横行する投資詐欺“ポンジスキーム”を避けるためにも…「数字力」がビジネスパーソンにとって欠かせないワケ【公認会計士の助言】<br /><br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
業界・業種を問わずビジネスの世界は「数字」で成り立っており、ビジネスパーソンとして成功するためには、数字や数学に強くなることが欠かせない……。そう話すのは、公認会計士である金川顕教氏です。本稿では金川氏による著書『公認会計士が教える「資産づくり」を勝ち抜くための11の戦略』(ポプラ社)から一部抜粋し、「数字力」を身につける必要がある理由について解説します。
数字はビジネス界の世界共通言語
大学受験などでは、よく「文系」「理系」という言葉が聞かれますが、この本を読んでいる方は、圧倒的に文系の人が多いのではないでしょうか。なぜなら文系の大学、学部を卒業した人たちの進路としてビジネスパーソン、理系の大学、学部を卒業した人たちの進路としてエンジニアが一般的だからです。
高校時代の進路で、文系・理系に分かれる時、数学や物理が苦手だから、歴史などの暗記物が得意だから、という理由で文系の経済学部や商学部、法学部などに進学し、そこを卒業したというビジネスパーソンは、とても多いです。
そのため、ビジネスパーソンは数学が苦手という人が多いのですが、ビジネスパーソンこそ、数字や数学に強くなることが大切です。
ビジネスの世界は数字で成り立っています。数字は世界共通です。業界・業種の違いを超えて、あらゆるビジネスで使われている共通言語です。数字が苦手という時点で、ビジネスの世界で勝つことはできません。
文系ビジネスパーソンは、MBAの資格を持っていたり、高い英語力よりも数字が読めるほうが、圧倒的に仕事に役立ちます。
数字を知ることで、客観的判断ができる
例えば、昔からある詐欺の手法で、ポンジスキームというものがあります。
これは、1910年代から1920年代にアメリカで活動したビジネスパーソンであり詐欺師でもあったチャールズ・ポンジという人が編み出した詐欺手法で、驚くべきことに、日本では、いまだにこの詐欺が横行しています。ビジネスパーソンはもちろん、芸能人や有名人でも、かなりの人がだまされています。
詐欺師からは、まず、高配当の投資案件を持ちかけられます。例えば、100万円を最初に一括で出資をすると、3年後に元金が戻ってくるまで、毎月10%の配当金がもらえると説明されます。つまり、1カ月10万円ですから、1年で120万円の配当金がもらえるというわけです。
3年間で360万円の配当金と、出資金の100万円が戻ってくるので、100万円が460万円になるという計算です。ポンジスキームは、大体200万円からということが多く、200万円を一括で預けると、毎月配当金が20万円もらえます。
そして、この詐欺の巧妙なところは、最初の数カ月は、きちんと配当金が支払われるというところです。1カ月目で20万円の配当金が支払われ、2カ月目も20万円が支払われます。そうすると、だまされる人はすっかりこの詐欺師を信用してしまい、さらに300万円、500万円と出資金を出してしまいます。
しかし、その300万円、500万円の配当金を1〜2回払ったところで、相手は消えてしまいます。つまり連絡が取れなくなって、初めて詐欺だと気が付くのです。
しかし、世界最高の投資家のウォーレン・バフェットでも年22%の利益しか得られないと言われています。つまり、それ以上においしい話というのは、基本的にウソなのです。
ほぼすべての人が「1本5000円の大根」を買わないワケ
例えば、みなさんが大根を買う時に1本5000円と言われたら、絶対に買わないと思います。なぜ買わないかといえば、相場を知っているからです。ではみなさんは、投資の相場を知っていますか? 年収の相場、貯金の相場、世界の税金の相場など、すべてにおいて数字があります。
それだけではありません。投資の世界には、単利と複利があります。アインシュタインが人類最大の発明と言ったのが複利ですが、単利と複利が、実際の金額でどれくらいの違いになるかを知っていますか? 100万円を年5%で30年間運用した場合、単利の場合は250万円になります。しかし、複利の場合は約432万円になります。
