私は毎日必死にポイ活してるのに…妻も恨み節で離婚の危機!〈ジリ貧〉コンサル50歳男性、年金機構から届いた「派手な封筒」の中身に戦慄したワケ【社労士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月19日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
自営業を営む田中さん(仮名)は、事業を立て直すための資金繰りから、国民年金保険料の未納が続いていました。ある日奥さんが見つけた赤色の封筒に書かれていたのは「財産差押え」の文字。国民年金保険料を滞納した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、田中さんの事例をもとに解説します。
国民年金保険料が後回しに…
自営業を営む50歳の田中さん(仮名)は、40代半ばで独立しITコンサル業を営んでいます。独立当初は順調なスタートを切ったものの最近はライバルが多く、案件獲得のためにコンサル費用を下げざるを得ない場面も増えました。ここ数年は経費のやりくりにも苦労しています。
そんな中、毎月の国民年金保険料の支払いが徐々に後回しに。田中さんは、「今は支払いがきついけど、いつかまとめて払えばいいだろう」と軽く考えていました。妻にも内緒にしていました。
しかし、日本年金機構からは何度も田中さんのもとに封筒が届きます。妻は田中さんに問い詰めますが、田中さんは適当にあしらってました。そうしているうちに「派手な封筒」が届きます。妻は胸騒ぎを覚え、田中さんには何も言わずに封筒を開けてみると、田中さんが国民年金の保険料を滞納していることが分かりました。
さらに、「財産の差押え準備に入る」旨も書かれています。妻は慌ててネットで情報を集めてみると、思いがけない事態が起こる可能性が……。
思いがけない事態①:延滞金が請求される可能性
国民年金の未納が続くと延滞金が発生します。延滞金は、督促状で指定した期限より後に国民年金保険料を納付したときに発生しますが、延滞金の発生は、「督促状で指定した期限」からではなく、「本来の国民年金保険料の納付期限の翌日」からとなります。
未納期間が長引けば長引くほど、この延滞金がかさんでいきます。田中さんの場合、2年間近く滞納している保険料と合わせて40万円を超える金額となりそうです。
思いがけない事態②:財産差押えの危機
最も深刻だったのは、「財産差押え」についてです。奥さんは最初、「ただの脅しかもしれない」と思ったものの、詳しく調べてみると滞納が続けば実際に財産が差押さえられるケースがあることを知り、焦り始めました。
思いがけない事態③:老後の生活設計に狂いが生じる恐れ
未納期間があると田中さんの年金受給額にも影響が出ます。国民年金は老後の生活を支える重要な収入源ですが、未納期間が長いと、その分受給額が減少するのです。
夫婦2人の年金が老後の貴重な生活資金です。田中さんの年金が減ると世帯ベースでの老後の生活設計に狂いが生じます。
保険会社に勤める妻は普段からポイ活に熱心で、お金に関してはかなり細かい性格です。あまりのショックから、「私は必死にポイ活しているのに。このままでは離婚する」とまで言い出しました。田中さんは困ってしまい社労士に相談しました。
保険料の滞納が続くと財産差押さえも現実的に
社労士は年金保険料の滞納から財産差押さえに至る流れを説明しました。
国民年金保険料が翌月末までの納付期限までに納付されない場合、まずは納付勧奨があります。それを無視していると年金特別催告状が複数回にわたって届きます。特別督促状は、送られるたびに封筒の色が「青」「黄」「赤(ピンク)」と変わっていきます。
奥さんが見たのは派手な赤色の封筒でした。赤色の封筒は、特別催告状がすでに何度も送られ、差押えに近い状態であることを示します。ただし、年金特別催告状はあくまで納付督励の段階であり、自主的な国民年金保険料の納付を促すものとなります。
そして、その後に届く最終催告状まで無視すると督促状が送られてきます。督促状は強制徴収の最初の段階に届くものです。督促状には指定期限までに滞納を解消しなければ延滞金を加算する旨が記載されており、それでも保険料が納付されない場合には差押予告通知書が届き、財産の差押えが行われます。
令和6年度の国民年金保険料額は1ヵ月あたり16,980円。決して安い金額ではありません。保険料は被保険者本人が納めなければならないことは当然です。しかし、法律上、配偶者にも納付義務が課せられています。
