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激化する南シナ海問題「フィリピン経済」における「中国のプレゼンス」は縮小

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月21日 7時15分

激化する南シナ海問題「フィリピン経済」における「中国のプレゼンス」は縮小

写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、現状、フィリピン経済が先進国経済や中国経済にどのくらい依存しているのか、解説していきます。

「フィリピン」と「中国」の最新・関係値

野村総合研究所によると、フィリピンはアジア地域で中国経済への依存が最も低いため、中国の景気刺激策による影響が限定的であるとしています。

アジアの経済見通しに関するさまざまな不確実性、たとえば米国の経済力、米国の選挙、FRBの利下げのスピード、地政学的緊張のなかで、中国経済の景気刺激策が新たな要因として加わりました。

野村総合研究所の「エクスポージャー・スコアカード」によると、フィリピンは中国経済への最小のエクスポージャーを持ち、そのスコアは19です。このスコアカードは、輸出、コモディティ、投資、金融市場に対する影響を評価しています。他の国と比較すると、インドが35、日本が54、インドネシアが79、韓国が85、タイが108、香港が117、シンガポールが179。一方、オーストラリアは中国へのエクスポージャーが最も大きく、スコアは190となっています。

フィリピンが中国経済へのエクスポージャーが低い理由は、近年、地政学的緊張が中国からの外国直接投資(FDI)の流入を制限し、サプライチェーンの再編がフィリピンに恩恵をもたらしていることが指摘されています。

フィリピンと中国の関係は、特に南シナ海における緊張により、過去1年で悪化しています。中国は、フィリピンが領有権を主張するために第二トーマス礁に意図的に座礁させた旧日本軍の船に駐屯しているフィリピン兵への補給任務を妨害し続けています。

スコアカードは、シンガポールが中国の成長見通しから最も影響を受けやすいとする一方で、インドネシア銀行とフィリピン中央銀行はすでに利下げサイクルを開始しており、外国為替の安定に影響を与える要因(FRBの動向や地政学的リスク)が中国の成長見通しよりも重要だと指摘しています。

また野村総合研究所は、この数年で中国とアジアの関係が弱まったと指摘しています。中国は依然として重要ではあるものの、アジアへの波及効果は過去10年で弱くなっています。これは、アジアの対中国輸出の減少が原因です。また中国からアジアへの観光客数も減少しています。

2023年9月24日以降、中国は金融政策の緩和と株式市場への流動性支援を発表しています。経済活動を促進するために債務を大幅に増加させることを約束していますが、具体的な規模やタイミングについては明らかにしていません。

中国の景気刺激策がアジア全体にインフレ圧力をもたらすかどうかについて、野村総合研究所は必ずしもそうではないと指摘しています。中国の景気刺激策は通常、アジアにとってインフレ要因と見なされます。しかし、もし中国の景気刺激策が供給側、特に製造業向けのインセンティブや融資支援に向けられる場合、既存の過剰供給問題を長期的に悪化させる可能性があるとしています。

中国の景気刺激策がアジアの輸出に与える影響は、主に中国の不動産建設投資と中国国内の消費に依存しています。中国の不動産投資が刺激されると、アジアの輸出回復が広がり、コモディティ価格が上昇する可能性があるでしょう。中国の現行の景気刺激策が持続的な経済回復につながるかどうかは不明ですが、市場や通貨への影響を注視する必要があります。

AMROが指摘した「フィリピン経済の泣き所」

ASEAN+3マクロ経済研究所(AMRO)の最新の報告書では、フィリピンが先進国市場の経済ショックに対して特に脆弱であることが強調されています。

この報告書は、フィリピンを含むASEAN+3地域の金融機関や市場がますます相互に関連し合っており、グローバルな要因からの影響を受けやすくなっていると分析しているものです。フィリピンの金融市場においては、特に米国、英国、ヨーロッパの株式市場からのショックに敏感であり、これが地域の金融システム全体に波及する可能性があると警告しています。

フィリピン経済はサービス主導の構造を持ちながら、過去数年はCOVID-19パンデミックによる大きな衝撃からの回復力を示してきました。しかし、インフラの不足が経済成長の足かせとなっており、再生可能エネルギーやビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)、観光などの分野への投資を最大限に活用することが求められています。

また、AMROはASEAN+3地域がアメリカドルに強く依存している点を指摘し、これが資金調達のリスクやショックを引き起こす可能性があると警告しています。

米国の金利政策や地政学的な緊張は、ASEAN+3諸国に対して直接的な影響を及ぼす要因であり、特に、米国の金利が上昇する局面では、資金流入が減少し、これが地域経済に負の影響をもたらします。

不動産セクターに関しても注意が必要です。需要の低下や厳しい金融条件が開発業者の財務状態に悪影響を及ぼしており、フィリピンを含むいくつかのASEAN諸国では在庫過剰やプロジェクトの遅延といった問題が発生しています。これにより、金融機関の健全性が損なわれる恐れがあるのです。

現在の経済成長とインフレ緩和の流れを活用し、債務の削減や政策の再構築を行うこと、さらには外国為替準備金を補充し、資本流入がある時期に市場の信頼を高めることが重要とされています。

AMROは、この先、短期的にはインフレの再発、地政学的緊張の高まり、グローバルな成長の鈍化といったリスクに警戒し続ける必要があるとしています。地域の経済が相互に影響し合うなかで、国際的な波及効果を監視し、ASEAN+3に特化した監視や協力を強化することが求められています。

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