独立の経験があると転職で不利になる?…一度独立した人が再度「会社勤め」にチャレンジする際に“必ず”するべき「準備」とは【人材業界のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月22日 7時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
昔ほど法人の立ち上げが難しくなくなり、働いていた企業を退職して「独立」を選択した人もいるでしょう。法人を立ち上げてから、何らかの理由で再度転職する場合、「独立経験」は転職活動にどのような影響を与えるのでしょうか。そこで今回は、東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長・福留拓人氏が、独立経験のある人が転職を有利に進めるコツについて解説します。
会社法・商法の改正によって「1円」でも法人を立ち上げられる現代
昨今は会社法や商法が次々と改正され、いまや1円でも法人を立ち上げることが可能になりました。かつての状況と比べると隔世の感があります。また、個人事業主が独立しやすくなってからも久しくなりました。
2006年頃にITベンチャーが台頭して大きなブームになりました。劇場型のベンチャー企業が一般的なメディアでも取り上げられるなどして世間を騒がせたことは、印象的な出来事として記憶に残っていることでしょう。
その頃から、一般の人々にとってもベンチャー企業やフリーエージェントがより近い存在になってきたと思います。そして現在において、革新的なベンチャー企業の挑戦は、社会的にもますます広がりを見せています。日本人はこのような時代の流れのなかで20年ほどの歳月を過ごしてきました。
私たち人材コンサルタントは、候補者(キャンディデート)のレジュメを日々拝見していますが、最近では転職の合間に独立した経験を持つ方が非常に多くなっています。つまり、どこかの会社に勤めた後、一度は自身で法人を設立して独立したり、副業を行ったりするケースが増えているのです。
私自身は、独立された成果として、例えば売上を追求したり、多くの従業員を雇用したり、会社の規模が拡大したということであれば素晴らしいことだと考えています。
しかし、必ずしも会社の大小が他人からの一方的な評価の基準になるものではないと考えています。それは、あくまでも独立された方の目標設定に基づいて評価されるべきものです。設立した法人がどうなったかということは、本人の問題であって、周囲があれこれ言うべきことではないと考えています。
独立が「転職」に及ぼす影響とは
独立されてから、私たちTESCOのようなエージェントに経歴書をお預けになる方々の多くは、志なかばであったり、真意とは異なるけれど何らかの理由があったりして、もう一度どこかの会社に勤めようと考えているのではないでしょうか。
設立した会社の業績が順調に推移しているのであれば、そちらで活躍されることが多いと思われます。しかし、繰り返しになりますが、独立という行為が自身の評価で「失敗」だったとしても、他から否定されるものではないと断言できます。そのため、独立経験のあとで就職を考える場合、よくいただく質問が「自分のことを使いにくいと思われないでしょうか」というものです。この点は、多くの方が気にされるところです。
心配はもっともで、「会社を飛び出して自分の法人を作った人は、もう集団の輪に入れないのではないだろうか」と考える古いタイプの会社も依然として存在します。また、自身の法人をどのように手仕舞いしたかという経緯は、第三者にわかりにくいところがあるので、「再就職してからもコソコソ副業を続けているのではないか」とか「会社の情報資源を流用しているのではないか」と周囲が疑心暗鬼になることがあります。
一方で、そういうことはまったく気にしないオープンな社風の会社もあります。
独立経験者が転職前にやるべきこと
冒頭で述べたように、現在は独立自体が非常に簡単になりました。法人設立のハードルが低くなったため、その評価の重要度は以前ほどではなくなっています。例えば、昔は株式会社を設立するのに資本金1,000万円が必要でしたが、その時代には資本金が一定の担保になっていました。つまり、ある程度の信用がなければ法人を設立することはできなかったのです。
その時代の会社と現在の0円企業は、同列には語れません。いまや有限会社も新設できなくなっていることはご承知のとおりです。法人を設立したことだけで高く評価される時代は過ぎ去りました。
ただし、法人格は上手に使えば個人のプライベートカンパニーとして様々な面で役立ちます。例えば、節税効果や商法の知識があれば得をすることもあります。その一方で、事情を知っている人から見ると、そうした点が疑われる要素になる可能性もあるでしょう。
ですから、独立経験の経験の後に何か思うところがあって転職を考える方は、まず独立したときの棚卸しが必要です。どのように仮説を立て、どのような目的で、どのようにトライし、どのような結果を経て、どのように現在のような結末を迎えたのか。法人がたどった経歴を客観的に説明できる準備を一般の候補者よりも重視しておくべきです。
独立経験があったなら、その始まりと終わり、そこに至る背景など「起承転結」を明確に説明できるようにしておきましょう。それができない場合は、実際に持っている経験や実績より低い評価を受けやすいので注意する必要があります。独立経験が再就職のマイナスになることはまずありませんが、あらゆる可能性を想定して、不利な評価を受けないよう心掛けておきましょう。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長
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