39歳の事務職女性「年収350万円」→「年収900万円」に…収入を激増させた意外なアイデア【経営コンサルタントが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
1日におよそ400社近くの法人が設立されている日本(東京商工リサーチ:2022年「全国新設法人動向」調査より)。起業は思っている以上に身近な存在です。中小企業の“平凡な事務員”として働く39歳の女性が年収を激増させた驚きのアイデアについて、事例をもとに詳しくみていきましょう。経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が解説します。
“忙しい現代社会”に隠されたビジネスチャンス
現代社会では「タイパ(※)」という言葉が生まれるなど、効率化や時短に対するニーズが高まっている。
※タイパ……タイムパフォーマンス(時間対効果)の略。費やした時間に対する満足度を表す。
この流れはビジネスの世界だけにとどまらず、共働き世帯が増加する昨今、家庭生活においても「効率よく家事をこなしたい」「忙しいなかでも自分の時間を確保したい」といったニーズが高まっている状況だ。
そのような背景から、近年では単に「手を動かして代行する」だけではなく、「方法(ノウハウ)を提供して他者の生活にプラスの影響を与える」ような、知識やスキルを“提供”するビジネスが注目されている。こういったビジネスは、「自分では当たり前」だと思っている習慣・工夫を商品化できるため、ある意味“誰にでもチャンスがある”といえるだろう。
そこで今回、中小企業で一般事務として働く女性が新たなビジネスを築き上げた成功例を紹介する。
ルーチンワークを淡々とこなす日々
一児の母である山本麻衣さん(仮名・39歳)は、中小企業の一般事務として働いている。経理処理や備品管理、来客対応など、日々の仕事はほぼルーチンワークで、年収は350万円ほど。
麻衣さんは「仕事は生活費を稼ぐ手段」と割り切り、仕事に対してのやりがいは特に求めていなかったが、ある日友人とカフェで話していると「いまの年齢と仕事でこれ以上収入を増やすことができるのか」という話になった。
現状に大きな不満はないが、麻衣さんはもうすぐ40歳になる。子供が大きくなり、教育費がかさむようになる一方で、いまと同じような暮らしができるのか、どこか漠然とした焦りを感じた。
“習慣”がビジネスに?…きっかけは同僚の一言
昼休み、いつものようにデスクで自分が作った弁当を広げていると、麻衣さんは同僚から声をかけられた。
同僚「すごっ……麻衣のお弁当って、いつも手が込んでいるよねぇ。私には無理だ」
麻衣さんは同僚の言葉に困惑した。というのも、麻衣さんとしては“お弁当は手を抜いて作るもの”という認識であったからだ。それを同僚に伝えたところ「麻衣って仕事も手を抜かないし家事も育児もきちんとやっているみたいだし、どうやって両立しているの?」との返答が。
麻衣さん自身、特に工夫しているつもりはなかったためうまく返すことができなかったが、その質問が妙に頭に残った。
それからというもの、同僚や友人たちとの会話で「家事が効率よくできたらもっと自分の時間が増えるのに」といった言葉が耳につくようになった麻衣さんは、自分が普段無意識にルーチンとして行っている「家事」について、客観的に振り返ってみることにした。
週末にまとめて食材を下ごしらえして冷凍保存し、平日の負担を減らしたり、歯を磨きながら洗面台を拭いて、汚れを溜めないようにしたり……意識してみるとたしかに普段から小さな工夫を積み重ね、家事を効率よくこなしている。
「もしかしたら、これって私の“スキル”なのかも……このスキルが誰かの役に立つかもしれない!」こう考えた麻衣さんは、自身の家事スキルを副業にしてみようと思い立った。
家事を副業に→依頼してくれた友人からの「厳しいひと言」
翌日、早速友人にこのアイデアを話したところ、「じゃあ、私が初めてのお客さんになるよ」と、その場で依頼してくれることに。トントン拍子で家事代行サービスをはじめた。
しかし、初めての業務を終え、友人に感想を聞いてみると、意外な反応が返ってくる。
「まあ、プロに頼むレベルとはいえないかな」
