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再雇用後も年収500万円の62歳元モーレツ会社員、70歳から月25万円もらう気マンマンだったが…年金大幅ダウンも〈年金繰下げ〉を断念した妻からのひと言【社労士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月15日 11時15分

再雇用後も年収500万円の62歳元モーレツ会社員、70歳から月25万円もらう気マンマンだったが…年金大幅ダウンも〈年金繰下げ〉を断念した妻からのひと言【社労士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

矢野豊さん(62歳・仮名)は都内のメーカーに勤務するサラリーマン。ワーカーホリックを自他ともに認めるほどの仕事好きで、60歳定年後も再雇用でバリバリ働いていました。しかし転倒して1週間も入院するなど、最近では体力の衰えが顕著で、会社からも「無理をするな」と言われてしまいます。これからの年金生活について真剣に考え始めた矢野さん。しかしそのあまりの現実に、70歳まで年金受給を繰り下げる選択とも悩んでいます。本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、矢野さんの事例を解説します。

「昔みたいにもっと働かせてくれよ!」と思う一方、時折体力の衰えも感じて…

矢野豊さん(62歳・仮名)は都内のメーカーに勤務するサラリーマン。ワーカーホリックを自他ともに認めるほどの仕事好きで、60歳定年後も再雇用でバリバリ働いています。残業や休日出勤、遠方への出張も厭わず、年収は500万円超え。

長年にわたり仕事に情熱を注いできた豊さんは長時間働くことに慣れています。しかし、勤務先でも働き方改革が進み、残業や休日出勤が徐々に制限されてきました。「昔みたいにもっと働かせてくれよ!」と強く思う一方で、時折、体力の衰えを感じることも。

数週間前には、会議に出ようと急いでいたところ足がもつれて階段を踏み外し転倒、右足首を負傷して1週間ほど入院生活を送る羽目になりました。最近は特に体力の衰えが顕著で、会社からはもう無理するなといわれ、意気消沈しています。

20歳のときにスキー場で出会った妻と二人三脚で築いてきた生活も、老後のことを考えると不安が募ります。また、子供たちは独立し、それぞれの人生を歩んでいるものの、いつまでも自分たちが支える存在でありたいと思っています。

年金額を知り「これだけか……」

まだまだ働くことが当たり前だと思っている豊さん。あまり年金については気にしていませんでした。しかし、歳を取ればケガや病気でいつ働けなくなるか分かりません。

そこで自分の年金額を調べたところ、原則通りに65歳から受け取る場合、月18万円(年間216万円)ほどの金額になることが分かりました。現在の収入の半分以下です。「長年働いてきたのに、これだけか……」とため息が出ます。

しかし、70歳まで年金受給を繰り下げることで、月約25万円(年間約306万円)に増えると聞き、受給開始年齢の選択に悩み始めます。勤務先では70歳までの再雇用制度が新たに始まったので、繰下げ受給する場合は70歳まで働くつもりです。

「仕事、年金、健康。老後は一体どうすれば?」と苦悩する豊さん

豊さんはとても家族想いです。家族の将来を心配するあまり、自分の健康や生活について考える時間を持たずにいました。そんな中、仕事中にケガをして入院する事態となりショックを隠し切れません。また、最近体調を崩した友人の話も気になります。

友人は65歳で年金を受け取ることを選び、安定した収入を得ることで心の余裕を持っているとのことでした。豊さんは友人の姿を見て、「自分も同じ道を選ぶべきか?」と心が揺れます。

家族と話し合う中で妻からは、「今までさんざん無理して働いてきたでしょ。私だって年金を月に5万円くらいはもらえるんだし、無理をしてまで働かなくても、健康を考えたら65歳から受け取ったほうが安心じゃない? 私はあなたとゆっくり過ごしたい」と言われ、さらに迷いが深まります。

豊さん自身の健康や妻との時間を考えれば65歳から受け取る選択が無難に思えますが、70歳まで待てば受け取る年金が大幅に増えることが決断を鈍らせます。

しかし、もし繰下げ受給を選んで経済的な安心感が増したとしても、70歳まで働き続けることで体にさらなる負担がかかることに一抹の不安がよぎります。

繰下げ受給にデメリットがあるなんて!

