年金夫婦で「月28万円」だったが、夫急逝で年金激減「もう家賃も払えない」と65歳・専業主婦が号泣。路頭をさまよい、行き着く先で巻き起きる「大騒動」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月19日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後の生活のベースとなる公的年金。一般的な夫婦で月23万円程度といわれていますが、これを基本として生活設計をしていると大変な事態になる場合があります。
65歳の同い年夫婦「年金だけで暮らしていける」の目論見
――何歳から高齢者ですか?
――いつから老後ですか?
そう問われたら、何と答えるでしょうか? 以前は、定年を迎えたら、以降は高齢者、老後というイメージでしたが、昨今は、60歳定年を迎えた後も働き続けるほうが多数派。また原則年金受給は65歳からということから、65歳をひとつの区切りにして現役を引退する人が多く、「年金をもらい出したら、高齢者/老後からな」と考える傾向が強いようです。
田中牧子さん(仮名・65歳)は、23歳のときに同い年のいまの夫と結婚し、子どもが誕生してからは、パートに出ることはあったものの、基本的に専業主婦。そして夫・正敏さん(仮名・65歳)は60歳で定年を迎え、そのあとは再雇用制度を利用し、契約社員として65歳まで働き、引退。夫婦で年金生活をスタートさせ、「さて、どう過ごそうか?」と思いを馳せている日々だとか。
そんな老後を下支えしてくれるのが公的年金。多かれ少なかれ、それが多くの高齢者の生活のベースになります。会社員や公務員であれば、基本的に老齢基礎年金と老齢基礎年金を受給。老齢基礎年金は40年、480ヵ月保険料を納付していれば、月6万8,000円(令和6年度)受給ができます。
老齢厚生年金のベースとなる保険料は給与によって変わり、それによって受給額が変わります。仮に大卒・大企業で平均的な給与を手にしてきたサラリーマンであれば、60歳定年で引退した場合で月13.1万円、併給の老齢基礎年金と合わせて月19.8万円、60歳以降は非正規社員として65歳まで働き引退したとしたら月14.2万円、基礎年金と合わせて月21.0万円を受け取ることができます。
田中さん夫婦の場合、夫・正敏さんは月20万円、妻・牧子さんが少し自身の厚生年金が上乗せされ月7万円、夫婦で合計27万円を手にしていました。
――手取りにしたら月23万円くらい。楽ではないけれど、年金だけで暮らしていけるかなと思っています
夫婦の年金で「老後生活をプラニング」の落とし穴
――定年を迎え、仕事を辞めたら、元気なうちにそれまでできなかったことをいろいろとやろうな
多くの夫婦が、そんな会話をしているでしょうか。しかし田中さんの場合、そんな話をしていた1年後に、夫・正敏さんが急逝するという悲劇に見舞われます。
妻としては、最愛のパートナーが亡くなるという悲しみの一方で、今後の生活をリアルに考えなければなりません。老後の生活のベースとなっていた公的年金。夫が亡くなったことで、牧子さんが手にするのは、夫の遺族厚生年金と、自身の年金となります。
遺族厚生年金の年金額は、死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。正敏さんは月13.2万円の老齢厚生年金を手にしていたので、その4分の3である、9.9万円。さらに、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある牧子さんの場合、夫の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「①夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうの額が遺族厚生年金の額となります。
①は前出の通り9.9万円、②は6.85万円となり、牧子さんが受け取れる遺族厚生年金は①。自身の年金と合わせると16.9万円となります。さらに遺族年金は非課税となり、牧子さんが受け取る年金の手取り額は月16万円程度。やはり年金だけで暮らしていける金額といえそうです。
ただ夫婦合計の年金額で老後の生活設計をしていると厄介です。牧子さんの場合、夫婦で手取り23万円の年金がもらえる……これを基本とし、賃貸マンションで暮らしていました。それが月16万円と月7万円の減額。もし、持ち家で住宅ローンがないのであればよかったのですが、賃貸暮らしだと家賃負担が重くのしかかるケースが多いのではないでしょうか。
――そうですね、二人暮らしで家賃月10万円のマンションを借りていたので……引越しを考えないとダメですね
ポツリつぶやく牧子さん。今後のことを考えると、不安で仕方なく、正敏さんを亡くして以来、2度目の号泣となったといいます。
家なし危機の解決策「息子家族との同居」をお願いしたが
株式会社R65『高齢者向け賃貸に関する実態調査』によると、高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーが約4割。一方で、「積極的に受け入れている」賃貸オーナーは2割未満です。また調査では、不動産会社の4社に1社が、高齢者の入居可能な賃貸住宅がゼロだということも明らかになっています。つまり賃貸暮らしの高齢者は、将来「あなたには部屋を貸せません」という事態に直面する可能性が高いのです。
牧子さんも同様。「もう家賃が払えない!」と、部屋を更新するのをやめて引越しを決めたものの、「ちょっと年金で暮らしている人は……」「働いていない高齢の方は……」などと、断られ続けているといいます。
――年齢を重ねた専業主婦には部屋は貸してくれないの?
不動産会社からやんわりと断られた帰り道、トボトボ歩く牧子さん。「このままだと家なしだわ……」と危機感ばかりが募ります。そこで泣きついたのはひとり息子。実は息子の妻である義娘とはあまり折り合いがよくなく、距離を置いていました。しかし背に腹は代えられません。
一時的にでも同居できないかお願いしたところ、もちろん息子はOK。しかし、その話をきっかけに大喧嘩になったとか。
――いやよ、お義母さんと同居なんて
――そもそも、こんな狭い家に、お義母さんが住めるところなんてないでしょ
※息子夫婦は6人家族、3LDKのマンション住まい
――なんであなたはお義母さんにそんなに甘い顔をするのよ。初めから無理なら無理と断ってよ
夫婦始まって以来の修羅場だったというから、穏やかな話ではありません。牧子さんもこれ以上、無理強いは難しいと感じました。
株式会社AlbaLinkが行った『親との同居に関する意識調査』によると、親と同居するメリットとして「金銭面で楽になる」が圧倒的トップになったものの、一方でデメリットとしては「気を遣って自由に過ごせない」「干渉・管理される」「ケンカが増えそう」などの理由が拮抗するカタチであがりました。それだけ親との同居に対しては、懸念事項が多いということの裏返しでしょう。
いまのところ、牧子さんの住まい問題は解決していないといいます。
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