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生前贈与で「定期預金を名義変更」しても課税対象となる?…知っておくべき贈与税の“6つの非課税枠”

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月2日 14時30分

生前贈与で「定期預金を名義変更」しても課税対象となる?…知っておくべき贈与税の“6つの非課税枠”

(※写真はイメージです/PIXTA)

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に財産を譲渡することを指し、相続時の資産を減少させることで相続税の軽減を図る効果的な節税対策です。生前に定期預金の名義を変更することで将来の相続税負担を軽減できると考えている方は多いですが、この名義変更には贈与税が課せられる可能性があるため、注意が必要です。本記事では、定期預金を生前に名義変更する際の税制上の留意点や、より効果的な税対策について詳しく解説します。

生前贈与とは?

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に、財産を贈与で譲り渡すことをいいます。

贈与は、法律的には「当事者の一方(贈与者)が、自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方が受諾することで効力が生じる契約」(民法549条)です。被相続人がこの契約を生前に相手方と結べば、民法上は生前贈与ということになります。

一般的に生前贈与は、相続時の資産を少なくし、将来発生する相続税を低くするための節税対策として利用されます。

贈与税の課税方法は?……「6つの非課税枠」について

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。受贈者は、贈与者ごとにそれぞれの課税方法を選択することができます。

暦年課税

「暦年課税」は1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(1年間に二人以上の人から贈与を受けた場合や同じ人から2回以上にわたり贈与を受けた場合には、それらの贈与を受けた財産の価額の合計額)をもとに贈与税額を計算する方法です。

なお、暦年課税を選択した場合は、いつでも次に紹介する相続時精算課税に移行することができます。

相続時精算課税

「相続時精算課税」は、60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子又は孫が財産の贈与を受けた場合に選択できる課税方法です。

なお、一度相続時精算課税を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与について暦年課税に変更することはできません。

贈与税の非課税枠とは

贈与税の非課税枠について見てみましょう。

贈与税の非課税枠には、一般的なものとして、以下の6つの場合があります。ただし、①と②は、どちらかを選択することになります。

①110万円の基礎控除による非課税枠

暦年課税を選択する場合、一人の人が毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円までの場合には、贈与税は非課税となります。

②相続時精算課税による非課税枠

相続時精算課税を選択する場合、贈与を受けた財産の価額の合計額が2,500万円までの場合には、贈与税は非課税となります。

③夫婦間贈与の特例による非課税枠

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで贈与税は非課税となります。

④直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税枠

平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の人が、父・母・祖父・祖母などの直系尊属から結婚費用・子育て資金に充てるために一括贈与を受けた金銭等については、一定の要件をすべて満たせば、1,000万円(結婚費用に充てるための金銭等は300万円)まで贈与税は非課税となります。

ただし、その受贈者が50歳に達したときに残っていた残金については、50歳に達したときにおいて残金を贈与されたものとして贈与税の対象となります。

⑤直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税枠

平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、30歳未満の人が、父・母・祖父・祖母などの直系尊属から教育資金に充てるために一括贈与を受けた金銭等については、一定の要件をすべて満たせば、1,500万円(学校等以外の者に支払う金銭等は500万円)まで贈与税は非課税となります。

ただし、教育資金管理契約が終了したときに残っていた残金については、そのときにおいて残金を贈与されたものとして贈与税の対象となります。

⑥特定障害者が贈与を受けた場合の非課税枠

特定障害者の生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特定障害者を受益者とする財産の信託があった場合は、その信託受益権の価額のうち、特別障害者である特定障害者については6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者については3,000万円まで贈与税は非課税となります。

親から子への「定期預金の名義変更」は贈与税・相続税の対象となる?

定期預金の名義が子であっても、実質的な所有者が親である場合には、親の財産に属することになるので、相続税の対象になります。以下の条文を確認しましょう。

①民法549条:贈与は、当事者の一方が財産を無償で与える意思を示し、相手が受諾することで効力が生じる。

②民法550条:書面によらない贈与は、各当事者が撤回できるが、履行の終わった部分はこの限りではない。

③相続税法1条の4:贈与により財産を取得した者は贈与税を納める義務がある。特に、一時居住者でない個人や特定の条件に該当する場合。

④相続税法基本通達:贈与による財産取得の時期は、書面によるものは契約の効力発生時、書面によらないものは履行時。

国税庁の事例:名義にかかわらず、被相続人が資金を拠出した財産は相続税の課税対象となる。

これらの法律や通達を参考に、定期預金の名義変更が贈与税の対象となる場合を考察します。

定期預金の名義変更が贈与税の対象となる理由

親から子への定期預金の名義変更がされ、贈与として取り扱われて贈与税の対象となるのは、以下の場合です。

親と子が書面によるか否かにかかわらず贈与契約を結んだ後、親から子への定期預金の名義変更がされ、その名義変更後、子が親から定期預金の通帳や証書、届出印を受け取って管理し、定期預金を運用している場合には、贈与として取り扱われ贈与税の対象となります。

名義預金とは?

