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東京在住・独身45歳一人娘、東北の母へ仕送り「総額1,500万円」…母の死後、まさかの税務調査で追徴課税に。原因は「思い出の詰まった通帳」【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月17日 10時45分

東京在住・独身45歳一人娘、東北の母へ仕送り「総額1,500万円」…母の死後、まさかの税務調査で追徴課税に。原因は「思い出の詰まった通帳」【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

相続時にしばしば問題になる「名義預金」。税務調査の恰好の的となっています。ここでは、長年子供から仕送りを受けていた親が、お金を子供名義の口座に貯金していた事例とともに、税務調査で狙われやすい名義預金について木戸真智子税理士が解説します。※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

母の死で判明した「仕送り貯金」

45歳になるAさんは、東京でデザイナーの会社を経営しています。Aさんの実家は東北地方で、大学進学を機に東京に住み始めてからは、年に1~2回、長期休みのタイミングで帰省する程度です。Aさんには76歳の母親がいます。父親が12年前に亡くなってからは、母親は一人で暮らしてきました。

Aさんは高齢になる母親が心配になり、東京に呼び寄せて2人で暮らそうと何度か誘いましたが、母親は、自分の生家も近く、親戚や友人もいるいまの家のほうがよいというのです。一緒に暮らすことは難しい状況でした。経営する会社の売上は好調だったこともあり、父親が亡くなってからは、Aさんは一人になる母親を案じて、仕送りをしてきました。月々6万円~10万円ちょっとのあいだで、そのときの状況に応じて送金を続けていました。

そんなある日、母親が亡くなり、相続が発生しました。Aさんは悲しみに暮れながらも、相続や名義変更の手続きをはじめていくことに。すると、父親が亡くなったときの財産はほとんど減っておらず、Aさんからの仕送りにいたっては、Aさん名義で貯金をしていたことがわかったのです。

Aさんは、帰省するたびに見る母親の様子から、日ごろ慎ましく暮らしていることがわかっていました。20年近く履き続けているジーンズや内ポケットに穴の開いたカバン、特売の日にまとめ買いした食料品から、「こんなに節約して……。昔はおしゃれがすきだったのに」「ネットも使えないのに、車で買い物に行くとしてもまとめ買いしてたら重いだろうに」と、たまには贅沢してほしいと願うようになりました。

できる限りの送金をして、母親に使ってほしいと思っていたのですが、まったく手をつけられておらず、生活費を切り詰めて過ごしていた状況に、Aさんは涙を流さずにはいられませんでした。おそらく、Aさんの将来のことを考えて、お金を少しでも残そうとしていたのでしょう。

そうなると、相続人はひとりっ子であるAさん一人であるため、母親が大事に残してきた財産については、相続税がかかる対象です。相続税の申告の手続きを始めたAさん。近所の人などに助けてもらいながら、なんとか進めていきました。そこで気になったのは、母親に渡したつもりだったAさんの仕送りについてです。

長年の仕送り総額「1,500万円」が手つかず

仕送りしてきたお金は、結果、Aさん名義の通帳に貯金をされていました。Aさん名義の通帳は、Aさんが子供のときに両親が作った通帳のひとつです。お年玉などはいつも母親がその通帳に貯金をしてくれて、毎年大事に残してくれていました。ときどき、どうしても欲しいものがあったら、母親にお願いして、お年玉から買ってもらったこともありました。とても思い出深い通帳です。

そんなAさんの通帳の残高は、12年分の仕送りが毎月貯金されていて、1,500万円にもなっていました。Aさんは特に迷いもなく、そもそもこのお金は自分のお金だし、結果的に自分の名義の通帳にあるから、相続には関係ないだろうと考えます。

そうこうして申告を終えた2年後、Aさんのもとに、なんと税務調査がやってきました。

なぜ自分名義の通帳が母親の財産に?

税務調査官はこのAさん名義の通帳について、「これは名義預金です」と指摘しました。これらを修正するとなると、追徴課税は約225万円になります。

Aさんは驚きました。そもそもAさんは自分名義の通帳が母親の財産とみなされるということは予想だにしていません。ましてやその中身はもともと自分のお金です。「そんなことがあるのか」と調査官に質問をしました。

「名義預金」とは?

ここで、名義預金について解説をします。名義預金とは本人が存在を知らない、もしくは管理をしていない預金のことを言います。名義だけは子供でも親が管理していたら、それは親の預金とみなされることになります。名義預金とみなされた通帳については、たとえ名義が子供であっても、親に相続が発生したら親の相続財産とみなされます。

名義預金とみなされるケースは、いくつかポイントがあります。

1.本人が口座の存在を知らない。

2.本人が管理していない。

3.口座の届出印が本人ではなく、親の印鑑になっている。

4.口座開設をした金融機関が本人の住所ではなく、親の住所の近くの支店になっている。

5.預金が預けられたままで口座の引き落としがまったくない。

などが挙げられます。これらにあてはまるような通帳であれば、名義預金となります。

相続税の指摘を受けないために

今回の場合は、もともとのお金がAさんから送金されたお金であっても、実際、そのお金はAさんが管理下を離れており、母親が自由に管理できる状況にあったため、指摘を受けました。

もっともこのような状況であれば、必ず名義預金として追徴課税を受けるということではありません。ただ、さまざまな条件が重なって、今回のように追徴課税を受ける可能性は十分あります。

相続税の税務調査はほかの税金と比べて調査になる確率が高く、多くの案件で財産漏れが指摘されています。調査で指摘される財産漏れの多くは、名義預金です。家族を想ってのことが、思わぬ結末になることがないようにしたいものです。現実は感情面など、事情が1人ひとり異なるため、難しいものがありますが、相続において理想的な家族は、離れていてもお互いの状況を報告しあえる関係ではないかと思います。

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー

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