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70歳を超えて働くのは、もはや当たり前に?「人生100年時代」に向けて50代が知っておくべき「定年前後の制度」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月15日 9時45分

70歳を超えて働くのは、もはや当たり前に?「人生100年時代」に向けて50代が知っておくべき「定年前後の制度」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

50代になると、定年退職や再雇用、再就職、そしてセカンドライフについて考える機会が増えていきます。そこで、60歳以降の就業統計情報とともに、再雇用や再就職の際の給付制度や新たなチャレンジをしたい時に活用できる制度など、退職前に知っておきたい情報について村井美則FPがファイナンシャルプランナーの視点からわかりやすく解説します。

長寿化で「50代」から定年後の人生設計をしておく必要がある

その昔、定年退職は55歳が主流でした。例えば、昭和25年の平均寿命は、男性は約62歳、女性は約58歳と、定年から平均寿命までの期間は3~7年程度でした。

では、2023年はどうでしょうか。平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳と年々延びています。仮に定年を60歳とすると、平均寿命まで20年以上あります。さらに、2050年までに健康寿命が約7歳延びるとの予測もあるため、定年が65歳に延長されたとしても、年金と資産で生活する期間はますます長くなります。

また、高年齢者雇用安定法の改正により、企業は「定年の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度導入」のいずれかを実施する義務があります。しかし、現在でも60歳定年の企業は約72.3%です。それでも時代は少しずつ変化しており、60歳以降、約87%の人が継続雇用されています。さらに、希望があれば、最長70歳までの定年延長が企業の努力義務となっています。

昭和25年の平均寿命以上に働くことが、今や当たり前になってきました。今の60代・70代は若々しく、趣味や仕事に熱心に取り組む人が多く見られます。実際、総務省の令和5年労働力調査によると、年代別の就業者割合も年々増加しています。下記を見ると分かるように、70代を超えても、多くの人が働いて収入を得ています。

   【年代別の就業者割合】

  • 60~64歳:男性84.4%、女性63.8%
  • 65~69歳:男性61.6%、女性43.1%
  • 70~74歳:男性42.6%、女性26.4%

また、内閣府の調査によると、約4割の人が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答していますし、さらに、「70歳位まで」と「70歳超えても」働きたいという人を合わせると、約9割の人が高齢期でも働きたいと強い就業意欲を持っています。

働く理由は、生活を維持するためだけでなく、頭や体の健康維持、さらには社会に貢献する実感を得ながら人生を豊かにしていきたいという方も多いでしょう。

定年退職が間近に迫っている方にとって、今のうちから定年前後の制度を理解しておくことは、人生設計の一助となります。

「失業手当」と「高年齢求職者給付金」の違い

定年退職後に受け取れる給付金としてまず思い浮かぶのは、雇用保険の「基本手当(失業手当)」でしょう。この失業手当は、被保険者期間や受給資格により異なり、90日~最長330日分の給付金が支払われます。60歳~65歳未満の定年の場合は、90日~最長150日分の給付となります。

では、65歳以降はどうなるのでしょうか。65歳以降は「高年齢求職者給付金」となり、30日または50日分の給付金が支払われます。支給条件としては、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あり、失業状態であることが必要です。

このように、「失業手当」と「高年齢求職者給付金」では給付の日数が異なります。失業手当を受け取ったほうがいいと考えて65歳よりも前に退職という選択肢もありますが、会社によっては退職年齢によって退職金が少なくなる場合もあるため、いつ退職するのが得策かをしっかり確認しましょう。

収入ダウンとなった方の給付金「高齢雇用継続給付金」

60歳以降、再就職や再雇用で就業したとしても、会社の規定により賃金が大幅に低下することがあります。退職日の前後1日でスキルが低下するわけでもないのに、賃金が下がるのは納得いかないものです。そこで、高年齢層の雇用を支援するための給付金があります。それが「高齢雇用継続給付金」です。

支給条件の主なものは以下のとおりで、これに該当する場合は賃金の最大15%の給付金が支給されます。

【高齢雇用継続給付金の主な支給条件】

  • 60歳以上65歳未満
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上
  • 60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下

「高齢雇用継続給付金」には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」との2つの給付金があります。

  • 継続雇用で賃金が低下した方は「高年齢雇用継続基本給付金」
  • 再就職で賃金が低下した方は「高年齢求職者給付金」(失業手当の支給残日数が100日以上あること)

正社員、契約社員、非常勤嘱託職員、パート、派遣社員など雇用契約の種類に関わらず、支給条件に合致すれば受給申請が可能です。ただ、残念ながら2025年4月以降は、高年齢者雇用継続給付金の最大給付率が15%から10%に引き下げられ、さらに2030年4月以降は制度の廃止が予定されています。

新たなチャレンジに向けた職業訓練・教育訓練給付金

再就職に向けてスキルを身に付けたい場合、失業手当の受給資格があれば「公共職業訓練」にチャレンジする方法もあります。自費でスクールなどに通うより安く学べ、なおかつ、失業手当をもらえる期間が訓練終了日まで延長されます。

さらに、受講手当、通所手当、寄宿手当などを受けられる場合もあり、サポートを受けながら学ぶことができます。ただし、訓練の種類やコースによっては受講できる年齢に制限があるため注意が必要です。

失業手当の受給資格がない方には「求職者支援訓練」があり、自宅からオンラインで受講できるコースなどもあります。また、雇用保険の被保険者で条件を満たせば、「教育訓練給付金」を利用して、指定の教育訓練を受ける際に受講料の一部を補助してもらうことができます。

これらの制度にチャレンジしたい場合は、ハローワークで一度相談してみましょう。求人情報や職業相談、職業訓練の案内など、さまざまなサービスが提供されています。

また、現在は民間の再就職支援会社や転職エージェントも活用できます。キャリアカウンセリングや面接対策などのサポートを受けることができます。ただし、会社や担当により紹介先やサービスに差があるため、見極めは必要となります。

「人生100年時代」に向けて、この先のライフスタイル・ワークスタイルを考えてみよう

「人生100年時代」は他人事ではなく、現実味を帯びてきました。老後、年金と積み上げた資産だけでは生活に不安があるから働いているのだとしても、それまで培ってきたスキルや知見は貴重なもので、それを社会に還元している高齢者を拝見すると、素晴らしいと感じます。

また、50代から新たなスキルを習得して、セカンドライフを充実したものにするのも一考です。人生の後半戦、どんなライフスタイル・ワークスタイルでいくか、一度考えてみてはいかがでしょうか。

村井美則

ファイナンシャル・プランナー

【参考】

厚生労働省令和4年就労条件総合調査結果の概況

内閣府令和5年版高齢社会白書

厚生労働省ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)

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