私には無理でした…年金18万円・昭和気質の夫、78歳で逝去。「生き直し宣言」の66歳妻、自由で気ままな老後が「わずか6ヵ月」で終焉を迎えたワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月12日 5時15分
夫がいるから、妻がいるからと、パートナーの目を気にして自制することはあるでしょう。しかし、そのパートナーを失ったら……歯止めがきかなくなった先に、どんな未来が待っているでしょうか。
余裕のある穏やかな老後はすべて「夫のおかげ」
「家事や育児は女性がするべきだ」
「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」
そのようなことを聞いたら、なんて古くさい感覚なんだろう、と思う人が多いでしょうが、性別による役割の意識は、深く刷り込まれています。
内閣府『令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究』によると、「家事や育児が女性の役割である」と男性の27.3%、女性の20.7%が回答。また「仕事で家計を支えるのは男性の役割である」と男性の48.7%、女性の44.9%が回答しています。
「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という感覚は、女性より男性のほうが、若い人よりも年配者のほうが、都会に住む人よりも地方に住む人のほうが根強く残る傾向にあります。
加藤知子さん(仮名・66歳)は、結婚して45年、12歳年上の豊さんに、「女性はこうあるべき」「妻はこうあるべき」「母はこうあるべき」といわれ続けてきたといいます。
――私の父も、「女なら」とか、「姉なら」というタイプ。時代的にも当たり前と思って生きてきました。ただ子どもたちが独立して余裕ができてきてからは、「もうそういう時代ではないんだ」と感じるように。ただ夫が「ザ・昭和」という人でしたし、専業主婦だったので、夫に頼るしかありませんでした
豊さんは60歳定年で退職。年金は豊さんが月18万円、知子さん月6万円、夫婦で月24万円、手取りだと20万円強。夫婦二人、年金だけで十分暮らしていけるほどで、知子さんがコツコツとしてきた貯金は3,000万円ほど。余裕のある穏やかな暮らしを送れているのは、すべて豊さんが40年近くも頑張って働いてくれたから……一方で、知子さんがきちんと家庭を支えてくれたから実現したことではありますが、そんな思いをこぼしたことさえありません。今でも「あなたのおかげです」の精神で、夫を支えている妻の姿がありました。
夫が亡くなりタガが外れた妻…半年で1,000万円の散財
まるで昭和にタイムスリップしたような、加藤さん夫婦。そんな暮らしは、豊さんが急性心筋梗塞で急逝したのを機にピリオドが打たれました。
遺族年金を合わせて年金は月15万円。現役時代にコツコツためた貯蓄は、節約、節約、節約の老後では1円も減らずに、3,000万円丸々残っています。
45年も連れ添った夫が亡くなり、深い悲しみの想いもあります。一方で、どこか解放感に似た感情も沸々とこみ上げてきます。
――私は自由なんだわ
――これから私、生き直すの
生まれて68年間、ずっと抑圧され続けてきたものから解放された知子さん。子どもたちにも「生き直し宣言」。死ぬまでにやりたいことをとことんやるといい、本当のセカンドステージが始まりました。
ただ知子さんの悠々自適な老後は、6ヵ月ほどでひとまず終焉を迎えます。
――散財する自分が、ふと、怖くなったんです。「私このままだと破産する」と
その原因は、いわゆる推し。実は知子さん、1年ほど前からひそかにはまっていたのが、世界をまたにかけて活躍するアイドルグループ。
――初めてテレビでみたとき、本当に心がトキめいて。でも夫に知られたら「年甲斐もなくみっともない」といわれるので、こっそり動画をみるくらいだったんですけど……
豊さんが亡くなったあと、推しサークルで知り合った同年代のファンと推し活の毎日。ライブやファンミーティングに参戦するために世界を巡り、都度、グッズを大量に購入。すべてを網羅しようとすると、お金はいくらあっても足りません。久々に貯金通帳をみたときに、血の気が引いたといいます。
――貯金通帳は3冊あって、1冊は夫が亡くなってからつくった通帳。これからの老後を楽しく生きるためのお金と決めて、1,000万円を入れておいたんです。
その通帳にあった1,000万円は、わずか半年で残高ゼロに。あまりの散財っぷりに、自分自身で驚いたといいます。この調子では、あと1年で貯金が尽きてしまう……老後破産、あまりに遠い世界の話かと思いましたが、すぐそこに迫ってきていたのです。
――お金を使うセンスがないんです。自由に気ままに生きるなんて、私には無理でした。
そういって、推し活から卒業。途端、やることがなくなった知子さん。再び、節約の毎日を送っているといいます。
[参考資料]
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