活動をすることにより生み出された成果を「収益」といい、収益から経費を差し引いた額が利益です。すなわち、経費が大きくなればなるほど利益は小さくなります。
経費にすることで節税につながると考えると、経費で落とすことはいいことばかりのように思えますが、「経費を増やす」=出費が増えることに変わりありません。経費が増えすぎると赤字になってしまいます。
また、なるべく多く経費で落とそうと考えた末、実際には使用していない経費を不正計上する企業もあります。
特に、接待費などは不正計上されることが多い勘定項目です。経費の不正計上、架空計上は犯罪であり、税務調査などで発覚した場合には、過少申告加算税のペナルティが課されます。また、悪質とみなされた場合には重加算税が課されることもあり、会社の信用にも関わることになりますので注意が必要です。
高級車が「経費」として認められた驚きのワケ
では、今回ポルシェが社用車(経費)として認められたのはなぜなのでしょうか?
調査官が言ったように、高級車を“社長の個人的趣味”で乗っている場合、経費として認めることはできません。そのため、税務調査では「高級車が会社の業務に本当に必要であるのか?」という観点から追及されます。
これは言い換えると、事業上の必要性を認めさせることができれば、経費として認められるということです。今回Aさんが調査官に主張した点は、下記の4つでした。
①B社の顧客は富裕層であるため、業務上顧客のレベルにあわせた服装や振る舞いが求められる。そのため、社用車についても相応の車に乗らないと相手に信用されない。顧客も高級車に乗っている人が多く、社用車が高級車であることで、顧客との話題作りにもなる
②車の運行記録などはすべて記録してあり、仕事以外では使用していない
③プライベートでは会社の車を使わず、必ず自家用車を利用している
④ポルシェのような人気高級車は、売却する際も高値で取引できるので、法人で購入する以上、資産運用という観点等も考慮して車種を考慮し購入している
Aさんは車両の運用状況などの記録などを保管しており、税務調査に備えて客観的に証明できる資料を揃えていました。したがって、上記の主張をした結果、その購入の妥当性が認められることとなりました。
税務調査の際は、必ずエビデンスを求められます。調査官を説得しきれないと否認されることとなりますので、注意しましょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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