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これからの遺言はどうなる?「デジタル遺言(電子遺言)」「自筆証書遺言保管制度」活用のポイント【相続専門税理士が解説】 

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月24日 11時15分

これからの遺言はどうなる?「デジタル遺言(電子遺言)」「自筆証書遺言保管制度」活用のポイント【相続専門税理士が解説】 

(画像はイメージです/PIXTA)

相続手続きの現場も、IT化の流れが進んでいます。デジタル遺言を筆頭とした「電子化」により、手続きは格段に楽になる可能性があります。ここでは「デジタル遺言(電子遺言)」「自筆証書遺言保管制度」について見ていきます。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。

「デジタル遺言」が実現したら、遺言書作成の敷居は下がる

内閣府の規制改革推進会議では「デジタル遺言制度」の実現に向けた検討が2022年から行われています。もし「遺言書のデジタル化」が実現すれば、遺言書作成はぐっと敷居が下がり、身近になるのではないでしょうか。

「デジタル遺言」とはなにかというと、法的効力がある自筆証書遺言を、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上に作成し、保管できる制度のことです。

いまの「自筆証書遺言」では、本人確認や意思確認の手段として、全文の自署、日付、署名、押印が必要ですが、インターネット上ではそれができなくなることから、代わりとなる本人確認手段や改ざん防止の仕組みを構築しなければなりません。その点については、ネット上での顔撮影、マイナンバーや顔認証、電子署名などの利用が検討されています。

自筆証書遺言の場合、紛失や改ざんのリスクがありますが、デジタル遺言ならクラウド上で遺言を保管するため、ブロックチェーン技術等で改ざんを防止することが可能となります。

自筆証書遺言も、相続人に見つけてもらえない、紛失する、改ざんされるなどの理由で相続争いになることもあります。そういった状況を考えると、自筆証書遺言と比較した場合、デジタル技術の活用によって一定の信頼性を確保できるデジタル遺言のほうがメリットがあるといえるでしょう。

もっとも、すべての人にとってメリットがあるとまではいい切れません。高齢者の方のなかには、インターネットの操作以前に、デジタル機器が苦手な人もいるため、その点は課題が残るといえます。

ただし、インターネットを利用できる人にとっては、操作は簡単になるでしょう。インターネット上でフォーマットに沿って入力することで、遺言の書き方がわからない人でもスムーズな遺言書作成ができると考えられます。

日本ではまだ実現していないデジタル遺言ですが、海外では「紙以外」の遺言制度の整備が進んでいます。たとえばアメリカでは、2人以上の証人の前で電子署名すればデジタルでの遺言書を認めるという、「電子遺言書」の制度があります。韓国では、録音による遺言が認められているのです。

遺言書の紛失や改ざんを回避する「自筆証書遺言保管制度」

現状において、すでに自分で自筆証書遺言を作成済みの人がさらに安全を担保する方法としては、「自筆証書遺言保管制度」というものがあります。

これは、自分で作成した遺言書を法務局で保管してもらえる制度で、これを使えば、遺言書の紛失や改ざん、隠蔽といった問題が起こることを防げるのです。また、法務局の窓口で遺言書の形式を確認してもらえるため、遺言書の書き方の問題で無効になってしまうことを防ぐこともできます。

また、通常の自筆証書遺言の場合、相続が発生したときに家庭裁判所の検認が必要ですが、この自筆証書遺言保管制度を使えば検認は不要です。

遺言書が法務局に保管されていることを相続人が知らない場合も安心です。相続が発生したときに、法務局から相続人へ通知が送られるからです。相続人は、全国の法務局の窓口で遺言書を閲覧することができ、証明書も発行してもらえます。この証明書があれば、不動産の相続登記や銀行預金の解約手続きができるようになります。なお、法務局で保管してもらうには、1通につき3,900円の費用が掛かります。

現在、デジタル庁では、法定相続人の特定に係る遺族の負担を軽減させるための制度改正を検討しています。法務省でも、相続手続きで戸籍謄本や戸籍抄本の添付を省略できるように、戸籍情報連携システムが2024年から稼動しています。さらなる利便性の向上が期待できると考えられます。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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