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「病気リスクを伴う危険な仕事、いくらならやる?」「病気が治るかもしれない薬、いくらなら買う?」…人間の脳、同じ趣旨の問いかけに「判断がブレブレ」になる理由【経済評論家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月13日 9時15分

「病気リスクを伴う危険な仕事、いくらならやる?」「病気が治るかもしれない薬、いくらなら買う?」…人間の脳、同じ趣旨の問いかけに「判断がブレブレ」になる理由【経済評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

人間の脳は非常に興味深く、非常に小さな確率は実際よりも大きく感じるなど、錯覚を起こすことが知られています。そのため、同じ確率で起こる事象に対しても、質問のされ方や本人の受け止め方によって判断が大きくブレることがあり、ときにはそれが経済的損失につながるケースもあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

非常に小さい確率は、実際より大きく感じやすい

眼の錯覚は有名ですが、脳も錯覚します。前回の拙稿『ナゼ?「うまくいったら高額報酬を保証」より「ヘマしたら高額報酬から減額」の契約のほうが〈高い成果〉を見込めるワケ』では「一度手に入れたものは手放したくない」という錯覚について記しましたが、今回は「非常に小さな確率は実際よりも大きく感じる」という錯覚について見ていきましょう。

実際の確率と、人々が感じる確率の関係は下の図表のようになっているといいます。人間は、非常に小さな確率は実際よりも大きく感じるようにできているのだそうです。飛行機事故の確率は非常に低いですが、飛行機に乗るのは怖いと思っている人も多いようですし、宝くじで高額賞金を得る確率は非常に低いですが、当たりそうな気がして買う人も多いですね。

人類の進化の過程で、そういう錯覚をする個体のほうが生き延びやすかった、ということなのでしょうから、錯覚をすること自体は恥ずかしいことではなく、錯覚しない人より進化しているのだと誇りに思ってよいでしょう(笑)。

「危険な仕事があります。何円払えば引き受けてくれますか?」

ここで読者にいくつか質問をします。

①危険な仕事があります。0.0001%(100万分の1)の確率で失明します。何円支払えば引き受けていただけますか?

結構高い金額を頭に思い浮かべた人が多いでしょう。

②あなたは眼の病を患っていて、50%の確率で失明します。さて、危険な仕事があります。0.0001%(100万分の1)の確率で失明します。何円支払えば引き受けていただけますか?

50%の確率が50.0001%に上がるだけなら誤差の範囲だから、報酬がそれほど高くなくても引き受けよう、という人も多いでしょう。

本稿とは直接関係ありませんが、やはり脳の錯覚を試す質問です。

③あなたは眼の病を患っていて、何もしなければ0.0001%の確率で失明します。その病を治癒する薬があります。何円なら買いますか? ④あなたは眼の病を患っていて、何もしなければ必ず失明します。その病を0.0001%の確率で治癒する薬があります。何円なら買いますか?

上記の4つの質問は、いずれも「あなたの眼の100万分の1の値段は何円ですか」と聞いているのですが、それぞれ違う答えを思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。

宝くじの期待値は、明確に「マイナス」

「宝くじを買う行為は合理的か」ということを考える際に重要なのは「期待値がプラスか否か」ということです。「期待値」というのは、当たる確率と賞金金額を掛け合わせた値で、これが買値より大きければ「確率的には儲かる」取引ですし、小さければ「確率的には損をする」取引だということになります。

宝くじの当選確率は調べればわかりますが、そんなことをする必要はありません。宝くじを印刷したり販売したりするコスト等は、買った客が払った金から出ているわけで、それを差し引いた金額が当選者に支払われる、ということを考えれば、確率的には損な取引だ、ということが簡単に理解できるからです。

したがって、経済的利益を追求するならば、宝くじは買うべきではありません。しかし、経済的利益のために人生があるわけではありません。

「まったく無意味な行為」をするのも人生

五輪やW杯などで日本チームを応援する人は多いですね。それ以外でも、応援しているスポーツチームなどがある人は多いでしょう。それは「経済的利益」とは無縁の行為ですね。加えて、テレビの前で応援したから選手が張り切る、ということはないでしょうから、応援それ自体がまったく無意味な行為だといってもよいかもしれません。

しかし、応援しながら見ると楽しいですし、勝ったときの喜びや負けたときのガッカリさえも、人生の彩りになるでしょう。宝くじも同じです。「当たれ!」と念じながら抽選の日を待つワクワク感が、わずか数百円で得られるのですから、安いものだと考えることもできるでしょう。

しかも、人間は上記のように錯覚しますから「当たるかもしれない。当たったらなにを買おうかな」などと(合理的でないけれどもワクワクする)妄想に浸ることができるわけです。錯覚がなかったら「どうせ当たらないさ」と考えてしまってワクワクできないわけですから、錯覚に感謝ですね(笑)。

保険もいわゆる「損な取引」ではあるが…

保険も宝くじと同様に、確率的には損な取引です。しかし、たとえば自動車を運転するときには絶対に必要です。万が一大事故を引き起こしてしまったら大変ですから。

実際に必要なだけではありません。「大事故を引き起こしてしまったらどうしよう」という心配を和らげてくれる役割も重要です。しかも、実際に大事故が起きる確率は非常に小さいのに、それが大きく感じられるとしたら、それを和らげてくれる効果は意外と大きいかもしれません。

ただ、保険のなかには加入する必要のないものも多いので、そのあたりの見極めは必要となるでしょう。たとえば退職金を受け取った元サラリーマンは生命保険の必要はありません。彼(女)が他界しても、配偶者は退職金を相続できるので、(悲しむでしょうが)経済的には困らないからです。

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

塚崎 公義 経済評論家

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