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施設は嫌じゃあ…東京在住・40代息子夫婦の説得で「老人ホーム」に“嫌々”入居した、年金月17万円・83歳男性の末路【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月16日 11時15分

施設は嫌じゃあ…東京在住・40代息子夫婦の説得で「老人ホーム」に“嫌々”入居した、年金月17万円・83歳男性の末路【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

親が遠方に住んでいる場合、子は親を心配して施設への入所を勧めるケースもあるでしょう。しかし、後に大きな後悔に変わることも多いようです。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが具体的な事例をもとに、高齢者施設を選ぶ際の注意点を紹介します。

40代息子夫婦の“粘り強い説得”で老人ホームへの入居を承諾したCさん

都内に住む夫Aさん(49歳)と妻Bさん(48歳)。ともに会社員として働いており、世帯年収は1,000万円ほど。19歳の娘は「1人暮らしはお金がかかるし面倒だから」と、自宅から大学に通っています。

半年前にAさんの母が80歳で亡くなってからというもの、Aさんの父であるCさん(83歳)の“衰え”が顕著にみられるようになりました。

A夫妻はそんなCさんを心配していましたが、Cさんが1人で暮らす実家は北陸にあり、冬は積雪も厳しく、なにかあっても都内からすぐに駆けつけることはできません。

なんとか目の届く範囲で暮らしてほしいと考えた2人は、Cさんを高齢者施設へ入居させようと考えました。

当初は「施設は嫌じゃあ……ワシャあ自宅の布団で最期を迎えるんじゃ!」と、老人ホームへの入居を頑なに拒否していたCさん。しかし、Aさん夫妻は「頼むよ父さん……もしなにかあったらじゃ遅いんだ。心配するこっちの身にもなってくれ」と、粘り強く説得。あまりにもしつこい息子夫婦に対し、Cさんは嫌々ながら施設への入居を受け入れました。

Cさんは認知症の診断を受けていないため、認知症専門のグループホームへ入居することはできません。資産も多いわけではなく、収入も年金以外にはなにもないため、多額の入居一時金が必要な有料老人ホームへ入居するのも金銭的に困難です。

さらに、Cさんはまだ介護認定も受けておらず、介護が必要というわけでもないため、要介護3以上の高齢者を対象としている特別養護老人ホームへの入居もできません。

そのため、近くにある「サービス付き高齢者向け住宅」のなかで、月額利用料が年金の範囲内で暮らせる施設を選びました。部屋代、管理費、食費などすべて合わせて月14万円ほどの施設です。

施設への入居を決める前に必ず行うべき施設見学は、A夫妻が仕事の合間を縫って行いました。

入居したばかりなのに…数ヵ月後に起きた「まさかの出来事」

入居当初、A夫妻は子どもを連れて頻繁にCさんのもとを訪れていました。孫にも頻繁に会えることから、「ここでの暮らしも案外悪くないな」と笑っていたCさんでしたが、だんだんとCさんの様子に変化がみられるようになります。

というのも、日々の仕事が多忙であることや元気な父親に対する安心感から、A夫妻は徐々に老人ホームへ通う頻度が減っていったのです。

その結果、Cさんは慣れない環境でのストレスとホームシックから、軽いうつ病を発症してしまいました。また、これが引き金となり、徐々に認知症と思われる症状もみられるように。

ある日、久しぶりにA夫妻が家族で老人ホームを訪れると、Cさんは開口一番「どちらさん?」と尋ねました。

また、別の日には「財布がない!」と部屋のなかをウロウロしており、「ここに置いてあるよ」とAさんがいつも入れてある引き出しから取り出して優しく伝えると「誰かに隠された!」と落ち着かない様子です。「違うよ、ずっとここにあったよ」と教えても、「お前が隠したんか!」と詰め寄ります。

見かねたA夫妻がCさんを病院へ連れていくと、Cさんは予想どおり、認知症を発症していることがわかりました。

Aさんは、「俺たちが施設を勧めたせいなのか……? こんなことになるなら無理に入居させなければよかった」と後悔しています。

日本の“平均寿命”と“健康寿命”の差が暗示する「家族の負担」

厚生労働省の調査によると、日本人の平均寿命(2019年)は男性81.41歳、女性87.45歳と女性のほうが男性より6歳ほど長く、人の手を借りずに自分で生活できる状態を指す「健康寿命」についても、(2019年)は男性72.68歳、女性75.38歳とこちらも女性のほうが男性よりも3歳ほど長い状況です。

この平均寿命から健康寿命を差し引きすると男性で9年、女性で12年ほどの差があり、人の手を必要とする期間、つまり介護を必要とする期間が男女ともに10年ほどあることがわかります。

10年ものあいだ、家族が介護をするとなると大変な負担となることは想像に難くありません。

理想の“終の棲家”選びに欠かせないポイント

高齢者施設に入れた場合、金銭的負担が大きい

とはいえ、高齢者施設に入れるとなると今度は金銭的な負担が少なくありません。

Cさんが入居した「サービス付き高齢者向け住宅等」の月額利用料の平均額は約14万円です。なんとか年金で入居できる金額ですが、自営業や個人事業主など、収入が国民年金のみの場合は支払いが難しい場合もあります。

このように、老後の選択肢を増やすためには資金の事前準備が不可欠です。しかし、現役世代で介護の資金を準備できている人はせいぜい1割程度といわれています。

老人ホームに入居すれば専門のスタッフが常駐し、食事も提供されることから、入居者もその家族も安心できるでしょう。しかし、2017年度の厚生労働省の調査によると、約7割が人生の最期を迎えたい場所として「自宅を望む」という結果が出ています。

とはいえ、親の望みを優先しすぎるのはおすすめしません。無理をして自宅での介護を選択した結果、介護離職で経済的に苦しくなり、肉体的・精神的に追い詰められ、虐待に走ってしまうという悲劇も少なくないためです。

後日談…「本人の思い」と「家族の思い」のすれ違いが生む“後悔”

一時は不穏になっていたCさんですが、Aさん一家が定期的に施設を訪問することで症状が落ち着き、現在は小康状態を取り戻しているようです。

今回のAさんとCさんのように、親のことを思って老人ホームを勧めた結果、その子どもが後悔するというケースが増えています。

一生の後悔を生まないためには、念入りなコミュニケーションが不可欠です。親の考えと自分たちの考えをお互いに伝えあい、なにが最善かを擦り合わせて、納得のいく選択肢をみつけられるように何度も話し合う必要があるでしょう。

また、高齢者施設を選ぶうえでいくつかめどがついたら、必ず「本人も」施設見学を行いましょう。ホームページやパンフレットに載っている連絡先に見学したい旨を伝えれば、担当のスタッフが案内してくれます。わからないことや疑問点があればスタッフに質問すれば詳しく答えてもらえます。老人ホーム選びで確認しておきたいポイントとしては下記のとおりです。

・看取りは可能か(終の棲家となりえるのか)

・医療機関との連携はあるのか(いざというときのために)

・食事のメニューは満足か(毎日のことであり、食事は楽しみのひとつ)

・趣味活動、日々のルーティーン(習慣)の継続は可能か

高齢者にとって、急激な環境の変化は避けたいところ。親に遠方で1人暮らしを続けてもらうのか、自宅の近くにある施設に入ってもらうのか、家族ごとに状況が違うので一概になにがいいとはいえませんが、後悔のないように家族で充分な話し合いを心がけましょう。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役  

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