豊さんは思い悩んだ末、会社に紹介してもらった社労士に相談することにしました。社労士は豊さんの状況を聞き、高齢者の労災や、繰下げ受給のメリットとデメリットを詳しく説明しました。

仕事中の事故で死亡や4日以上休むケガをした60歳以上のシニアは、昨年3万9702人と過去最多。労災による死傷者に占める60歳以上の割合も増えていて、昨年は29.3%とこちらも過去最高とのこと。

60歳以上の労働者の労災を種類別にみると「転倒」が最も多く40%。一般的に年齢を重ねると身体機能が低下して転倒しやすくなるとの説明を受け、自らの経験からも納得しました。

次に、社労士は繰下げ受給のメリットとデメリットを説明しました。年金を繰下げれば増額されますが、70歳まで無理して働き、体を壊して寿命が早まれば65歳から受給すれば良かったとなりかねません。

また、年金収入が多くなれば所得税や住民税、介護保険料なども増えることから、手取り金額は期待ほど増えない可能性があります。

豊さんは繰下げ受給にデメリットがあることを知り、驚きを隠せません。

【メリット】

  • 1か月あたり0.7%増額された年金を受け取れる
  • 増額された年金が一生続く

【デメリット】

  • 長生きできなければ、65歳から受給した場合の年金総額のほうが多くなる
  • 繰下げ受給により年金額が増えると、税金や社会保険料も増えてしまう
  • 一度繰下げ請求をすると取り消すことはできず、さらに増額を図ることはできない
  • 繰下げ待機期間中は加給年金も受給できないし、繰下げても加給年金は増額されない

社労士からの問いかけ~「無理して働き続けることが本当に幸せですか?」

そして社労士は豊さんの家計についてヒアリングしました。

年金収入は、豊さんの年金が月18万円、豊さんの妻の年金が月5万円で合わせて月23万円。現在の生活費が月28万円ほどなので、65歳以降に働かなければ約5万円のマイナスです。

もし繰下げ受給すると、豊さんの70歳からの年金が月25万円程度となり、妻の年金とあわせれば生活に余裕ができます。

ところで、豊さんの資産を聞いてみると貯金が約3,000万円あるとのこと。家族想いの豊さんはできるだけ多く妻と子供たちに遺したいと考えているようです。

そこで社労士は、「豊さんは今までワーカーホリックを自認するほど家族のために必死に働いてきました。どうしたって年齢とともに体力は衰えますし、無理して働けば労災の危険性も高まります。すでにお子さんたちは独立し、それぞれの人生を歩んでいます。もうご自身の健康や奥様との時間を第一に考えてもよろしいのではないでしょうか。無理して働き続けることが本当に幸せですか?」と問いかけました。

令和元年、金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書において、「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となって」おり、「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」とされたのが老後2000万円問題です。

3,000万円もの貯金があれば、約5万円のマイナス分を取り崩しながらでも65歳からの年金額と合わせて十分に生活できます。急な出費があっても対応できるでしょう。

妻からの「私はあなたとゆっくり過ごしたい」、そして社労士からの「無理して働き続けることが本当に幸せですか?」いう言葉が、豊さんの心に響きます。夫の健康を気にかけながら夕飯の準備をしている妻をぼんやり見ていると、自分の健康や妻との時間を優先することが、長い目で見たときに本当の豊かさにつながるのではないかと、ふと気づきました。

最終的に、豊さんは家族との話し合いを経て65歳から年金を受け取ることに決めました。妻と過ごす時間を大切にし、老後の人生を楽しむことを選んだのです。

この決断によって豊さんは安心して老後を迎える準備ができると同時に、心の余裕を持つことができました。

角村 俊一 角村FP社労士事務所代表・CFP

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