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冗談じゃない!…退職金5,000万円・年金月36万円の70代“勝ち組”夫婦〈高級老人ホーム〉入居を検討→必死に止める45歳娘が抱いていた「まさかの計画」に驚愕【CFPが助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月22日 11時15分

冗談じゃない!…退職金5,000万円・年金月36万円の70代“勝ち組”夫婦〈高級老人ホーム〉入居を検討→必死に止める45歳娘が抱いていた「まさかの計画」に驚愕【CFPが助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後を旅行三昧で楽しんだ70代夫婦は、あることをきっかけに「高級有料老人ホーム」への入居を検討しはじめます。しかし、45歳のひとり娘は、両親の施設入居に猛反対……いったいなぜなのでしょうか。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例をもとに、老後資金の“思わぬ落とし穴”について解説します。

毎月のように温泉旅行、海外クルーズ…老後を謳歌する夫婦

夫婦で上場企業に勤務していたAさん(79歳)と妻(75歳)は、都内の閑静な立地にある分譲マンションに住みながら、まさに“勝ち組”といえる老後を謳歌しています。

Aさんは60歳で定年を迎えたあと、5年間は系列会社の役員を務め、65歳で完全リタイア。退職金は夫婦あわせて約5,000万円でした。

現役時代は夫婦とも多忙を極めていたAさんとBさん。退職後は「せっかく稼いだお金なんだから、生きているうちに使いたい」と考え、ほとんど毎月のように、夫婦で温泉旅行に出かけるようになりました。

また、海外赴任中に興味を持っていたエーゲ海をはじめ、カリブ海や北欧、インド洋など、国内のみならず海外のクルーズにも羽を伸ばしました。

A家の現在の収入は、国民年金と厚生年金のほか、企業年金や個人年金保険などをあわせると、月に36万円ほどです。また、旅費はほとんど貯蓄を取り崩して賄っていたため、現在の貯蓄残高は1,600万円ほど。

理想の老後を楽しんでいたA夫妻ですが、Aさんは来年80歳を迎えます。少しずつ体力も衰え、また貯蓄も減ってきていることから、これからの暮らしについて妻と話し合うようになりました。

その結果、夫婦が出した結論は、「海外旅行は今度のハワイ旅行でいったんやめにしよう。それからは貯蓄に手をつけず、毎月年金収入の36万円の範囲で収まるように生活しよう」というものでした。

しかし……。A夫妻の計画は、無念にも頓挫してしまうことになるのです。

ハワイ航路で決めた老後後期の過ごし方

“最後のハワイ旅行”からの帰路、A夫妻はクルーズ船内で、開業医をしていたという老夫婦と親しくなりました。

老夫婦と話すなかで、これからの暮らしについての話題となった際、老夫婦から「あら、そうなのね。私たちはいろいろ考えて、老人ホームにお世話になることにしたの。部屋からの眺めもいいし、スタッフもいい人ばかりだし、施設での生活も悪くないわ」という話を聞きました。

聞けば、老夫婦は、“終の棲家”として高級有料老人ホームを選び、快適な生活をしているというのです。

そんな老後も良いかもしれないな……なんとなく「死ぬまで慣れ親しんだ実家で過ごす」と考えていた2人でしたが、この話に感銘を受けたA夫妻は、老夫婦と同じように高級有料老人ホームへの入居を考えるようになりました。

冗談じゃない!…ひとり娘が見せた「意外な反応」

A夫妻には、ひとり娘のCさん(45歳)がいます。Cさんは、夫妻が住むマンションから車で30分ほどの賃貸マンションに、大学受験を控えた2人の娘と暮らしています。夫は地方に単身赴任中です。

「ハワイ旅行から帰った」と連絡を受けたCさんは、お土産を受け取るため実家にやってきました。

そこでAさんから「あのな、老人ホームに入ろうと思っているんだ」と切り出され、驚くCさん。よく話を聞くと、両親が入ろうと考えている施設は高級有料老人ホームのようです。

Aさん「今度見学に行ってくるんだが、3食上げ膳据え膳で、大浴場もあるんだそうだ。それに、図書室や理美容室、カラオケ、ジムなんかもあるみたいでな。旅行を控えても退屈せずに済みそうだよ」

Cさん「毎月36万円の生活でも十分贅沢だと思うけど、元気な人がそんな豪華なところに住んでどうするの? その施設は収入の範囲内で過ごせるんだよね?」

※ 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」2022(令和4)年度によると、老後の最低日常生活費は月額で平均23.2万円。ゆとりある老後生活費は37.9万円となっている。

