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525万円払うはずだった所得税が50万円に…『金妻』感あふれる自慢の我が家を泣く泣く売却した62歳男性が小躍りしたワケ【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月18日 12時45分

525万円払うはずだった所得税が50万円に…『金妻』感あふれる自慢の我が家を泣く泣く売却した62歳男性が小躍りしたワケ【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

信夫さん夫婦(60代)は子ども独立したことから、戸建てからマンションに住み替えることを考えています。ただ、今の家にはローンが残っているため、スムーズに住み替えできるのか不安に感じています。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、家を住み替える際の注意点について解説します。

大好きな我が家だけど…老後は利便性のいいマンションに

信夫さん(62歳)は子どもも独立したことから、30年住んでいる戸建てを売却し、利便性のいいマンションへの住み替えを考えています。信夫さんが住み替えを考えるようになったきっかけは今年の夏に88歳の母が亡くなったことでした。信夫さんの母は新潟の山あいに住んでいたのですが冬に転んで足を痛めて以来、みるみるうちに体が弱ってあっという間に亡くなってしまいました。母の世話は同じ新潟に住んでいる妹に任せっきりだったのですが、都市部に住んでいる妹が母の元に通うのは大変で、最終的にわずかの期間ではありますが母は施設に入ることになりました。そんな経験もあって信夫さんは老後のことを真剣に考えるようになったのでした。

ところで、信夫さん夫婦が住んでいる家は特に妻(60)がお気に入りの家です。昔放送されていたドラマ『金曜日の妻たちへ』に憧れていた妻が、登場人物たちが住んでいるような家に住みたいと切望し、何件も家を見て回ってようやく決めた住まいでした。ちょっとしたパティオがあって、よく友人たちを招いて食事会をしたものでした。信夫さんにとっても思い出が詰まった住まいでしたが、坂が多く、どこに行くにも車が必要です。亡くなった母のこともあって、交通の利便性が良く、また病院やスーパーマーケットなどにも近いマンションのほうが生活しやすいと考え、苦渋の決断に至りました。

それでもまだ妻は自宅に未練があるようで信夫さんは「俺たちが動けなくなったらどうするんだ!」と毎晩説得。一時期はドラマのように夫婦仲は冷え切ったものの、何とか妻の合意を取り付けることに成功しました。とはいえ、妻の前では「俺に任せておけ!」と言い切った信夫さんですが、今の家はまだ住宅ローンが残っており、この状態で売れるのか。また新しいマンションを購入できるのか不安に感じています。

家の売却では、売却金額で住宅ローンが完済できることが前提

家の売却方法には「売り先行」と「買い先行」があります。

売り先行とはまず家を売却した後に新しく住む家を探す方法です。売却額から購入金額の目安がつけられるため、ゆっくりと家を探せる点がメリットですが、新しい家が見つかるまでの仮住いが必要です。さらに、引っ越しが2回になってしまい、その分費用が発生します。

「買い先行」はまず新居を購入して引っ越し、その後住んでいた家を売却する方法ですが、売却する家にローンが残っている場合は二重ローンになってしまい、家計に負担がかかります。

家を売却するときには住宅ローンを完済し、金融機関に抵当権設定の手続きを行ってもらわなければなりません。抵当権が設定されているままでは家を売却することはできないのです。そのため、今の家にまだ住宅ローンが残っているなら、売り先行で行うことをおすすめします。

売却金額によっては所得税の対象になることも

家を売却した際には、売却金額によっては利益が出るケースもあります。その際にはその利益分を譲渡所得として申告し、利益に応じた所得税を納めなければなりません。

実際、信夫さんの家と土地は土地価格高騰の影響もあり、合計6,000万円で売却できました。そして、家の取得費および売却費用は2,500万円だったので、所得金額は「売却金額-(所得費+売却費用)」、つまり6,000万円-2,500万円=3,500万円です。

信夫さんの譲渡所得は長期譲渡所得*1に該当するため、15%の税率で計算され、525万円の税金を払わなければなりません。

ただ、家を売却して利益がでたときには以下の控除制度が利用できます。

1.3,000万円の特別控除*2

3,000万円の特別控除とは、要件を満たすことで最大3,000万円の特別控除が適用されるもので、この制度を使えば「6000万円-2,500万円-3,000万円」となり、課税所得金額は500万円まで下がり、所得税額も525万円から75万円まで下がります。

2.10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例*3

家を売却した年の1月1日の時点で所有期間が10年以上ある場合は、譲渡所得の税率が軽減されます。

具体的には本来なら15%かかる税率が10%まで減らせるのです。この制度は3,000万円の特別控除と併用できるため、信夫さんが最終的に納める譲渡所得税額は、500万円×10%=50万円となります。

525万円と50万円。その差は475万円です。知っているのと知らないのとではここまでの差が出てくるのです。

家を売却して所得税の課税対象となったときには、これらの控除や特例を利用して納める税額を少なくすることを考えましょう。また、家を買い換える際には「特定居住用財産の買換えの特例」も利用できますが、税金を繰り延べるだけの仕組みであることや、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例とは併用できないことから、信夫さんは3,000万円の特別控除を軽減税率の特例を併せて利用することにしました。

リフォーム費用は意外と高額

マンションを購入する際、最近の新築マンション価格高騰により、中古物件を選ぶ人も増えています。また、老後を見据えてバリアフリー仕様にリフォームしてから住もうと考える人も多いでしょう。

ただ、リフォーム費用は意外と高額です。バリアフリー化のためのリフォームなら補助金制度が用意されていますが、フルリフォームを行うと1,000万円を超えるケースもあります。そのためにも、新しい家を購入する際にリフォームも合わせて行うことを考えており、また住宅ローンの利用を考えているなら、リフォーム費用も含めて住宅ローンを借りられるかも確認しておきましょう。

ただし、信夫さんくらいの年齢では住宅ローンで借り入れられる金額は少ないと予想されます。それでもリフォームローンを利用するよりは住宅ローンのほうが金利が低く、利息負担を抑えられます。無理なく返せる金額を借り入れるためにも事前のシミュレーションは欠かさないようにしましょう。そして余裕を持った返済計画を立てることが大切です。

住み替え方法や利用するローンはよく考えて決めることが大切

信夫さんの家は住宅ローンが残っていたため、どのように話を進めていけばいいか専門家に相談し、売り先行で購入者を探して売却しました。また、売却にかかる所得税について、3,000万円の特別控除は知っていたものの、軽減税率の特例は知らなかったため、非常に助かったと言っています。さらに住宅ローン控除も適用されるため、今後の節税効果を期待しているとのこと。

また、新しいマンションの購入費用を差し引いた売却益については退職金があまり期待できないことから、老後の生活費や医療費、今後発生するかもしれないリフォーム費用のために残しておき、余剰金額については運用で資産形成を続けるつもりです。

家の住み替えにはさまざまな費用が発生します。また住宅ローンが残っている家を売るには売却金額で残債を一括返済しなければなりません。いろいろと考えなければならない点が多いですが、信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、着実に進めていくようにしましょう。

<脚注>

*1:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁(nta.go.jp)

*2:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁(nta.go.jp)

*3:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁(nta.go.jp)

新井智美

トータルマネーコンサルタント

CFP

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