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アパート経営における「火災保険」…“一括払い”と“年払い”、課税額の差【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月16日 19時15分

アパート経営における「火災保険」…“一括払い”と“年払い”、課税額の差【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産経営に必須な火災保険。総合的な支出を考慮し、保険料を抑えて保険加入するには一括払いと年払い、どちらのほうが有利となるのでしょうか? 今回は、中古アパート経営における火災保険の税金について、税理士の宮路幸人氏が解説します。

中古アパ-ト投資における火災保険の加入時の税金

不動産賃貸業において物件を購入した際には、火災保険に加入することとなります。中古アパ-ト投資においても当然加入します。

火災保険料の払い込み方法には、契約期間中の保険料を最初にまとめて支払う「一括払い」と、1年ごとに支払う「年払い」があります。一般的に、長期契約のほうが単年よりも保険料が安くなるため、保険料の総額は、年払いよりも一括払いのほうが安くなります。

2015年までは36年の長期契約で火災保険に加入することもできましたが、2022年10月以降は最長で5年分までの契約と、大きく短縮されました。

これは日本で自然災害が多く発生するため、保険会社の支払いが増え、保険収支が悪化したことが改正の理由といわれています。

「5年一括払い」と「年払い」を比較

では、5年一括払いで支払った場合と、年払いした場合では、課税額にどのくらいの違いがでるのでしょうか?

保険料は建物の構造と地域、また、地震保険に入るかどうかでも大きく異なりますが、一例として、とあるアパ-トの保険契約(T構造の場合)で考えてみます。

1年契約の場合27万2,000円、5年一括払いの場合1年あたりの保険料は23万9,200円。つまり1年あたり3万2,800円安く、5年合計の総支払額では、16万4,000円安くすることが可能になります。

火災保険料を5年分一括で支払ったとした場合、会計処理は以下のとおりです。

1.支払った保険料の総額を資産の「前払い費用」に計上する

2.決算整理の際に当年分に対応する期間分だけを「保険料」として必要経費に計上する

3.翌年以降も毎年期間対応分を経費化していく

会計処理で、毎年その分の保険料を必要経費としていくということになります。支払った金額が支払った年に必要経費になるわけではないため、ご注意ください。

中古アパ-ト投資における火災保険の受取時の税金

個人経営で不動産賃貸業を営んでいる場合、火災保険で受け取った保険金は基本的に非課税となります。これは、火災保険は火災や自然災害などで受けた損害を穴埋めするものであるため、保険金の受け取りによって利益は生じないとの考えによるものです。

たとえば、建物が全損して火災保険で3,000万円を受け取り、建て直すのに2,500万円しか使わなかったとしても残りの500万円は課税対象となりません。

所得税法第9条において「保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により加えられた損害に起因して取得するもの」は非課税、と定められているのです。

また、大規模な災害などの場合、公的な支援金や義援金を受け取ることもありますが、これらについても非課税となります。

ただし、同じ火災保険の保険金でも課税対象となる保険金もあります。事業者の店舗や商品が火災で焼失した場合に焼失したものの損害保険金は課税対象となるのです。

そのほかにも休業中の利益を補填するような保険金も課税対象となります。また、休業補償金や事業の経費を補填する意味合いの保険金を受け取った際は、収入として計上が必要となります。

解約返戻金があるタイプの火災保険の税金

火災保険は掛け捨てのものが一般的ですが、積立タイプの火災保険もあります。積立型の火災保険は満期がくると満期返戻金が支払われます。満期返戻金は一時所得として所得税の課税対象となります。

一方、法人で保険金を受け取った場合は、すべて事業の収入として計上しなければなりません。そのため、法人税の対象となります。

もし受け取った保険金で代替資産を購入した場合には、取得した設備について圧縮記帳という処理によって、固定資産の取得額を減額して収益と相殺し、取得年度の税負担を軽減する方法があります。

火災保険を一括払いで支払った場合において、保険契約等の見直しなどにより、途中解約した場合は解約返戻金として火災保険の残りの保険期間に応じて保険料が契約者に返還されることとなります。

しかし、原則として残りの保険期間分の保険料がすべて返還されるとは限りません。計算方法は保険会社により異なりますが、多くの場合、解約返戻金は残りの保険期間分の保険料より少ない金額で支払われます。

また、なかには解約返戻金がない商品もありますし、残りの契約金が短い場合でも解約返戻金がない商品があります。その場合は解約せず満期まで契約を続けたほうがよいこととなりますので、途中解約するには注意したほうがよいでしょう。

アパート経営における火災保険

アパ-ト経営には必ず必要となる火災保険の税金について確認してきました。

一括払いは保険料が安くなるメリットがある一方、一度契約してしまうと契約期間中は契約を見直す機会がないことや、解約した場合は減額されて返金されるなどのデメリットもあります。

火災保険に加入時には一括払いのメリット、デメリットについてよく検討することをお勧めします。

近ごろは台風や雹等の自然災害も多く発生しています。なかには、保険対象となる事故が起こっているものの、契約者が補償の対象と気が付かず、請求されない保険も多くあると聞きます。保険会社は請求されないと対応しませんので、具体的にどのような場合に保険金を受け取れるか確認してみましょう。

宮路 幸人

宮路幸人税理士事務所

税理士/CFP

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