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ついに毎月4.5万円の赤字に転落へ…養育費・月9万円を払ってきた年収800万円の56歳バツイチ会社員、今度は32歳年下彼女との〈授かり婚〉でにっちもさっちもいかなくなったワケ【行政書士が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月17日 11時15分

ついに毎月4.5万円の赤字に転落へ…養育費・月9万円を払ってきた年収800万円の56歳バツイチ会社員、今度は32歳年下彼女との〈授かり婚〉でにっちもさっちもいかなくなったワケ【行政書士が助言】

※写真はイメージです/PIXTA

厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の再婚(夫婦どちらか、もしくは両方が再婚)は婚姻全体の25.1%と、1992年時の再婚割合(17.5%)と比較しても、「30年で4割」近く増えています。しかし、再婚して家庭が二つになっても、誰しも財布は一つしかありません。何もしなければ二つの家庭を維持するのが厳しくなります。今回の相談者・北島悠介さん(仮名・56歳)も前妻への養育費の支払が厳しくなった一人です。本記事では、行政書士の露木氏が北島さんの事例を通して、近年問題となっている再婚の金銭事情について解説します。

再婚が30年で4割増加している

最近、二つの家庭を持つ男性が増えています。まず一つ目は離婚した家庭。前妻との間の子どもに対して毎月、養育費をせっせと払っています。次に二つ目は再婚した家庭。現妻との間の子どもを育てています。

芸能人をイメージすると分かりやすいでしょう。例えば、故・千葉真一さんと前妻・野際陽子の子どもは真瀬樹里さん。現妻(一般人)の子どもは新田真剣佑さん、眞栄田郷敦さんです。また石田純一さんと前々妻の子どもはいしだ壱成さん、前妻・松原千明さんとの子どもはすみれさん、そして現妻(東尾理子さん)の子どももいます。この傾向は芸能人だけの話ではなく、一般人も同じです。

厚生労働省の人口動態統計によると2022年の再婚(夫婦どちらか、もしくは両方が再婚。127,126組)は婚姻全体(504,930組)の25.1%。1992年の再婚は132,689組、婚姻全体は754,441組で再婚の割合は17.5%でした。全体に占める割合は30年で4割近く増えています。

しかし、男性にとって家庭は二つでも、財布は一つです。十二分のギャラを得ている芸能人はともかく、そこそこの給料しか得ていない一般人は「何もしなければ」二つの家庭を維持するのが難しくなります。今回の相談者・北島悠介さん(56歳)も前妻への養育費の支払が厳しくなった一人です。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚の経緯や養育費、再婚のきっかけなどは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

56歳会社員・悠介さんのケース

<登場人物(年齢は相談時点。名前は仮)>

夫:北島悠介(56歳。会社員。年収800万円)☆今回の相談者

現妻:北島美愛(24歳。専業主婦)

現妻の子:北島美紅(0歳)

前妻:寺田綾香(52歳。職業不明、年収不明)

前妻の子:寺田利人(16歳)

「お恥ずかしい話ですが」と前置きした上で「この歳で子どもを授かりまして……養育費の払いが苦しくて何とかしたいのです」と苦しい胸のうちを打ち明けます。

悠介さんは9年前に離婚。前妻が長男を引き取り、悠介さんは毎月9万円の養育費を長男が成人するまで支払うことを約束しました。

このように前配偶者に対して支払う養育費、慰謝料、解決金などのことを「離婚債務」といいます。今まで一度も欠かさず、長男の口座へ振り込んできたのは悠介さんの年収が800万円で、余裕こそないけれど、生活に事欠かなかったからです。

しかし、当時交際していた彼女(24歳)の妊娠で状況が一変。彼女にとって悠介さんは同じ部署の直属の上司でした。悠介さんは責任をとる形で彼女と再婚したのです。前述の統計によると夫が再婚、妻が初婚のというカップルは、結婚全体(50.4万組)の9%(4.6万組)です。

彼女はそれをきっかけに退職。悠介さんは赤子のオムツ、ミルクの出費が上乗せされ、さらに専業主婦になった現妻を養わなければならなくなりました。悠介さんの手取りは毎月42万円。糖尿病を患っている悠介さんは毎月2万円の医療費がかかっており、ついに家計の収支が4.5万円の赤字に陥ってしまったのです。

悠介さんが筆者の事務所へ相談しに来たのはにっちもさっちもいかなくなったタイミングでした。

<毎月の家計収支>

家賃 110,000円

水道光熱費 30,000円 食費 60,000円 自動車ローン 30,000円 自動車保険 6,000円 ガソリン代 14,000円

妻の大学奨学金返済 15,000円 医療費 20,000円

携帯代 22,000円 医療保険 16,000円 日用品 10,000円 雑費 30,000円

オムツ、ミルク 12,000円

養育費 90,000円

約465,000円

悠介さんが前妻と離婚できたのは別居3年目のことでした。悠介さんがいくら「別れてくれ」と頼んでも、前妻は無視を決め込み、離婚調停を申し立て、裁判所内でようやく決着したという経緯があります。

