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年金月35万円の60代夫婦、定年祝いに「ビジネスクラス旅行」も…旅先での「富裕層夫婦との出会い」で一変、絶望の淵へ。「恥ずかしい、恥ずかしい」と涙するワケ【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月20日 10時45分

年金月35万円の60代夫婦、定年祝いに「ビジネスクラス旅行」も…旅先での「富裕層夫婦との出会い」で一変、絶望の淵へ。「恥ずかしい、恥ずかしい」と涙するワケ【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

長年の会社勤めを終え、豊かな老後を迎えたはずの60代夫婦。十分な退職金と年金を手にし、新たなステージの門出に一世一代の豪華旅行に出かけたことから、思いもよらぬ展開が待っていました。なぜ、安定していたはずの老後資金が底をつき、破産寸前に追い込まれてしまったのか……。本記事では、山田さん夫婦(仮名)の事例とともに、安易な高利回り商品への投資が招いた悲劇と、その予防策について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。

「人生最大の豪華旅行」から始まった予期せぬ転落

山田浩一さん(仮名/65歳)と久美子さん(仮名/64歳)は、ともに大手企業で35年以上勤め上げた元サラリーマン夫婦です。浩一さんは電機メーカー、美智子さんは金融関連の会社で働き、2人合わせた退職金は3,000万円、年金額は夫婦で月35万円、来年からは完全な年金生活です。

子供たちはすでに独立し、住宅ローンも完済。貯金は退職金以外に1,000万円あり、老後の生活に不安はないと考えていました。

「長年頑張ってきたんだから、退職金の一部で豪華な旅行をしてもバチはあたらないよね」と2人で意気投合。選んだのは、長年憧れていたクルーズ旅行でした。

学生時代にはバックパッカーでヨーロッパを巡った浩一さん。今回は奮発してビジネスクラスを利用してバルセロナ入りし、40年以上前と変わらぬサクラダ・ファミリアに感動。その後、港に移動しクルーズ船に乗船すると、地中海の絶景を眺めながらの船上ディナー、各寄港地でのエキゾチックな体験に、夫婦で人生の新章の幕開けを祝福し合いました。

しかし、この船旅が彼らの人生を大きく変えることになるとは、この時点では予想だにしていませんでした。

旅先での出会いで知った「夢の投資話」

クルーズ船内で山田夫妻は、同じくリタイア組の後藤さん夫妻と出会います。後藤さん夫妻のスマートな立ち振る舞いに魅了され、バーでお酒を酌み交わしながら、プライベートな会話を交わすまでに。後藤さん夫妻が海外駐在をしていたこと、いかに多くの不動産や金融資産を運用し、さらに豊かに老後を楽しんでいるかを知ったのです。

後藤さんは、投資で成功したお金でクルーズ旅行を楽しんでいると語り、「個人向け社債(以後、私募債)」という商品を紹介しました。「元本保証で、年利15%も夢じゃないよ」という言葉に浩一さんは俄然興味を持ちました。

2,500万円を失う悪夢

帰国後、早速、浩一さんは後藤さんに勧められた私募債という商品に投資を始めたのです。最初は100万円でスタート。3ヵ月後に振り込まれた利払いに気をよくした浩一さんは、投資額を500万円に増やしました。半年後には1,000万円、そして1年後には2,500万円にまで膨らんでいったのです。

久美子さんは、当初は反対したものの「老後をさらに豊かにするチャンスだぞ!」という浩一さんの熱意に圧倒され、最終的には了承しました。退職金と合わせて4,000万円あった預貯金は、クルーズ旅行で3,500万円に目減りしていたので、そのうちの2,500万円を投資に回すことになったのです。

しかし、1年半後、投資先の会社から利払いがストップ。焦って後藤さんに連絡をとってみたものの「債務不履行になっちゃったみたいだね。卵は1つのカゴに盛るなっていうもんな。まさか、集中投資していないよね」と言われ、プライドもあり2,500万円を失ったとはとても言えませんでした。

「まさか自分たちが……」と、浩一さんは呆然。金融関連の会社で働いていた久美子さんは、「恥ずかしい、恥ずかしい」とことさら大きなショックを受けて涙し、寝込んでしまいました。

うまい話には裏がある

山田さん夫妻のケースは、決して珍しいことではありません。金融庁の最新データ(令和5年7月〜9月)によると、寄せられた相談のなかで、投資商品等に関するものは相談全体13,271件に対して約4分の1の3,092件、前期比165件の増加になっています※1

今回、山田さんが投資した私募債は、社債の一種です。社債とは、企業が資金を調達するときに発行する債券のことで、不特定多数に販売する公募債と、少数特定の投資家に債券を発行する私募債にわかれます。私募債は公募債と比べて規制が緩く、投資家保護の観点から注意が必要です。

また、退職金という大切な資金を運用する際は、慎重さがなにより大切です。高利回りを謳う投資話には特に注意が必要で、『うまい話には裏がある』という格言を胸に刻んでおくべきでした。

富裕層も要注意!老後資金を守る5つのチェックポイント

では、具体的には、どんなことに注意をすればよいのでしょうか? 私募債を含めて社債に投資をする際は、以下の5つのポイントをチェックしましょう※2

1.会社の実在性確認: 伝えられた電話番号やホームページのURLを使うのではなく、インターネットの検索サイトで社名を検索するなどして、その会社が実在するか確認する。

2.募集方法の妥当性: 未公開会社が、広く一般の個人投資家にまで声をかけて募集することは稀である。

3.換金性の確認: 社債は、取引される市場がほとんどない。つまり、償還前に換金することが難しいのが一般的。

4.高利回りの裏側: 「高利回り」は、裏を返せば、会社側がそれだけ高い利子を支払わないと買い手がつかないということ。

5.支払い状況の継続確認: しばらくの間は約束どおり利子が支払われるものの、そのうち支払われなくなる、という手口もみられる。

さらに重要なのは、リスク分散です。1つの商品に集中投資することは、非常に危険です。山田さん夫妻の資産と年金額であれば、そもそもリスクの高い運用をする必要はありませんでした。

最後に、もし同様の状況に陥った場合、1人で抱え込まず専門家に相談することが重要です。金融庁や各地の消費生活センターでは、金融トラブルに関する相談を受け付けています。老後の資金運用は、慎重に、そして賢く。それが豊かな老後を守る鍵となるのです。

〈参考〉

※1 金融庁「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:令和5年7月1日~同年9月30日)

https://www.fsa.go.jp/soudan/2023soudan07-09/2023_07-09.html

※2 日本証券業協会「株や社債をかたった投資詐欺」の手口

https://www.jsda.or.jp/about/hatten/inv_alerts/toushisagi/teguchi.html

三原 由紀

合同会社エミタメ

代表

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