この言葉を聞いて大きなショックを受けた麻衣さんだったが、友人や知り合いづてに家事代行を続けた。しかし、自分が実際に手を動かすとなると、副業に割ける時間と顧客のニーズがかみ合わず、なかなか希望通りの時間が確保できない。さらに、副業と本業・プライベートのバランスも崩れがちで、せっかく来た依頼にうまく応えられないこともあった。
収益も安定せず、実際の業務より準備にかける時間のほうが長くなり、家族からも「副業のために自分を追い詰めてない?」と心配される始末。
麻衣さん自身も「やっぱり、自分の家事スキルに価値なんてなかったのかもしれない」と、副業の継続に限界を感じ始めていた。
代打で出席した「PTAの集まり」が転機に
そんなある日のこと。麻衣さんは地域のママ友から「どうしても仕事を休めなくて」とピンチヒッターを頼まれ、家事代行の一環としてPTAの集まりに出席することになった。
そこで、家事や育児について意見交換をする場面があり、麻衣さんが普段やっているルーチンを簡単に話してみたところ、周りのママたちから「そんなやり方があったのね、すごい! もっと詳しく教えて!」と麻衣さんに質問が飛び交い、会はおおいに盛り上がった。
この体験から、麻衣さんは「家事スキルよりも、仕事と家事を両立するための“家事効率化スキル”に価値があるかもしれない」と考え、業務内容を「家事代行」から「家事アドバイザー」に切り替えることにした。
また、麻衣さんは方向性の変更に伴い、家事を効率化するためのデジタルツールやアプリも積極的に取り入れることにした。
世の中にはすでに「買い物リスト」を作成するアプリや冷蔵庫内の食材を管理するアプリなどさまざまあるが、それを使いこなせている人はほとんどいない。家事の効率化を助けるアイテムはどんどん試し、いいと思った方法をわかりやすく伝えることで、だんだんと口コミで依頼が増えていった。
地域で評判の「家事アドバイザー」に
やがて、麻衣さんの副業は地域内で評判を呼び、個人だけでなく地元の企業からも「社員向けの家事効率化セミナー」や「時短ワークショップ」の依頼が舞い込むようになった。
そこで、これを機に麻衣さんはサービス提供を個別対応から少人数のワークショップ形式に切り替え、参加者全員に「まとめて準備」「ながら掃除」を実演。楽しく学べる場を提供した。この形式は、より多くの人に効率的にアドバイスを届けることができ、参加者からの満足度も高くなった。
そこで、麻衣さんはオンライン形式の「家事アドバイザリー講座」を開設し、自宅から参加できるカリキュラムを整備した。これは忙しい人でも動画コンテンツを購入すれば、自由な時間に効率化のノウハウを学べる仕組みで、これによって地域外からの参加者や、個別指導の受講が難しい人にもサービスを提供できるようになり、収益源がさらに拡大した。
「従業員の家事負担を軽減させたいと前々から思っていたところだったんです。あなたに出会えて本当に感謝しています」ときにはそんな嬉しい感想をもらうこともあった。複数の企業からの支持を得て、継続して依頼が来るようになった麻衣さんは、副業から本業へとビジネスを発展。
その結果、会社勤めのみでは350万円だった年収が、家事効率化のアドバイスで合計900万円に。自身の負担を減らしながらビジネスチャンスを広げることで、ワークライフバランスも改善し、家族との時間も増え、麻衣さんは日々充実感に満ちた生活を送っている。
無形資産を自覚できると、人生に“思わぬ転機”が訪れることも
麻衣さんの事例は、日常無意識に行っている「習慣」が、他者にとって価値のある「無形資産」となり得ることを示す好例だ。
彼女は、自分にとって当たり前だった家事の効率化スキルを再認識し、それをビジネスに変えることで大きな成功を手にした。また、特に「働くママたち」にターゲットを絞り、地域のママ友とのつながりという「無形資産」を活用しながらサービスの内容を工夫したことで、ビジネスの広がりを生み出した。さらには、デジタルコンテンツの販売によって、自分が休んでいてもサービスが売れる仕組みを整えた。
本事例は、誰にでも日常のなかに無形資産が眠っていることを示し、それを活かす勇気と発想が新たなチャンスを生むことを教えてくれるだろう。
鈴木 健二郎
株式会社テックコンシリエ
代表取締役
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