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父さん、遺産はどうなるの?90歳まで現役を続けてきた医師の父が告白した〈墓場まで持っていきたかった事実〉に50代息子が困惑したワケ【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月11日 11時15分

父さん、遺産はどうなるの?90歳まで現役を続けてきた医師の父が告白した〈墓場まで持っていきたかった事実〉に50代息子が困惑したワケ【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「90歳の父親が亡くなる前に」と生前相続の相談に来られた50代の誠(まこと)さん。この歳になって初めて、自分たち兄弟が父親の再婚後の子であり、前妻との子どもの存在を知って困惑していました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)に寄せられた相談を元に生前相続についてみていきましょう。

父親の生前相続対策の相談に

誠さん(50代・男性)が父親の相続対策について、ニュースで紹介された記事を読んで、相談に来られました。

父親は昭和ひとケタ生まれで90代。自宅で内科医院を経営してこられました。90歳まで現役で医院を続けてこられましたが、受付や事務を手伝っていた母親が先に亡くなってしまい、医院は閉鎖して、現在は一人暮らしをされています。

子どもは長男の誠さんと弟で、2人ともドクターになりました。誠さんは近くで開業しており、弟は大学病院に勤務しているといいます。父親の相続対策は兄弟ふたりなのでそんなに難しいことはないと思っていたところ、大きな問題が発覚したのです。

父親は再婚していた。先妻の子どもがいる!

母親が亡くなったときは預金だけでしたので、相続税の申告も不要で、父親が手続きを済ませました。けれども父親の場合は、内科医院もある自宅と近くに駐車場、伊豆の別荘、預金など合わせると基礎控除は超えるはずです。

誠さんも、弟も、父親に預金や不動産なども整理して、相続対策をしてもらいたいと、父親と話をする機会を作りました。

その話の中で、父親から「母親とは再婚で、前の結婚のときの子どもが1人いる」という話をされたのです。

誠さんも弟も、いままで父親からも母親からもそんな話は聞いたことがなく、まさに青天の霹靂。あらためて父親の戸籍の附表を取って確認したところ、父親のいう通り父親は再婚で、先妻との間に長男が生まれていることが判明したのでした。

異母兄弟とは会ったこともない!

父親からいままでそんな話を聞いたこともなく、誠さんも、弟も、戸籍上の異母兄弟とは会ったこともありません。

父親は誠さんが生まれる前に離婚しており、すでに60年前。離婚後、その子は母親が引き取りましたので、父親ですらその間会ったこともなく、どこで暮らしているかもわからないといいます。

父親は自分の過去を知られたくなかったのか、そんな話は一切口にすることはありませんでした。だからといって戸籍は消すことができないため、その先妻の子どもも相続人となるのです。

解決策は「公正証書遺言を作る」しかない

父親は先妻とは没交渉。存在も忘れているようで危機感がありません。しかし、誠さんと弟にとっては会ったこともない異母兄弟がいるというだけで大問題。父親が亡くなった後に兄弟を探し出し、遺産分割協議に協力してもらえるようお願いをすること自体がストレスです。

そんな経緯で、誠さんが相談に来られたのでした。

こうしたときに必須となるのは遺言書です。夢相続では公正証書遺言の証人業務を受けていて、遺言書作りのサポートをしています。誠さんにご提案すると、その場で即決され、父親を説得するのでお願いしたいと帰られました。

公正証書遺言に必要な書類

公正証書遺言に必要な書類は下記のとおり。

1.遺言者の印鑑証明書(3ケ月以内)

2.戸籍謄本…遺言者と、相続人3人の関係が記載されているもの

3.不動産の固定資産税納付書※手元にない場合、固定資産税評価証明書を役所で取得

4.金融資産の概算と金融機関名のメモ

5.遺言の内容の原稿

公証人、証人が出張できる

誠さんの父親は普段ひとり暮らしをしていて、デイサービスに出かけるなど日常生活に支障はなく、意思確認も問題ありません。

しかし電車に乗り、公証役場に出かけるとなると一人では不安があることと、誠さんが付き添いで行くにしても公証役場が稼働している平日にはなかなか時間が取れないといいます。

