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タワマン節税が使えない…2024年1月からスタートした新評価制度、富裕層にとって大痛手の現実【相続専門税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月16日 11時15分

タワマン節税が使えない…2024年1月からスタートした新評価制度、富裕層にとって大痛手の現実【相続専門税理士が解説】

(画像はイメージです/PIXTA)

相続税対策の王道ともいえる賃貸不動産の購入。なかでも高層マンションの上層階を活用した節税は「タワマン節税」として富裕層の人気を集めていました。しかし2024年1月1日からは評価方法が見直されています。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。

実勢価格と相続税評価額が「5倍差」のケースも

タワマン節税とは、物件の市場価格と相続税評価額の差を利用した節税方法です。このところ、国税庁は「タワマン節税」の防止に向け、相続税の算定ルールを見直す流れとなっています。

ここで重要なのは、国税庁が「マンションの評価額と実勢価格との乖離(かいり)が約1.67倍以上の場合に評価額が上がり、高層階ほど税額が増える」として、新たな計算式を導入した点です。

現行の相続税評価のルールは、1964年の国税庁通達に基づいていますが、マンションの「時価」を適切に反映できるようなルールになっていませんでした。とくに、タワーマンションの相続税評価額とその実勢価格との間には5倍もの大きな乖離が見られるようになり、それを解消するために新たなルールが提案されたという背景があります。

相続財産の評価は「時価による」…相続税法の実態

現行のルールにおける相続税の計算ですが、相続税法では、相続財産の評価は「時価による」と規定されています。具体的には、土地や建物の評価は難しいため、建物は自治体が算定する固定資産税評価額を使用し、土地は路線価を使って評価額を計算し、それらを合算します。そして、その評価額に10%から55%の税率を掛け、相続税額を計算するというプロセスで決定します。

一方の新たなルールでは、実勢価格を反映する指標が導入される見込みです。具体的には、築年数や階数などに基づいて相続税評価額を計算したうえで、実勢価格との乖離の割合、すなわち乖離率を計算します。その乖離率が1.67倍以上の場合、従来の相続税評価額に乖離率と0.6を掛けることになります。結果的に、相続税評価額は引き上げられることになりました。

では、実際にどのような計算を行うか考えてみましょう。

例として、東京都内の築9年の43階建て高層マンションの23階を想定してみます。1億1,900万円の実勢価格に対し、相続税評価額が3,720万円となっているようなケースは一般的です。乖離率を計算すると、1億1,900万円を3,720万円で割って3.2倍となりますが、新たなルールでは、相続税評価額3,720万円に乖離率3.2と0.6を掛けた7,140万円が相続税評価額になります。

この計算の意図するところですが、「乖離率を掛ける→実勢価格の倍率を掛ける」ことです。「実勢価格に戻す→0.6を掛ける」ことで、実勢価格の60%で評価することになります。60%で評価した場合の乖離率は、100%÷60%で1.66倍ですが、これは一戸建ての平均的な乖離率だとされています。

ちなみに、国税庁によれば、全国の20階以上のマンションの乖離率は平均3.16倍となっています。つまり、こちらも新しいルールの基準となる1.66倍を大きく上回っていたということです。新しいルールに変わることで、大半の住戸で相続税負担が増えることになるでしょう。

見直しのきっかけは、2022年の最高裁判決

しかし、なぜそれほどまでの乖離があったのでしょうか。それは、高層マンションの敷地にポイントがあります。マンションは土地の持ち分として、全体の敷地面積を戸数で分けます。戸数が多いタワーマンションほど、1戸当たりの土地の持ち分は小さくなることから、乖離が生じるのです。

いまは港区や中央区にもタワーマンションが増えていますが、上記の理由から、これらを相続財産として所有しておくと有利だといえます。高層階ほど眺望もよく、実勢価格も高くなり、相続税評価額の差も高層階ほど大きくなります。

この差を利用した節税策が「マンション節税」や「タワマン節税」とも呼ばれ、これまでも相続税負担の不公平性が問題視されていました。

これが改善されるきっかけが、2022年の最高裁の判決にありました。こちらはタワーマンションではないのですが、13億円で購入したマンション2棟を、3億円という低い相続税評価額で申告した相続人に対し、「不動産鑑定評価額は12億円だ」として、国税当局の追徴課税を認めた判決です。判決理由には「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する」との記載があります。

新しいルールに変わり、タワーマンションによる大幅な節税効果が見込めなくなったため、そのほかの手法を組み合わせた相続税対策をする必要があると考えられます。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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