定期預金の口座の名義人と実際に管理している人が異なる預金のことを名義預金と言います。例えば、祖父が孫名義の口座を作り、実際には祖父が管理しているケースがこれにあたります。この場合、名義は孫ですが、実質的には祖父の財産と見なされます。

名義預金が認められるかは、以下の基準から判断されます。

①定期預金のお金を出した人は誰か

②定期預金の管理・運用をしている人は誰か

③定期預金から生ずる利益を得ている人は誰か

④定期預金の名義人がその名義を有することになった経緯

⑤被相続人と当該定期預金の名義人との関係

⑥被相続人と当該定期預金の管理・運用をする人との関係

上記の①~⑥を総合して、名義預金かどうかが判断されるといえます。被相続人が名義預金を生前贈与したといえるためには、上記の②~⑥が重要になります。

①については、定期預金の資金を拠出している人の財産と認められることになります。

②については、定期預金の名義人が預金の通帳や証書、届出印を管理し、預金を解約したりして他の用途に使用している場合には、生前贈与の可能性があります。

③については、定期預金の名義人が預金から発生する利息を口座に入金していれば、生前贈与の可能性があります。

④については、定期預金の名義人が被相続人から贈与を受けて名義変更をしたのであれば、生前贈与の可能性があります。

⑤については、被相続人と当該定期預金の名義人との関係が贈与者と受贈者の関係であれば、生前贈与の可能性があります。

⑥については、当該定期預金の管理・運用をしている人が被相続人から贈与を受けた人であれば、生前贈与の可能性があります。

定期預金の名義変更で節税可能?

定期預金の名義変更で節税が可能なのかどうかについて見ていきましょう。

贈与税の非課税枠に関しては上述しましたが、下記のように生前贈与を行えば、相続財産を減らすことができ相続税の節税になります。

(1)1年間の贈与が贈与税の基礎控除額を下回る110万円以下

(2)一定の直系親族間で贈与を受けた財産の価額の合計額が2,500万円以下

(3)夫婦間贈与の特例により2,000万円以下での振込み入金

(4)結婚・子育て資金の一括贈与により1,000万円以下での振込み入金

(5)教育資金の一括贈与により1,500万円以下での振込み入金

しかし、この方法でも贈与と認められず名義預金として扱われる可能性もあります。そのため、生前贈与と認められるには以下の点に注意する必要があります。

①上述した(1)~(3)については贈与者と受贈者との間で贈与契約をした後、定期預金の名義を贈与者から受贈者に変更することが必要です。(4)(5)については金融機関等と一定の契約を結んだ上、定期預金の名義を贈与者から受贈者に変更することが必要です。

②贈与者が受贈者の定期預金の口座に非課税枠の金額を振込み入金することが必要です。

③受贈者が贈与者から定期預金の通帳や証書、届出印を受け取り管理することが必要です。

④受贈者の贈与税が非課税となるためには、上述した(2)については相続時精算課税選択届出書と贈与税の申告書を提出することが必要です。(3)については贈与税申告書を税務署に提出すること、(4)(5)については非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出することが必要です。

⑤上述した(1)については、受贈者が「相続や遺贈によって遺産を取得した人」に当たれば、相続開始前3年以内の贈与として相続税の対象になるので、節税のためには相続人以外の人に贈与することが必要です。

節税するコツ

上述した条件をまとめると、節税するためのコツは、以下のような贈与税の非課税枠を利用することです。

①相続人以外の人に110万円以下の基礎控除による非課税枠

②相続時精算課税による非課税枠

③夫婦間贈与の特例による非課税枠

④直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税枠

⑤直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税枠

定期預金の名義変更の方法は?

