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こんな生活、一体いつまで続くのか…悠々自適の老後を夢見た資産4,000万円・年金月25万円の65歳元会社員、予期せぬ“老親2人のダブル介護”に悲鳴【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月25日 11時15分

こんな生活、一体いつまで続くのか…悠々自適の老後を夢見た資産4,000万円・年金月25万円の65歳元会社員、予期せぬ“老親2人のダブル介護”に悲鳴【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では65歳以上の約18%が要支援・要介護状態となっています。年金生活が始まれば、自分の老後のことだけを考えたいと思うかもしれませんが、現実はそう簡単ではなく、時に過酷な状況に直面することもあります。本コラムでは、早田慎介さん(仮名・65歳)の事例を通じて、老後生活に突入した後、親の介護を担うことになった場合の対処法や、事前に講じておくべき対策について、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が解説します。

悠々自適の老後のはずが、父親の異変で状況は一変

早田慎介さん(65歳)は長年大手企業の社員として働き、定年退職を迎えました。退職金と合わせて4,000万円の資産を保有し、妻の昭代さん(67歳)と合計で月々25万円程度の年金を受給。週末には夫婦で旅行を楽しみ、趣味を楽しみ、外食を楽しみ……そんな穏やかで優雅な日々を送ることができるはずでした。

しかし、そんなある日、早田さんの父の認知症が発覚しました。早田さんは父との仲が良くなく、長らく顔を合わせていませんでした。しかし、90代で高齢である両親の健康状態を考えると、介護の問題がいつかは訪れるかもしれないという不安は常に心のなかにあり、それがついに現実のものとなったのです。

父は認知症である以外は健康で身体は元気なので、家の中を縦横無尽に動き回ります。さらに、目を離すと外に出てしまい、近所の人に家まで連れてきてもらうこともしばしばでした。常に誰かが近くで見守っていないとならないような状態です。できるだけ母の負担を減らそうと特別養護老人ホーム(特養)への入所を希望しましたが、特養は希望者が多く、両親の介護状態ではすぐに入れる見込みがありません。

しかも、両親の貯金はほとんど残っておらず、年金もわずかな額しかないことが発覚。介護資金どころか生活費を賄うことすらも不安がある状態でした。年老いた母に負担が掛からないようにと思いましたが、現状ではグループホームなどへの入居も難しい状況です。

かといって、折り合いの悪い父を自分が面倒見ることも難しい状態です。そんなことをすれば自分が精神的に参ってしまい、共倒れになると思ったからです。また、実家は東北の田舎町にあり、関東に住む自分たちの生活を守りたい気持ちも強くありました。

そこで早田さんは、ひとまず母に父と一緒に暮らしてもらいながら、日中は父をデイサービスに通わせて負担を軽くしようと考えました。

元気だった母までも骨折が原因で「ダブル介護」に突入

そんなある日、さらなる事件が起きました。母がデイサービスに行く父の見送りをしようとした際に、玄関で転倒してしまったのです。年をとって脆くなった骨は、少しのダメージでも大怪我に繋がります。母の足も複雑骨折していて、1ヵ月以上の入院が必要という状態になったのでした。

「なんてことだ、これではどうにもならないぞ……」

色々と考えた結果、早田さんは父を有料老人ホームに預けることにしました。一方で、母はもはや一人で歩くことは難しく車いすが必要な状態に。そのまま要介護認定を受けることになったのです。

こうして、両親が二人とも同時期に要介護認定を受けることになってしまい、早田さんは「ダブル介護」という想定外の現実に直面することになりました。

父が有料老人ホームに入居したことで、毎月の介護費用はすでに20万円近くになっていました。ここで母までも老人ホームに入居し、父と同額程度の費用が必要になった場合には合計40万円もの負担になります。父母の年金を合計しても月15万円程度にしかならないため、自分達の預金を毎月25万円程度のペースで取り崩すことになりますが、それは現実的に不可能です。

そのため、早田さんは実家で暮らして母の面倒をみることに決めました。月に1~2回は妻の昭代さんに交代してもらうため、自宅と実家を往復する通費もジワジワと家計を圧迫します。その結果、自分達の生活費と合計して毎月30万円ほど資産を取り崩さなければならない状況が5年も続いてしまいました。また、早田さん自身もすでにシニア世代。若い時ほどの体力はありません。

「この生活、いったいいつまで続くのか。これ以上続いたら親も我が家も共倒れになるぞ」

こう思っていた矢先、幸いにも父の特養入居が決まりました。そして、母も施設に入れることができるようになり、早田さんの厳しいダブル介護生活もようやく終わりを迎えることになったのでした。

やっと介護から解放された早田さんでしたが、この5年で4,000万円もあった資産は半分ほどに減少。以前より金額は減るものの、これからも両親の介護費用はかかり続けるため、楽しみにしていた旅行に行くほどのお金の余裕はもうありません。早田さん夫婦の悠々自適な老後の生活は、忍耐のダブル介護生活へと変わってしまったのでした。

介護資金の準備、どのように備えるべき?

早田さんのように親の介護の悩みを抱えるシニア世代は少なくありません。なかには、仕事を早期に退職しなければならないような状況になってしまうこともあります。要介護状態になると、公的介護保険の制度を利用することができて一般的に自己負担額は1割となるため、介護サービス自体に掛かる費用自体はそれほど大きな金額にはならないものです。

しかし、老人ホームに入居するような場合、賃料や食費などの費用は1割負担の対象にはならず、自己負担分が大きくなってしまいます。そのため、老人ホームへの入居を考えている場合は、その分の資金の準備が必須となります。

厚生労働省の公表する介護事業状況報告によれば、65歳以上の要介護介護等は令和元年度で約655.8万人となっています。同年の65歳以上の人口が約3,589万人ですので、約18%が要支援、もしくは要介護状態となっており、年齢が上がればさらに割合は高くなります。

「家族に迷惑をかけたくない……」

こう思う方も多いと思いますが、家族に負担をかけないためには、介護が必要になることを想定したうえで資金準備が必要となります。

介護費用を含めた資産形成を行うこと、また生命保険も活用しながら、介護資金の準備も考えてみましょう。また、両親の介護が不安な人は、元気なうちに公的年金の金額や貯蓄額を把握し、介護資金が十分にあるかどうか、もしも介護が必要になったらどのように対応すべきか、しっかり対策しておきましょう。

家族間では感情的になり話し合いができないような場合には、介護資金やシニアのマネープランニングに強いファイナンシャルプランナーなど、お金の知識を持つ第三者を交えて話し合いをするのも一考です。自分たちの生活を守るためにも、どう対策をするか、家族間で早めに話し合っておくことがが大切です。

介護問題は他人事ではない

今回は、親の介護により悠々自適な老後の生活からお金の不安を抱えた介護生活に変わってしまった、早田さんの事例をお伝えしました。こうした介護問題は避けられない現実です。ですが、早めの備えと家族の協力があれば、思わぬ負担を軽減することができます。

また、前述の通り、要介護状態になる確率は高く、他人事ではありません。実際にこうした状況になったときのために、どのように準備し、残された家族が困らないようにするか。また親に介護が必要になった場合にどう自分達の生活を守っていくか、早い段階に考え対策しておくことが必要です。

小川 洋平 FP相談ねっと

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