前述の統計によると2023年の離婚件数は183,814人。一方、結婚件数は474,741人なので3組に1組は離婚する計算です。そのため、夫婦が離婚すること自体は珍しくはないのですが、悠介さんは離婚後、前妻とほとんど連絡をとっていませんでした。

前妻からのLINEの返事

筆者は「このまま赤字を垂れ流すわけにはいきませんよ」と背中を押しました。悠介さんは背に腹は変えられないという感じで妻へLINEを送ったのです。

「早いもので離婚からあっという間に9年ですね。僕は去年に再婚し、今年に子どもが産まれました。今の手取りは40万。毎月4.5万円の赤字です。9万円の養育費を払うのは厳しいので減らしてください。お願いします」と。どうせ無視されるんだろう悠介さんは最初から半ば、あきらめていたのですが、LINEの送信から20日が経過。前妻からの返事が届いたのです。

「養育費を月9万払うって言うから離婚してあげたのに、途中で減らされるなんて詐欺じゃないの!」と。しかし、法律上、養育費は最初から最後まで同じではなく、家族構成や経済状況の変化など事情変更によって見直すことが認められています。(民法880条)

筆者は「再婚すること、子どもが産まれることを離婚するとき、予見できなかったら大丈夫ですよ」と後押ししました。そこで悠介さんは「気持ちは分かるけれど、何と言おうと減額の対象になるんじゃないかな」と返したのですが、前妻はそれでも納得がいかなかったようで……。

「子作りをしていいのは養育費をちゃんと払える場合じゃないの。子どもが産まれたら、養育費を払えないなんて、ちょっと無計画すぎるんじゃないの!」と強く反発したのです。

悠介さんとしては痛いところを突かれた格好です。実際のところ、まさか56歳で妊娠するとは思わず、避妊しなかったのは事実です。もし、前妻の事情(再婚、相続など)で養育費を下げたいと言えば、前妻はもう少し、聞く耳を持ってくれたかもしれません。

しかし、今回は前夫だけの事情。悠介さんの都合に前妻が振り回されているのは間違いありません。「ちゃんと養育費を払えないなら再婚しなければ良かった、子どもを作らなければ良かった」と批判されるのは当然といえば当然です。

前妻からの正論すぎる正論に対して、悠介さんはどのように答えたのでしょうか? 筆者は前もって「借金をしたら終わりですよ」と説明しておきました。そのことを踏まえ、「このままじゃ借金をしないと生活できない。でも、赤字のままじゃ返済できないから、ずっと借金を続けるしかない。でも、そんな自転車操業は長く続かないよ。あっという間にお手上げだよ」と伝えたのです。

そして筆者は「子どもは平等だと強調してください」とフォローしました。そこで悠介さんは「こっちの子どもが大事だから養育費を減らして欲しいわけじゃなく、利人(前妻の子)と同じくらいで十分。だって離婚した後、生活のために借金をしたことはないでしょ?」と続けたのです。

それでも前妻は「私は過去の話をしてるんじゃない。大事なのは将来なのよ。養育費を減らされて生活する私『たち』のことを考えたことはあるの?」と。

そこで筆者は「どうしても減額に応じてくれないなら猶予で妥協するしか」と計算しました。養育費の支払は残り4年です。4年間の養育費を毎月9万円から4.5万円に減額します。しかし、養育費の支払は4年で終わりではなく、長男が成人した後も4年間、毎月4.5万円を支払います。2024年11月から2028年10月までは当月の養育費、2028年11月から2032年10月までは不足分の養育費です。

悠介さんは「養育費の月額は半分になるけれど、全期間の養育費は離婚時に決めた金額と同じ。あくまで支払を猶予するだけで、減額するわけではないことを分かってほしい」と懇切丁寧に説明。そして前妻は最終的に「それなら……」と了承してくれたのです。

突然の妊娠、再婚によって二つの家庭を現状維持できなくなった悠介さん。二つ目の家庭のため、一つ目の家庭に犠牲を強いざるを得なかったのですが、親権者(今回は前妻)は離婚時、決めた養育費を最後までもらえる前提で人生を設計しています。

どんな理由があろうと人生設計を狂わすことに変わりはありません。とはいえ、身分不相応な養育費を無理して払うことで現妻の子どもを育てられないようでは本末転倒です。

統計(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達していますが、半分以上の父親は養育費を支払っていない状況です。

そう考えると悠介さんにとった行動は決して褒められることではありませんが、二つの家庭を維持するためには致し方ありませんでした。悠介さんの場合、突然に振って湧いたトラブルでしたが、責任ある大人なら一つの財布で大丈夫なのかどうか……十二分の検討してから二つ目の家族を築いた方が良いでしょう。

露木 幸彦 露木行政書士事務所 行政書士・ファイナンシャルプランナー

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