イーロン・マスク設立「スターリンク社」フィリピンの深刻なデジタル格差、是正へ

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一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、デジタル格差の是正に向けてまた一歩前進した話題を中心に解説していきます。

比で深刻化するデジタル格差、スターリンク社により是正へ

イーロン・マスクが設立したスターリンクインターネットサービスフィリピン社にフランチャイズを付与する法案（上院法案第2844号）が議会に提出されました。この法案は、インターネット接続が困難な遠隔地域へのサービス提供を目的としており、デジタル格差を解消するための重要な手段とされています。

スターリンクは、SpaceXが運営する衛星インターネットサービスで、同社は高速度ブロードバンドを農村や遠隔地に届けるために、衛星を軌道に展開し続けています。

フィリピンでは、遠隔地の貧弱なインターネットアクセスが、低所得家庭のさまざまな機会を制限していて、衛星通信の参入は、通信業界に明るい展望をもたらすでしょう。スターリンクの導入は、フィリピンにおけるインターネットアクセスの向上とデジタル格差の縮小に寄与することが期待されています。上院法案が成立すれば、遠隔地や災害リスクの高い地域に住む人々にも、高速インターネットが提供される道が開かれ、教育やビジネスの機会が増大することが見込まれています。

法案では、スターリンクが「ゲートウェイ地球局」と呼ばれる大型のディッシュ型衛星基地局を設置することを求めており、これらは無線局としての立法が必要です。ゲートウェイ地球局は、テレビやインターネット信号の送受信に使用される重要なインフラであり、これを通じてスターリンクのサービスが全国に広がることが期待されています。特に、台風や自然災害のリスクが高い地域に対するサービスの提供が重視されています。

昨年、フィリピンの大物事業家ヘンリー・シー・ジュニアが所有するデータレイク社は、スターリンクと提携し、全国でスターリンクの衛星キットを配布し、データサービスやソリューションを提供する契約を結びました。この契約に基づき、スターリンクの衛星キットは29,000ペソで販売され、これにはディッシュ、モデム、電源供給装置、マウント用三脚が含まれています。

比・製造業、2年ぶり高水準を記録

フィリピンの製造業は9月に拡大を続け、2年ぶりの高水準を記録しました。S&Pグローバルの報告によれば、フィリピンの製造業購買担当者指数（PMI）は9月に53.7となり、8月の51.2から上昇しました。この数値は2022年6月の53.8以来の高さです。PMIが50を超えると、良好な運営状況を示すことになります。フィリピンのPMIは2023年9月以降、毎月50を超える数値を記録しており、ASEAN諸国の中でも最高の水準を誇ります。タイの50.4を上回り、マレーシア（49.5）、インドネシア（49.2）、ベトナム（47.3）、ミャンマー（45.5）はいずれも縮小を示しました。

PMIは新規受注（30％）、生産（25％）、雇用（20％）、供給業者の納品時間（15％）、購入在庫（10％）の加重平均から成り立っています。新規受注の急増が生産量の上昇を促し、雇用や購買活動も活発化したとされています。

一方で、国際市場におけるフィリピン製品の需要は減少しており、新規輸出受注は2ヵ月連続で減少し、過去4年以上で最も大きな落ち込みとなっています。国際的な需要の低下とサプライチェーンの問題が逆風となる一方で、国内需要が成長を支えるという構造になっています。

9月には製造業者が新規受注の増加に対応するために雇用や購買活動が増加しましたが、雇用の成長率は3月以来の最高を記録。購買活動は20カ月ぶりの高水準に達し、一部の企業は今後数ヵ月の売上増加を見込んでいるため、サプライチェーンの混乱に備えて在庫を増やしています。一方で、インフレ圧力は緩和しており、これが中央銀行の金融緩和策に影響を与えます。

製造事業者はパフォーマンスに対して自信を持っており、過去5ヵ月で最も高いレベルを示しています。また、需要のトレンドが改善すると見込み、これが生産成長を支えると期待しています。