物価上昇の深刻度は欧米のほうが上?円安を憂う日本だが「悲観しすぎる必要はない」納得の理由【元外資系金融エリートが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月31日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「円安」や「物価高騰」などによって、日本経済の今後を憂う声を耳にした人もいるでしょう。しかし、そこまで悲観的になる必要はないと話すのは、金融業界出身の肉乃小路ニクヨ氏です。そこで本稿では、肉乃小路氏による著書『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』(KADOKAWA)から一部抜粋し、円安をネガティブに捉えすぎなくていい理由について解説します。
実は新NISAも円安に追い打ちをかけている要因
あまり他の金融系の本では語られていない気がしますが、円安にさらに追い打ちをかけているのが、実は2024年から始まった新NISAです。
今現在大人気の投資信託に全世界株式に分散投資するもの(通称「オルカン」)や、「S&P500」という米国の代表的な株式指標に連動するように分散投資するものがあり、多くの人が利用しています。こういった海外に投資をする株や投資信託を買うと、円を売って外貨を買うという流れになるのです。
日本経済新聞社の記事によると、2024年1〜5月の国内の投資信託運用会社などによる海外投資は、5.6兆円超の買い越しとなっています。年間で言うと13兆円くらいのペースになっていて、これも円安の大きな要因となっています。
でも円安の効果でインバウンド(訪日外国人)の人数がかなり増えて、彼らが日本で消費する時には円で買って消費するから、相殺されているんじゃないの? という意見もありますが、国土交通省の発表した訪日外国人消費動向調査によると、2024年1~3月期が1兆7,505億円。より観光に適した4~6月期が2兆1,370億円です。
今後の伸びを含めても2024年は年間約8兆円といったところでしょうか。大きく伸びてはいますが、年間13兆円もの海外投資額や、そのほかの様々な円安要因に比べると小さな金額といえます。
日本よりも欧米の方が物価高騰は激しい…円安を悲観しすぎない
コロナ禍が明けて、ロシアのウクライナ侵攻が始まった2022年に、日本でもインフレ(物価上昇)が始まったと言われていますが、欧米などと比べると割と抑えられてきました。このことは円高要因だと私は考えます。
普通に考えるとインフレが起こるとその国の通貨の価値は下がります。たとえば1米ドルで買えたリンゴが2米ドルになるということは、1米ドルの価値は下がっているということですよね。
だって1米ドルでリンゴ1個買えていたのに、それが買えなくなったというのは1米ドルの価値が下がったからです。だから他の円安条件を考慮しなければ、インフレがキツい国の通貨の方が通貨の価値が低くなるはずなんです。
IMF(国際通貨基金)のデータによると、ウクライナ侵攻が起こった2022年、アメリカでは年率7.99%の物価上昇、ドイツでは年率8.67%の物価上昇がありました。それに対して日本の2022年の物価上昇は、2.50%でした。
そういった意味では欧米諸国に比べインフレ率(物価上昇率)が抑制されていた日本円は、価値が守られているはずです。インフレに伴い欧米の金利が急激に上がったから円安になった、ということも言われていますが、この実際のインフレ率の差異についてもあまり語られていないので、ここに書いておきます。
円安要因と円高要因の綱引きで為替は変動します。為替は変動しますが、どちらにしても、日本の現状を悲観的に捉えすぎる必要はないのです。
肉乃小路ニクヨ
経済愛好家
※本記事は肉乃小路ニクヨ氏による著書『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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