〈補償・保護対象外〉に要注意!…金融機関の“破綻”で財産を失わないための対処法【CFPが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月16日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
もし預金している銀行が破綻したら……預金者は保護され、財産は守られるのでしょうか? 証券会社や銀行など、金融機関ごとの対応についてみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの中山国秀氏が解説します。
金融機関が破綻した場合、財産はどうなる?
ご存じの人も多いように、2024年から新しいNISA制度が始まりました。国を挙げて国民に投資を呼びかける時代の到来を感じます。
現在、預貯金だけでなく、資産運用・資産形成が一般的になりつつあります。民間の証券会社・銀行・保険会社など、さまざまな金融機関に大切な資産を預ける一方、「万が一、お金を預けている金融機関が破綻したらどうなるのか」という不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
現状、日本国内の多くの金融商品においてはセーフティネットが設定されているので、たとえ金融機関が破綻しても預けている資産は守られる仕組みになっています(ただ、一部の例外があるため注意が必要です)。
金融商品のセーフティーネットとは
セーフティネットとは、英語のSafty-netをカタカナであらわしたもので、万が一落下しても受け止められるように安全のために設置された網を指す言葉が語源です。金融商品のセーフティネットとは、金融商品を扱う金融機関の経営が破綻した場合に、投資商品・預金・保険などの顧客の財産を守るために作られた仕組みを指しています。
証券会社や銀行、保険会社などは、それぞれの業界によって作られた制度は異なりますが、万が一のことがあっても財産が守られるようになっています。
大事な点として、“安全のための網の間から落ちてしまうことがある”ように金融商品のセーフティネットの対象とならない場合もあるため、注意が必要です。
証券会社の場合
株式や債券を扱う証券会社においては分別管理が原則とされており、投資者の利益が守られます。分別管理とは、証券会社の資産と投資者の投資資金や有価証券を別々に管理しておくことをいいます。分別管理をすること自体が、証券会社に義務付けられています。したがって、証券会社の経営が悪化し資金が足りなくなったとしても、投資者の資産に影響はないのです。
分別管理対象となるのは、投資者の株式や債券はもちろん、売買代金などの現金も含まれます。投資者の資産として、すべて安全に管理されていると考えてよいでしょう。
証券会社の破綻後も、投資者は自分の資産の返還を受けることが可能となります。証券会社が破綻した場合、分別管理が行われていなかったなどによって、投資者の資産に不利益が生じるおそれも想定できます。その場合は、投資者保護基金が損失を補償してくれます。すなわち、分別管理と投資者保護基金による“二重のセーフティネット”が用意されているということになります。
投資者保護基金では、顧客1名につき1,000万円まで補償されます。日本国内で営業する証券会社では、原則投資者保護基金への加入が義務づけられています。
また、現状銀行でも投資信託などの金融商品を扱うことは多くあります。ただし銀行では分別管理は義務付けられているものの、投資者保護基金の補償対象にはならない点は要注意です。
補償対象外となるものは?
投資者保護基金の補償対象となるものは、顧客1名につき1,000万円まで補償となるため、1,000万円を超えた分は対象外となります。
他、外国為替証拠金取引(FX取引)などのデリバティブ取引・外国市場デリバティブ取引に関わるものは補償対象外となります。
株や債券の発行会社が倒産した場合
証券会社でなく、株や債券を発行している会社が倒産した場合、それらの株や債券を保有していた投資者は大きな損害を受けることとなります。一般的に、株などの発行会社が倒産した場合、市場での売却ができなくなります。利息の支払い・元本の償還が行われなくなるため、価値はほぼ無くなってしまいます。このような損失はどこからも補償されません。
株や債券を保有している場合、常に発行会社の動向を確認する、倒産する前に売却するなどといった適切な判断が必要となります。
証券保管振替機構「ほふり」の場合
「ほふり」と呼ばれる証券保管振替機構は、証券会社から投資家の株などを預かって集中保管し、名義書換や受け渡しから発行会社への通知などを実施します。
「ほふり」は非常に重要な役割を果たしています。金融庁などからの監督を受け、問題が見つかれば、すぐに是正される仕組みとなっているのです。万が一「ほふり」が破綻したとしても、株などの権利はすべて投資家にあるため、投資家が損害を受けることはないのです。
銀行が破綻した場合
預金として、お金を預けている銀行が破綻した場合でも、セーフティーネットが用意されています。保護の範囲として、利用されることが一般的に多い普通預金・定期預金・当座預金・定期積立などに関しては、1金融機関につき、1名あたり元本1,000万円までとその利息が保護される決まりです。
〈例〉破綻したX銀行に、1人で複数の支店などに口座を所有していた場合
・その元本の合計が1,000万円超の場合→保護されるのは元金の合計1,000万円とその利息のみに限定
ただし、
・家族それぞれの名義で別の口座を所有している場合→各個人ごとに1,000万円までの元本と利息分が保護される
・一度預金が保護された後、別のY銀行が破綻した場合→Y銀行に預けている元本1,000万円までと利息も保護される
現金が1,000万円より多くある場合は、各銀行の預金額を1,000万円以下に分散しておけば、確実に預金を保護できるといえます。
銀行が破綻した場合、保護の対象となるものは国内にある預金に限られます。したがって、海外支店の預金は保護の対象外となるため、返ってくる保証がありません。また、外貨預金や譲渡性預金~保護預かり専用以外の金融債、元本補填契約のない金銭信託も保護の対象外となります。
ペイオフとは?
ペイオフとは預金者保護のために行われるもので、破綻した金融機関に代わり、預金保険機構が預金を払戻す制度のことをいいます。
1971年に制度が創設後、2010年の日本振興銀行の経営破綻によって、初めてペイオフが発動されました。
ゆうちょ・農協・漁協などの場合
民間の銀行と同様、ゆうちょや農協、漁協などの貯金も元金1,000万円とその利息は保護されるルールです。
ゆうちょでは他の銀行と同様、預金保険制度に加入しており、農協や漁協では農水産業協同組合貯金保険という類似制度に加入しています。
●銀行や信用金庫・信用組合などに預けるお金は預金●ゆうちょ銀行や農協・漁協に預けるお金は貯金
といいますが、内容に差異はありません。
中山 国秀
生活設計本舗 秀ちゃん
ファイナンシャルプランナー
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