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日銀利上げ、「アパートローン」への影響は?…「金利上昇局面のリスク」を回避する方法【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月8日 7時45分

日銀利上げ、「アパートローン」への影響は?…「金利上昇局面のリスク」を回避する方法【FPが解説】

(※画像はイメージです/PIXTA)

2024年3月、日銀の異次元緩和が終了し17年ぶりに利上げが実施されました。そして7月の追加利上げ。そうなると、多くの不動産投資家が気になるのがアパートローンへの影響です。今後の不動産投資にはどのような影響がおよぶのでしょうか? また、もし今後も金利が上昇し続けた場合、リスクを回避するにはどのような策があるのでしょうか? 長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

今後、金利が上昇し続けたら…不動産投資家の不安

日銀は、2024年7月に開かれた金融政策決定会合において、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加利上げを決定しました。無担保コール翌日物の誘導目標を0.15%上げ、0.25%にするという内容です。これによって影響を受けるのは、変動金利型の住宅ローン。

政策金利の利上げによって各金融機関の短期プライムレートが引き上げられ、住宅ローンの適用金利も上昇していくのが通常です。すでに変動金利を引き上げた金融機関もあります。さらに利上げが繰り返されれば、毎月の返済額が増えることで返済に行き詰まり、デフォルトに陥る家庭も増えるかもしれません。

日銀の利上げによって影響を受けるのは、住宅ローンだけではありません。不動産投資家が利用する「アパートローン」の変動金利にも影響がおよびます。今後のアパート経営を不安に感じている不動産投資家は多いでしょう。もし今後、金利が上昇し続けたら、アパート経営にはどのようなリスクが待ち受けているでしょうか。

近年の不動産投資を支えてきた低金利政策

不動産投資で安定して利益を上げるための条件に、「イールドギャップ」と「レバレッジ」があります。イールドギャップとは、投資利回りとローン金利との差のことです。たとえば年間の家賃収入が800万円、物件価格が1億円だったとします。この場合、年間の投資利回りは8%です。この物件を金融機期間から融資を受けて購入、その金利が2%だった場合、投資利回り8%との差は6%という計算になります。

この6%がイールドギャップです。購入した物件価格が大きくなるほど(あるいは増えるほど)、6%に相当する利益の額も大きくなります。ところが自己資金には限りがあるため、高額な物件を購入することができません。そのため、金融機関からの融資を受けて、自己資金よりも大きな金額を投資することになります。

この「融資を受けて自己資金よりも大きな金額を投資すること」がレバレッジです。融資を受けてレバレッジを効かせ、イールドギャップによって利益を得る。これが不動産投資の基本的な考え方です。

近年、日本では低金利政策を継続してきたため、このイールドギャップを確保しやすい状況が生まれていました。このことが不動産投資ブームの一因となったのはご存じの方も多いでしょう。しかし、金利が上昇してしまうとイールドギャップが小さくなってしまいます。実際にはイールドギャップのなかから元本の返済や建物修繕費、税金、保険などの経費がかかるため、手残りはさらに小さくなります。

特に自己資金を小さく設定し、フルローンで融資を受けた場合などは、金利の上昇によってキャッシュフローが破綻してしまうかもしれません。

金利上昇でアパートオーナーが受けるリスク

金利上昇によってアパートオーナーが受けるリスクは、大きくわけて2つです。

・返済額が増えることによってキャッシュフローが破綻する

・不動産価格が下落して売却できなくなる

金利上昇によって返済額が増えると、運用利回りが低くなり、当然ながら手残りが減ってしまいます。

既存の入居者の家賃を上げることはほぼ不可能なので、家賃収入額は増えません。フルローンで物件購入をした場合は、わずかな金利上昇でもキャッシュフローが破綻してしまうリスクがあるのです。コロナ禍の数年前から建築コストが高騰しています。光熱費や食品などの物価も急激に高くなっていて、毎月の生活が窮屈になったと感じている人も多くなっています。その状況で、建築コストの上昇を家賃に反映させることは困難です。競合が多い地域では特にそうでしょう。

金利も建築コストも修繕費も高くなるなかで、家賃収入が据え置きされたままでは赤字に陥る可能性が高くなります。そのため、収益性が悪化した物件を売却することが選択肢に入るのですが、ここでも金利上昇が悪い方向に影響してきます。

一般的に、金利上昇の局面では不動産価格が下落するとされています。もし不動産価格が下落したら、不動産投資において重要な売却という「出口戦略」に悪影響をおよぼします。投資期間はキャッシュフローがマイナス、売却も不調……IRR(内部収益率)が最終的にマイナスで終わるというのは、不動産投資家として悪夢そのものです。

リスク回避のためにできること

今後、変動金利が上昇し続けることを前提としたら、不動産投資家はどのような対策をすべきでしょうか。

特にこれから物件を購入しようとする人の場合、次のようなことが考えられます。

・高い家賃を設定できる立地戦略とマーケティング

・自己資金を多く用意する

・返済期間を短く設定する

立地戦略については今後さらに重要になっていきます。住宅ローン金利と建築コストの上昇によって、マンションをはじめとした住宅価格が高騰しているのはご存じのことと思います。コロナ禍前まではマイホームを購入できていたはずの所得層が、購入を諦めるケースが激増しているのです。今後、団塊の世代が相続のときを迎えたら、中古住宅の売却が増え、価格が下落し購入しやすくなる環境となると考えられますが、それまでは賃貸に住み続けることになるでしょう。

これは一見、アパートオーナーにとってプラスの要素と思われがちですが、実はリスクともいえます。入居者が住み続けるということはオーナーにとって家賃を上げるタイミングがないということに繋がるのです。金利上昇時に家賃を上げていくことができなければ、キャッシュフローに打撃があります。

物件を購入するときに、家賃を高く設定できる立地と建物を十分に検討する必要があります。実際にいい土地を購入することは、個人投資家にとって課題の一つでもありますが、妥協は禁物です。売却時の出口戦略にも影響するため、立地戦略はこれまで以上に重要になります。

また、自己資金を多くすることによって、金利上昇の影響を小さくすることが可能になります。自己資金が多いとROI(投資利益率)は低下し、自己資金の回収までに時間がかかることにもなりますが、それは低金利の環境が続いていることが前提の理屈です。金利上昇の局面では、自己資金の少なさはキャッシュフロー破綻のリスクを大きくしてしまいます。

返済期間については長くすることで返済額が減り、金利上昇のリスクを減らすことに繋がるように思えますが、返済期間が短いほうが利息の総額が少なくなるのはいうまでもありません。

短い期間で完済することによって、売却時にも有利に働き、長期で保有することも可能になります。自己資金を多くし、返済期間を短くする手法は、レバレッジを大きくかけて投資規模を拡大するスタイルの投資家には不利かもしれません。しかし、金利上昇局面において堅実な不動産投資を目指す方には向いているといえます。

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

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