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叔母の面倒を一緒に看てきた叔母の妹・母が急死…相続人は全部で10人!?叔母は姪宛ての相続を希望…それでも養子縁組より公正遺言証書が得なワケ【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月2日 11時15分

叔母の面倒を一緒に看てきた叔母の妹・母が急死…相続人は全部で10人!?叔母は姪宛ての相続を希望…それでも養子縁組より公正遺言証書が得なワケ【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

母と一緒に母の姉である伯母の面倒を看てきた真理子さん(仮名)。伯母は母と真理子さんへの財産相続を希望していたものの、ある日母が急死…全部で10人いる相続人のなかから真理子さんへの相続を実現させるための方法には養子縁組と公正遺言証書の作成、二つの方法があるそうで。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)はどちらの方法を提案したのでしょうか。

配偶者を亡くした伯母には子どもがいない

45歳の女性・真理子さん(仮名)が相談に来られました。母親の姉にあたる94歳の伯母の相続のことでどうすればいいか迷っているとのことで、事情を聞いてみました。

伯母は配偶者を亡くして一人暮らしをしていましたが、90代を過ぎて自宅での生活が大変となり、現在は老人ホームで暮らしているといいます。その伯母には子どもがなく、伯母が亡くなった時の相続人はきょうだいしまいになります。

伯母は6人きょうだいの一番上の長女で、下に長男、次男、次女、三女、四女の5人がいますが、そのうち健在なのは真理子さんの母親を除くと次男だけで他は全員亡くなっているそうです。真理子さんの母親は一番下の四女にあたります。

面倒を看ていた妹が先に亡くなる

真理子さんの母親は一番下ということもあり、伯母とは一回り以上も離れています。伯母も一番下の妹ということで、真理子さんの母親をいちばん可愛く思っていたようで、ずっと交流がありました。そうしたことから真理子さんも伯母のことはとても身近な存在だったと言えます。

真理子さんの母親は、伯母が80代になる頃から定期的に通ってはいろいろと面倒を看てきました。伯母もそんな妹を頼りにして預金の管理など任せてきました。

ところが、そんな母親が脳梗塞で急死してしまったのです。母親が亡くなったことによってその子であるМさんも伯母の代襲相続人になったというわけです。

伯母の相続人はきょうだいと甥姪で10人!

伯母の配偶者は5年前に亡くなり、公正証書遺言により、妻である伯母が夫の全財産を受け取ることができて、いまは叔母の財産になっています。

伯母の財産は自宅マンション、賃貸している区分マンションが4部屋、そしてアパートが1棟。すべて合わせて不動産評価は6400万円。預金が3000万円あり、合わせた伯母の財産は9400万円と試算できました。

伯母はもともと6人きょうだいですが、伯母と次男以外の4人がもう亡くなっています。その子が代襲相続人となりますので、法定相続人は長男の子2人、次男、次女の子2人、三女の子2人、四女の子3人(Мさんは四女の長女)で10人となります。

伯母の面倒は亡き母親と真理子さん家族が看てきた

伯母がひとり暮らしになってからは真理子さんの母親が毎週マンションに行ってはお金の管理や賃貸物件の管理をサポートしてきましたので、伯母は自分の財産は真理子さんの母親か、姪の真理子さんに託したと常々言ってくれていました。

真理子さんは独身で、実家で両親と同居していますので、母親が伯母さんのマンションに行くときには一緒に行き、掃除や買い物を手伝っていました。ですから伯母の発言は自然な流れだと言えます。

真理子さんの妹二人は離れたところに嫁いでいて、伯母の面倒を看る余裕がないため、伯母の意向に関しては異論はないと言います。

健在の伯父は80代と高齢で伯母のところに行くこともできず、他の代襲相続人は離れたところに住んでおり普段の行き来がないことから、今後、伯母の介護を引き受けてくれる見込みはありません。

養子縁組の申請を出していいのか?