Aさん「収入の範囲内とはいかないが……不動産の人にも聞いて、母さんとも計算してみたんだが、このマンションを売れば施設の費用は賄える計算なんだ」

Cさん「……ちょっと待って、マンションを売る? 冗談じゃないわ! どうしてそんなことになったのよ! 父さんと母さんの面倒は私たちがみるから、急に老人ホームに入るとかとんでもないこと言わないで!」

その後しばらく話し合いが続きましたが、議論は平行線のままで、らちがあきません。決着がつかぬまま、その日のCさんはお土産も持たずに帰っていきました。

いつもは夫婦がなにを話しても「あっそう」というくらいで、淡泊な反応しか示さないCさん。A夫妻はそんなCさんの意外な反応に戸惑いながらも、「もう約束してしまっているしな……」と、翌日予定していた有料老人ホームの見学に向かいました。

理想の施設だったが…迷ったA夫妻がとった行動は

話に聞いていたとおり、その高級有料老人ホームはリゾートホテルのような外観と設備を備えており、スタッフの対応も丁寧で温かく申し分ありません。

肝心の費用については、入居一時金が夫婦で約4,500万円。また管理費や食費、水道光熱費が含まれた月額利用料が、夫婦で月45万円ほどかかります。

また、図書室や理美容室、カラオケ、ジムといった設備、定期的に開催されるレクリエーションやイベントについては、有料のものと無料のものがあります。日用消耗品などは、注文すれば部屋に届けてくれますが、都度費用がかかるようです。

施設内には診療所が開設されており、いつでも利用可能です。また介護が必要になれば、系列の施設の利用や転所対応もしてくれますが、すべて別途費用が必要となります。

不動産業者に尋ねたところ、夫婦が現在住んでいるマンションを売却すれば1億円ほどは手に入ると言っていたことから、「この施設を“終の棲家”にできる」と夫婦は考えています。

とはいうものの、愛娘があれだけ反対するのも珍しいことです。即断は避け、ここは客観的な立場で考えてもらおうと、2人は知り合いのCFPに相談することにしました。

「自宅で暮らす」「施設で暮らす」どちらも破産の心配はないが…

筆者はA夫妻から一連の話を聞き、2つのプランについてそれぞれ試算してみることにしました。すると、A夫婦がハワイ旅行前にもともと決めていた「海外旅行は止めて、毎月36万円以内で過ごす」という計画は、現在のマンションに住み続ければ、十分実行可能なものです。

他方で、見学した有料老人ホームに、現在のマンションを売却して入居した場合も、入居一時金と月額利用料だけを考えれば、夫婦が100歳になるまでは資金が枯渇することはなさそうです。

しかし、月額利用料以外に支払う生活費や有料イベントなどの参加費、それに加え今後介護や看護が必要になったときの支出を考えると、高齢になってから資金が枯渇しないか、さらなる精査が必要です。

Cさんもいうように、健康で自活できているのにわざわざ老人ホームに入居して、老後の資金を使うのは、単なる無駄使いかもしれません。また、自宅を売却してしまった場合、老人ホームの生活に飽きても、もはや戻る家はありません。

そこで筆者は、「いまいちど娘さんと話し合うことをおすすめします」と話しました。

なお、内閣府「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)」によると、65歳以上の男性1,277名、女性1,400名計2,677名に“終の棲家”について尋ねたところ、次のような調査結果となっています。

いつもドライな娘が両親の施設入居を必死に止めたワケ

それからしばらくして、Aさんから連絡がありました。

「あれから娘も交えてもう1度よく話し合い、老人ホームに移るのは娘の助言どおりやめることにしました。もし介護が必要になったときは在宅介護をお願いして、住み慣れたいまのマンションでできる限り生活を続けることに決めました。

娘はね、私たちのマンションについて、万が一のことがあったら子どもに住まわせるか売却しようと、相続したときのことまで考えてくれていたそうです。それなのに私どもが急に売却すると言い出したものですから、慌ててしまったようでした。

そんな計画があるのならいますぐにでも明け渡したいものですが、娘も孫も遊びに来るたびに長生きしてねと言ってくれるし、どうしたもんやら」

今回のA夫婦の騒動は、いまのところは笑い話です。しかし、年をとり物事の判断が鈍くなり、後先を考えずにお金を使ってしまえば、思わぬタイミングで生活が困窮しかねません。

「自分たちが貯めたお金の使い道を自分たちで決めてなにが悪い」と考える人もいるでしょうし、その考えは決して間違っているわけではありません。しかし、限られた情報をもとに偏った判断をした結果、後々後悔することになった、家族とトラブルに発展した……といった話は驚くほどよく聞きます。

悔いのない老後を過ごすためにも、老後にまとまったお金を使うときは、冷静な判断ができるよう、家族の意見を聞いたうえで決断することをおすすめします。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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