(保険料の納付義務) 国民年金法第88条 被保険者は、保険料を納付しなければならない。 2世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。 3配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。奥さんはネットで調べて配偶者である自分にも保険料の納付義務があることを知ります。日本年金機構のサイトには配偶者の財産も差押えの対象になるとも書かれており、お金に対する意識が高い奥さんは驚きのあまり、思わず「離婚する」とまで言い出したのでした。
国民年金保険料を滞納し続けるリスクとは
そして、社労士は田中さんに国民年金保険料を滞納し続けるリスクを説明しました。
①財産差押さえリスク
年金保険料の滞納による差押さえが実行されると、預貯金や不動産、自家用車など、さまざまな財産が差押さえられます。日常生活に影響が出ることはもちろん、事業運営にも影響を与える恐れがあります。
銀行口座を差押さえられてしまえば取引先への支払いもできません。重大な信用問題を引き起こしてしまいます。
②年金受給権を失うリスク
公的年金は社会保険制度です。将来、保険給付である老齢年金を受給するには保険料を納めなければなりません。よって、保険料を滞納すると年金を受け取るための資格を得ることができない恐れがあります。
老齢年金を受給するには、国民年金や厚生年金への加入期間が合計で10年間必要です。年金受給権そのものが得られなければ老後の生活はかなり厳しくなるでしょう。田中さんは学生時代にも未納期間があるようですから、念のため、これまでの年金加入記録を確認することを勧めました。
まだまだある…滞納のリスク
③年金減額のリスク
もし年金受給権が得られたとしても、未納期間に応じ年金額が減ってしまいます。令和6年度の老齢基礎年金額は、満額でも月額68,000円です。未納期間が長ければ長いほど、この額が減額されます。
国民年金の保険料納付期間は20歳から60歳までの40年間です。仮に10年間の未納期間があると年金額は4分の3に、20年間の未納期間があると年金額は半分になります。
令和6年度の老齢基礎年金額は816,000円(月額68,000円)なので、10年間の未納で612,000円(月額51,000円)、20年間の未納で408,000円(月額34,000円)となる計算です。
自営業で定年がないとはいえ、いつまでも元気に働けるとは限りません。老後生活に困窮しないよう、老後に受け取れる年金は1円でも多いほうがよいでしょう。社労士は付加年金や任意加入制度などを説明しました。余裕があれば国民年金基金や小規模企業共済への加入も考えたいものです。
④障害年金をもらえないリスク
公的年金は、老後に備えるためだけの制度ではありません。普段はあまり意識することがないでしょうが、障害に備えた保険でもあるのです。
もちろん、障害年金にも保険料納付要件があります。障害基礎年金を受給するには、初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間等が3分の2以上あることが必要です。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
「初診日の前日」で判定するのは、初診日に慌てて保険料を納めてもダメだということです。せめて直近1年間でも保険料の未納が無ければ特例として保険料納付要件を満たすとされますが、保険料を納めていなかったにも関わらず、障害年金をもらおうとして初診日に保険料を納めた場合まではさすがに救わないということです。
保険料を滞納することのリスクは老齢になったときだけではなく、障害を負ったときにもあることに注意しましょう。
⑤遺族年金をもらえないリスク
今回の田中さんの場合には当てはまりませんが、公的年金は死亡リスクにも備えた保険です。
遺族年金にも保険料納付要件があり、遺族が遺族基礎年金を受給するには、死亡日の前日において、保険料納付済期間等が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
年金保険料の未納についてあまりに軽く考えていた田中さん。社労士の説明を聞き、様々なリスクがあることを痛感しました。
そして何より、今後の生活を考えるうえで、お金以上に大切なのが妻の存在です。ひとりで過ごす老後など想像できません。年金を払わないことで妻を失う危機に陥るとは思ってもみませんでした。田中さんは何とかやりくりをしてお金を集め、急いで未納分を納めました。
角村 俊一 角村FP社労士事務所代表・CFP
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