実際上、定期預金の名義変更は、相続や結婚・離婚・改名の場合以外はできません。ここでは、生前贈与と相続による名義変更の手順と必要書類を解説します。

生前贈与による定期預金の名義変更の方法

生前贈与の場合、親の定期預金を解約して、子の口座に預け替えるかたちで名義変更を行います。以下の手順を踏みます。

1.親の預金を解約

親名義の口座を解約し、預金を払い戻します。

2.子の口座に預け替え

新たに子の名義の口座を開設し、解約した預金を入金します。

相続による定期預金の名義変更、必要書類・手順

相続による定期預金の名義変更の方法、必要書類・手順について見てみましょう。

ゆうちょ銀行の場合

①相続の申し出

被相続人が亡くなったことを「相続確認表」に記入し、ゆうちょ銀行または郵便局に提出します。相続確認表のフォームは銀行のウェブサイトからダウンロード可能です。

②「必要書類のご案内」の受取り

提出後、専門部署(貯金事務センター)から必要書類の案内が郵送されます。

③必要書類の準備

ご案内に従って相続手続きに必要な以下の書類を準備します。

1.相続確認表

2.貯金等相続手続請求書

3.被相続人の出生から亡くなるまでの連続した戸除籍謄本(法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」があれば、3と4の提出は原則不要)

4.相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以後の証明日のもの)

5.相続人全員の印鑑登録証明書(6ヵ月以内のもの)

6.遺言書(遺言がある場合)や遺産分割協議書(遺産分割協議をした場合)

7.被相続人の定期預金の通帳や証書、届出印

8.代表相続人(名義変更を受ける相続人)の本人確認書類(運転免許証等)

9.相続人以外の人が代理で必要書類を提出する場合、ゆうちょ銀行専用の委任状が必要

④必要書類の提出

準備した書類を窓口に提出します。

⑤相続払戻金の受取り

名義変更後、代表相続人の口座に相続払戻金が入金され、通帳や証書が郵送されます。

ゆうちょ銀行以外の金融機関の場合

①相続の連絡

口座を持つ金融機関に被相続人の死亡を伝えます。

②必要書類の準備と提出

ゆうちょ銀行で準備した書類に加え、金融機関指定の払戻請求書を準備して提出します。

③相続払戻金の受取り

必要書類提出後に名義変更された代表相続人の口座に相続払戻金が入金されます。

定期預金の“名義変更後”の手続き……申告が必要なケース

生前贈与の場合

贈与者の定期預金の口座を解約して払い戻し、これを開設した受贈者の定期預金の口座に預け替えした場合です。

①その年の1月1日から12月31日までの間に生前贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円を超えた場合

受贈者は贈与税の申告書を提出しなければなりません。

②贈与税の基礎控除額を下回る110万円以下で生前贈与された場合

(1)受贈者が「相続や遺贈によって遺産を取得した人」で、相続開始前3年以内の贈与であれば、相続税の申告をします。その3年以内の贈与に当たらなければ贈与税・相続税いずれの申告の必要もありません。

(2)受贈者が相続人以外の人であれば、贈与税の申告をする必要はありません。

③一定の直系親族間で財産の価額の合計額が2,500万円以下で生前贈与された場合

受贈者が相続時精算課税選択届出書と贈与税の申告書を提出します(非課税)。

④夫婦間贈与の特例により2,000万円以下で生前贈与された場合

受贈者が贈与税申告書を税務署に提出します(非課税)。

⑤結婚・子育て資金の一括贈与により1,000万円以下で生前贈与された場合

受贈者が非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出します(非課税)。

⑥教育資金の一括贈与により1.500万円以下で生前贈与された場合

受贈者が非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出します(非課税)。

相続の場合

①相続人が一人であれば、相続税の対象となる遺産総額が3,600万円(基礎控除額といいます)を超える部分に相続税がかかるので、3,600万円以下であれば相続税の申告をする必要がありません。

②相続人が複数であれば、相続税の対象となる遺産総額が「3,000万円+相続人の数×600万円」(基礎控除額といいます)を超える部分に相続税がかかるので、基礎控除額以下であれば相続税の申告をする必要がありません。

申告期限が過ぎた場合のペナルティ

贈与税の場合

申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで。期限を過ぎると加算税や延滞税が課せられます。

相続税の場合

申告期限は相続開始日から10ヵ月以内。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されます。

生前贈与は、資産の移転と相続税の節税を兼ね備えた有効な手段です。非課税枠をうまく活用することで、財産をスムーズに次世代へ引き継ぐことが可能になります。しかし、名義預金として扱われないよう、贈与契約や実際の管理方法に留意することが重要です。正しい知識を持って計画的に進めることで、安心な将来を築く一助となるでしょう。

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