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家族葬なんてしなければ…年金月6万円だった享年85歳父の「葬儀」を、世帯年収500万円の50歳娘が後悔しているワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月24日 10時45分

家族葬なんてしなければ…年金月6万円だった享年85歳父の「葬儀」を、世帯年収500万円の50歳娘が後悔しているワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

一昔前までは、盛大に営むこともめずらしくなかった葬儀。しかし、現在は家族葬、一日葬、直葬など、葬儀の簡素化が進んでいます。こうした小さな葬儀には費用が安いといったメリットがある一方で、後悔するケースもあるようです。本記事では、Aさんの事例とともに、後悔しない葬儀について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

増える家族葬、葬儀の簡素化

一般的に、葬儀は亡くなった人の冥福を祈り、弔う宗教的儀式を指し、死後安らかに眠れるように願う儀式です。また、遺族や親族、友人、近所の人、会社の人などは亡くなった人の冥福を祈り、最期のお別れをするものです。

亡くなった人と親交が深かった人にとっては、最期のお別れをしたいと願う人が葬儀に参列します。しかしながら、コロナ禍では大々的に葬儀を執り行うことが叶わず、淋しい見送りをせざるを得なかった人が多くいたことは周知の事実でしょう。そしていま、コロナの影響がなくなっても、ごく近しい人のみで行う家族葬等が増えているようです。

いざ、自分の親が亡くなり…

85歳の父親を亡くしたAさんは、相談に行った葬儀屋で、いまは家族葬が増えていて葬儀代は一般葬より安く抑えられると聞きました。

平成29年の公正取引委員会の「葬儀の取引に関する実態調査報告書」では、葬儀の種類別の年間取扱件数の増減傾向については、「一般葬」が年間取扱件数全体の63.0%を占めている現状において、増加傾向にある葬儀の種類については、「家族葬」が51.1%、「直葬」が26.2%、「一日葬」が17.1%であったのに対し、減少傾向にある葬儀の種類では一般葬、社葬となっています。

コロナ禍前の段階での調査であるため、コロナ禍では密を避けるため家族葬等が増え、コロナ後も同様の傾向であるということが想像できます。一般葬が減少し、家族葬など小規模な葬儀が増加傾向にあるなど葬儀の在り方について変化が生じているようです。

50歳のAさんは一人娘です。自分にも娘が1人います。パート勤務のAさんの世帯年収は500万円程度。子どもが大学受験とあって、塾代、受験費用から、入学してからの授業料等、これからかかる教育費を考えると、葬儀代にかける費用は少ないほうが助かることはいうまでもありません。

父の現役時代は自営業で年金が少なく、廃業してからは年金と貯蓄を切り崩して暮らしていたため、貯蓄はほとんど使い果たしていました。年金は自営業のため、月6万円程度で築50年の小さな持ち家があったため、ぎりぎり生活が成り立っていたという状態。家は駅から離れているため、評価額は低く、自宅を壊す費用等を考えると、相続するにも負担になりそうな気配です。

Aさんのお財布事情等もあり、生前の父が「自分に万一のことがあったときには無理に葬儀をやることは望んでいない」といってくれたことも後押しとなり、家族葬を選びました。

父の人柄

Aさんの父は、自営業で小さな商店を経営していました。いまでは、ちょっとした買い物はコンビニエンスストア等で手軽に時間も問わずできますが、一昔前は個人商店が主流で、時には個人宅にご用聞きをし、配達していた時代でした。

Aさんの父は、お願いされると笑顔で引き受け、荷物がたった1つであっても配達してくれる、誰かのためにといつも考えているような人でした。そのため、儲かっているとはいいがたく、なんとか生活できる程度で暮らしていました。母はAさんが学生時代に亡くなっており、Aさん自身も実家にいたころは家が貧しくて、父子家庭であったこともあり、苦労をした経験があります。

時代は変化し、世代交代すると、大きな商業施設が主流となり、父が年金を受給する年齢になるころにはお店を閉めることになりました。あとから聞いたはなしですが、父は、お店を閉めたものの手先が器用なこともあって、晩年はなんでも屋さんのように近所の人から困りごとの相談、修理等して、たくさんの人に慕われていたようです。

近所の人が押しかけてきて…

そんな父が亡くなり、家族葬を選んだAさん。父親の家の整理をするため実家を訪れたとき、近所の人が訪れてきました。

「どうして葬儀に声がけしてくれなかったのか」「お世話になったから、最期の別れをしたかった」口々に言われ、線香の1本でもあげさせてほしいと訪れてきます。

Aさんの家から実家までは車で3時間程度離れているため、常時来ることができません。それにもかかわらず、近所の人がひっきりなしに訪れるため、片付けは一向に進みませんでした。それどころか、その日来られない人が次はいつ来るのかと聞いてきます。なかには最期の別れができなかったことを自分には会わせたくなかったのかと嫌味をいう人まで……。

近所の人に生前の父の意向の話をすれば事情は理解してくれるものの、Aさんは必要以上に実家を往復し、片付けと対応に疲れ果ててしまいました。

「こんなことになるなら、一般葬にすればよかった……」いまはそう悔やんでいるそうです。

葬儀を後悔しないためには

コロナ禍を経て、家族葬が増えてきているのは確かですが、離れて暮らす家族にはわからないことも多く、亡くなった人が、晩年に誰と親交が深かったのかわからないまま家族葬にしたことで後悔することもあるかもしれません。最近の社会風潮的には身内だけで葬儀をおこなうと考えがちですが、後悔先に立たずとなってはどうしようもありません。

父の想いは娘に伝えられていたとはいえ、周りの人たちが理解してくれるかどうかはわかりません。時代の変化だから、だけでは納得できない人もいます。「経済的に厳しいから」と先にひとこと声がけしていれば、誰かに相談していれば、大きく違ったかもしれません。

参考資料

公正取引委員会(平成29年3月22日)葬儀の取引に関する実態調査報告書

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/mar/170322_2.html

三藤 桂子 社会保険労務士法人エニシアFP 代表

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