そこで、誠さんのクリニックのお昼休みに遺言書作成ができるように、公証人と証人が父親のご自宅に出向いて作成できるよう段取りしました。

高齢や体調により外出が難しい人でも、出張サービスを利用することで遺言書を作ることができます。多少の出張費がかかりますが、それでも作れる安心感はあります。

遺言書作りの手順

公正証書遺言作成の手順は下記のとおりです。

1.公証役場を選んで必要資料(上記1~5)を送付(メール)

   ↓

2.公証役場の日程確認、3週間~4週間後の作成日になるのが一般的。

   ↓

3.遺言者の都合を確認し、遺言作成日を決定、予約します。

   ↓

4.公証役場が遺言書の原稿作成、夢相続がメールで受け取り、遺言者に送付し、内容認。追加資料等の依頼が明ければ、対応。

   ↓

5.追加・訂正などを確認して、公証役場と共有。文案_最終版を送付し、確定。公証役場の費用算出。作成当日の現金決済になります。

   ↓

6.作成当日は、公証人、証人が訪問、公正証書遺言に署名、実印押印して遺言書が完成。作成中は、公証人と遺言者、証人のみが立ち会い。相続人の方は別で待機します。

原本は役場で保管、正本、謄本が手元に渡される。

注意点:公証人が遺言者の本人確認、名前や誕生日など、及び意思の確認で、遺言書の内容(「不動産を〇〇に全部、預貯金を〇〇と〇〇に半分」)など、意思確認されるので、事前に原稿を見直してください。

公正証書遺言ができて、安堵

当日、父親は遺言書の内容について、しっかり受け答えもでき、署名、押印もできましたので、問題なく公正証書遺言が出来上がりました。誠さんも弟も、ようやく安堵できたといいます。

遺留分の問題は残りますが、それでも遺産分割協議をすることなく、不動産の名義が変えられ、金融資産も遺言書で手続きできるようになるので、本当によかったとおっしゃっています。

今後、お父さんが介護施設に移るなどの際には、自宅や他の不動産の処分をするなどして遺留分対策もしておきたいと言っておられますので、引き続きサポートしていきます。

【公正証書遺言】例

令和6年第  号 遺言公正証書

本公証人は、遺言者○○○○の嘱託により、後記証人2名の立会いのもとに、遺言者の口述を筆記して、この証書を作成する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する全ての株式の銘柄ごとの各2分の1を、遺言者の次男○○○○(昭和〇〇年〇〇月○○日生。)に相続させる。端数が生じる場合の処理は、遺言執行者に任せる。

第2条 遺言者は、遺言者の有する下記財産を含む、第1条記載の財産以外のその他一切の財産を、遺言者の長男○○○○(昭和○○年○○月○○日生。)に相続させ、遺言者の有する未払いの医療費、公租公課、その他一切の債務を長男○○に承継させる。

1.不動産

2.預貯金

3.株式等 第1条で次男○○に相続させる株式を除くその他一切の株式

第3条 遺言者は、長男○○が遺言者より前に又は遺言者と同時に死亡している場合には、前条で長男○○に相続させるとした財産については、全てを長男○○の妻である○○○○(昭和○○年○○月○○日生。)に遺贈する。義娘○○は、同遺贈を受ける負担として、遺言者の有する未払いの医療費、公租公課、その他一切の債務を承継し、支払わねばならない。

第4条 遺言者は、本遺言の執行者として、長男○○を指定する。

2 長男○○が遺言者よりも先に死亡し又は、遺言執行の職務を遂行することが困難な場合は、遺言者は、この遺言の執行者として、義娘○○を指定する。

3 遺言執行者は、この遺言に基づく不動産に関する登記手続並びに預貯金等の金融資産の名義変更、解約、払戻し及び貸金庫がある場合その開扉・解約・内容物の引取り、債務の支払、その他この遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。

4 遺言執行者は、その事務を第三者に委任することができる。

【付言事項】○○には、私の身の回りの世話を最後まで献身的に看てくれたことに言葉では言い尽くせないほど感謝しています。兄弟二人なのだから仲良く協力して下さい。みんなのお陰で充実した人生でした。本当にありがとう。

以上 遺言者 ○○○○

上記遺言者については、印鑑登録証明書の提出により、人違いでないことを証明させた。

株式会社夢相続 証人 ○○○○

        証人 ○○○○

以上のとおり録取し読み聞かせ、かつ閲覧させたところ、全員がその記載の正確であることを承認し、次に署名押印する。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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