そうしたことからも伯母の介護は母親と真理子さんが引き受けていく暗黙の了解ができていました。伯母からも母親と真理子さんに頼むと言われていますし、伯母はМさんと養子縁組してもよいとも言ってくれています。

養子縁組すれば、戸籍上、真理子さんは伯母の子どもとなりますので、きょうだいに相続権が発生することはありません。この養子縁組の申請書は伯母もМさんも記入が終わっていて、いつでも出せる状態だといいます。

この養子縁組の申請を提出したほうがいいか? ということもご質問のひとつでした。養子縁組をしない場合は、遺産分割協議が必要になりますが、人数が多いと大変です。

伯母の意思は財産は真理子さんに渡すとのことで固まっているというので、遺言書を作成する方法も取れます。

養子縁組?遺言書で遺贈?メリット・デメリット

養子縁組のメリットは、相続人がひとりになり、争いはなくなります。デメリットは相続税の基礎控除が1人分の3,600万円しかありません。

遺言書のメリットは遺産分割が不要で伯母の意思が実現できます。きょうだいしまいには遺留分の請求権がないので相続の仕方が確定できます。基礎控除は法定相続人分をカウントできるので、9,000万円のまま。デメリットは遺言書の作成に費用がかかり、証人も必要になります。

相続税がどれくらい違うか?

それぞれの相続税の概算を比べてみました。

財産は9,400万円

相続人1人・養子縁組→ 相続税1,040万円

相続人10人・遺言書→ 相続税40万円

基礎控除が9,000万円あるのと、3,600万円しかないのとでは、相続税は養子になってしまうと26倍になるのです。

このように相続税を比較すると、争いを避けるためによかれと思って養子縁組をすると、思わぬ落とし穴で相続税が跳ね上がるということが想定されました。この内容を伯母にも説明し、公正証書遺言を作る方向で決まりましたので、準備を進めています。

遺言書の文案例

令和6年 第   号 遺言公正証書

 本公証人は、令和〇年〇月〇日、遺言者○○○○の嘱託により、後記証人の立会いの下に、遺言者の口述の趣旨を次のとおり筆記し、この証書を作成する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産並びに現金・預貯金及び有価証券等金融資産を含む一切の財産を遺言者の代襲相続人である○○○○(昭和〇〇年〇月○○日生。以下、「代襲相続人○○」という。)に相続させる。

【不動産の表示】・・・詳細記載(省略)

第2条 遺言者は、代襲相続人○○○○に対し、遺言者の保有する前条に掲記の財産以外のその他の一切の財産を相続させる。

第3条(債務・費用)

  遺言者は、次の債務・費用を○○○○に承継又は負担させるものとし、後記遺言執行者は、第1条記載の預貯金等金融資産を随時その支払に充てることができる。

 ⑴ 遺言者の未払の一切の債務(公租公課・借入金・入院費・医療費・介護関係費・日常家事債務等)

 ⑵ 遺言者の葬儀、埋葬、供養に要する費用

 ⑶ この遺言の執行のために要する費用 

第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、前記代襲相続人○○○○を指定する。

2 遺言執行者は、預貯金その他金融資産の名義書換、解約、払戻し、貸金庫の開披等この遺言執行に要する一切の権限を有する。

3 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、必要があるときは、第三者にその任務を行わせることができる。

(付言事項)

 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

以 上

遺言者          ○ ○ ○ ○

昭和〇年〇月〇日生

上記は、印鑑登録証明書の提出により、人違いでないことを証明させた。

株式会社夢相続

会社役員

証 人        曽  根  惠  子

           昭和○○年○○月○○日生

株式会社夢相続

会社員

証 人         ○ ○ ○ ○

             昭和○○年○○月○○日生

以上のとおり読み聞かせ、かつ、閲覧させたところ、一同その記載に誤りがないことを承認し、遺言者及び証人は、次に署名押印する。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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