単利の場合は100万円に5%を掛け、5万円が毎年積み重なるので、5万×30年で150万円ですが、複利は、1年で105万円、2年後は、105万円に5%がつくので110万2500円になります。そうやって、毎年1.05を掛けるので、利息も回せるわけです。
こういった数字の仕組みを知らないと、ビジネスの場でも損をしてしまうことになりかねません。
確率を使い、必要なものと不必要なものを分ける
例えば、ちょっとビジネスの話からはそれますが、保険に加入する時も、この数字力があれば迷うことはありません。僕が数字を用いて分析したところ、人生に必要な保険は3つしかありません。
保険の加入を考える時に必要な考えは、「確率」と「損失」です。この2つを縦軸と横軸にしてマトリックスで考えるべきです。発生する「確率」が低いのか高いのか。発生した時の「損失」が小さいのか大きいのか。この2つを軸にして考えるべきなのです。
このマトリックスの中で、どういった保険に入るべきなのか。当然、確率が低くて損失が小さいものに関して言えば、発生もしないし、仮に発生したとしてもダメージは小さいので、貯金でまかなうことができます。
また、確率が高くても損失が小さいものも、入る必要はありません。まさに医療保険も、病気やけがをする確率は高くても、医療負担は小さいので、これも入る意味はありません。
そして、確率が高くて損失が大きいというものは、そもそも、この世にはありません。例えば、ジェットコースターに乗った人のうち、10人に1人が亡くなるとしたら、誰も乗らないと思いますし、保険会社も儲かりませんから、保険商品としても成り立ちません。
数学的・確率的な観点から加入すべき保険の「共通点」
そこで、加入すればいいものは、「確率が低くて、損失が大きいもの」となります。それは、「生命保険」と「火災保険」と「自動車保険」の3つです。
例えば、40歳男性の死亡確率は令和4年の厚生労働省の簡易生命表によれば、約0.1%です。40歳の男性の1000人に1人が亡くなったということです。
結婚して妻や子どもがいる方にとって、平均寿命まで生きた場合に比べて、損失額は数千万円から数億円にのぼります。独身の方はいいかもしれませんが、自分が亡くなったら生活に困る家族がいる場合は、生命保険に入っておくのがおすすめです。
火災保険に関しては、総務省消防庁の消防統計令和元年に、1年間での住宅火災発生率が0.035%とあります。大体3000人に1人ぐらいなので、発生率としては低めです。しかし、損失額は数千万円から数億円です。住宅価格だけでなく、周囲への影響や賠償価格次第ですが、リスクはかなり高いと言えるでしょう。
さらに確率として住宅火災よりも低くなるのは、自動車事故で人を死なせてしまう確率です。警察庁の交通局が出している令和元年の交通事故の発生状況によれば、0.0039%です。3万人に1人ぐらいですから、ほぼゼロに等しい数字です。
しかし、事の重大さでいえば、火災保険の比ではありません。車を運転する人は、自賠責保険だけでなく、任意保険にも加入すべきだと思います。
それ以外の保険に関しては、いろいろなものがありますし、いろいろな考えがありますが、お金を貯めるという観点で見れば、絶対に入らなくてはいけないわけではないと思います。
医療保険、養老保険、貯蓄型生命保険、個人年金保険、学資保険、ペット保険、地震保険、外貨建ての保険など、いろいろな商品がありますが、僕は基本的には必要ないと思っています。
ただし、貯金をしても使ってしまうタイプの人などは、積立型の保険に加入してもよいと思いますが、むやみやたらに保険に加入するのではなく、一度、数学的、確率的な観点から見直しをするとよいでしょう。
金川 顕教
公認会計士
※本記事は『公認会計士が教える「資産づくり」を勝ち抜くための11の戦略』(ポプラ社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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