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恐ろしい…年金月30万円の70代夫婦、孫たちに「計4,500万円の銀行口座」を作るも「本人が解約できない」ワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月21日 10時45分

恐ろしい…年金月30万円の70代夫婦、孫たちに「計4,500万円の銀行口座」を作るも「本人が解約できない」ワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「孫のために資産を使いたい」と願う人が活用できる「教育資金の贈与」に関する制度。非課税枠は、受贈者(資産を贈られる人)1人あたり1,500万円の枠が与えられ、贈与税が掛からずに孫にお金を贈ることができる制度です。しかし、本制度を利用して後悔するケースもあって……。本記事では、安達さん夫婦(仮名)の事例とともに、教育資金の一括贈与の注意点についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

子供夫婦のために贈与

安達憲介さん(仮名/75歳)は大手企業に長年し、妻の裕子さん(仮名/71歳)とリタイア生活を送っていました。

安達さんには長男、長女の2人の子供がいて、それぞれに家庭を持ち3人の孫たちがいます。5年ほど前に長男の転職と、子供たちの習い事の費用が増えてきたことが重なり、家計が苦しくなっていきます。

そんな時期に、教育資金の贈与に関する制度のことを知りました。本来であれば年間110万円を超える贈与については贈与税の対象となるのですが、この制度を利用することで非課税で教育資金を一括贈与することが可能です。

「これはありがたい! 年金も2人で月30万円ももらえてるし、生活費も十分足りるだろう」と、早速銀行で口座を開設。残りの資産6,000万円のうち3人の孫たちに1,500万円ずつ、計4,500万円を贈与することにしたのでした。

しかし、それから8年が経過したいま、安達さんにとっては予想外のことが起きてしまいます。

住宅のリフォーム、夫の介護

安達さんはスーパーの買い物の途中、店内で転んでしまい大腿骨を複雑骨折しました。そして、骨折した足は回復が難しく、車いす生活に。それに伴い、自宅のバリアフリーリフォームが必要となり、屋根や外壁などほかの部分についても大規模リフォームが必要となり、総額で1,000万円近くの資金が必要となっていました。

残りの資金もすでに1,000万円ほどに減ってしまっていて、今後の介護費用や、裕子さんの今後の生活費も考慮すると、それだけの費用を支出するのは不安が大きいです。

「申し上げにくいのですが…」

そこで考えたのが、孫たちに一括贈与した資金の残額です。口座のなかには3,500万円ほど残っています。一度は贈与したお金ですが、孫たちのうち1人は大学に進学せずに就職し、あとの2人もそこまでの費用は掛からないだろうと考えられていました。

子供たちと協議した結果、贈与した資金を戻すことに決めた安達さん夫婦は、金融機関に相談しました。

しかし、裕子さんが金融機関で口座から引き出そうとしたところ、なぜかお金を下ろすことができません。驚いた裕子さんは、金融機関の担当者に尋ねたところ、「申し上げにくいのですが、お金は孫たちの財産になっているため、ご本人であっても引き出すことはできません」という回答がありました。

結局住宅のリフォーム資金は「教育資金を贈与してもらったのだから」と同居している長男がローンを組むことで資金を残すことができましたが、原則として孫たちが30歳になるまでは解約することができず、さらに30歳になって残った金額に対しては贈与税が発生することがわかります。

「あのとき安易に贈与などしなければよかった……」安達さんは当時を思い出しながらつぶやくのでした。

教育資金の贈与の特例

今回紹介した安達さんのように、「贈与税が掛からずお得」と、この制度を利用する方も少なくありません。教育資金を一括で非課税で贈与できる点はメリットで、相続税ができるだけ掛からないようにと考える方や、安達さんのように孫の教育費を援助したいと考える方は、活用を検討されるとよい制度といえます。

しかし、その一方で契約の終了時(孫が30歳に達したときなど)までに1,500万円を使い切れなかったら、残った分は祖父母からの贈与となり、孫は贈与税を払わなければなりません。また、祖父母が病気などになり「医療費が必要になったので、口座を解約したい」と思っても解約することはできません。

また、教育費を孫に贈与する場合にはこの制度を使わずとも、必要になったらその都度贈与を行うことで贈与税は課税されずに教育資金を贈与することが可能で、安達さんはこの制度を利用せずともその都度必要な資金を非課税で援助することができたのです。

一括で渡すことができるという点がメリットではありますが、引き出す際には教育費として支払った領収書などの添付が必要だったり、残額に対して贈与税が発生したりとデメリットもあります。

本制度を利用すべきかどうか、また、1,500万円全額を贈与せずとも500万円、1,000万円などの金額で与することも可能ですので、30歳までに使い切る予定がある金額かなど、検討してから利用するようにしましょう。

家族を想う気持ちが後悔を招かないために

今回は教育資金の一括贈与に関する失敗事例をお伝えしました。

日本銀行が公表する「資金循環統計」によると、2024年6月末時点での個人の金融資産残高は2,212兆円と過去最高を更新し、その理由として高齢化により高齢者が保有する金融資産が増えていることが挙げられ、相続税について不安に考えているという方も多いでしょう。

しかし、今回ご紹介したような事例もあり、安易に相続税対策に利用するとムダに贈与税を支払ってしまうこともあり、相続税の節税にあたらないこともあります。

今回の安達さんのように、あとから資金が必要になっても解約はできませんので、今後の必要になる資金を見込んで、ゆとりのある資金を残せる金額で贈与を行うようにしましょう。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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