さっさと年賀状さばいてこいよ!…トラウマ抱えた年金月17万円の68歳独身・元郵便局長「退職金2,000万円」で定年も、現役時代の悪夢が「老後破産」を招いたワケ【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月27日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
働いているあいだは当然いいことばかりではありません。いいことも悪いこともたくさん経験するでしょう。しかし、トラウマ級につらい経験をすると、退職後までひきずる人も少なくないようです。ひどい場合、それが老後の生活に甚大な影響をおよぼして……。本記事では、Aさんの事例とともに、老後のマネープランについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
気ままなおひとりさまのはずが…現役時代に貯金できなかったワケ
Aさんは郵便局員として38年勤め、現在68歳。60歳で定年退職後、嘱託職員として65歳まで郵便局で働いてきました。65歳から年金は月17万円ほど受け取っており、長年勤め上げたことから、贅沢をしなければ、日常生活はなんとか過ごせる程度の収入があります。
貯金は退職金2,000万円と合わせて、3,000万円ほど。おひとりさまのAさんなら、貯金がもう少しありそうですが、コツコツと貯金してはいたものの貯められない事情がありました。
郵便局員時代の厳しい「ノルマ」
郵便局では、郵便・貯金・保険・ギフトなどを取り扱っています。なかでも郵便は、皆さんも一度とはいわず、「年賀状」を出したことがあるでしょう。一昔前では、離れた親戚や友人に挨拶というと、郵便が主流でした。年賀状は一年の挨拶をするために多くの枚数を送っていたことでしょう。
Aさんの郵便局では、年賀状をある一定枚数を販売しなければならない「ノルマ」が課せられていました。親類や友人を中心に年賀状を購入してもらおうと営業していましたが、毎年、ノルマが達成できず、残った枚数分を自身で購入することが慣例となっていました。当時の上司からは、「さっさと年賀状さばいてこいよ!」と怒号が浴びせられることも日常茶飯時。
さらに、お中元、お歳暮などの時期を中心に「商品のノルマ」も。その都度、近しい人に購入等をお願いし、目標未達成にならないよう自身でも商品を購入し、お世話になった人へ贈っていました。
保険も同様に、お客様にお勧めする一方、自身でも加入し目標を達成させます。公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査※」によると、なんらかの保険に加入している世帯は89.8%、年間払込保険料は37万1,000円となっています。つまり、月約3万1,000円の保険料を支払っていることになります。
単身世帯のAさんは、2人以上世帯に比べると、一般的に毎月の保険料は少なくてすみそうですが、Aさん自身でも目標額達成のため、少しずつ加入内容を充実させていった結果、月合計7万円の保険料を支払い、親戚や友人にも保険商品を勧めてきました。
ノルマを未達成にせず、やりきった功績が評価されたこともあり、50歳目前で郵便局長に。しかし、定年を迎えるまでは、郵便やカタログ販売・保険等で局内の目標を達成できるよう努力してきました。
そしてやっとやってきた定年。「ノルマの悩みがなくなる……」Aさんは肩の荷が下りた思いがしました。
定年を迎えても断ち切れない
郵便で考えてみましょう。時は流れ現在では、携帯電話、SNSをはじめ、インターネットが普及すると、自由にスタンプ等を使いながら、気軽に挨拶ができるようになりました。年賀状を出す人や購入枚数が減少する人が増えることでしょう。
購入をお願いするのは至難の業であったため、Aさんは自身で購入したカタログ商品をお礼に贈ることをしていたのです。そのため、定年後も大量に年賀状を購入、カタログギフトを買い続けます。定年退職したからといって突然やめることは、できなかったのです。長い期間、身内や友人等に、頭を下げて購入をお願いし、ときには保険に加入した人にAさんが購入したものをお礼に差し上げてきたのです。
Aさんが体験したような、ノルマに届かない場合に商品を自腹で購入する営業方法が問題となり、2018年末以降に日本郵便もノルマを廃止しています。Aさんが勤めていた郵便局でもノルマは廃止されましたが、近隣の郵便局と売上争いなどにより、現局長から叱責され、局長時代の部下が困った様子で相談してくると、ついつい助けてしまうのです。
「やめよう、やめよう」と思っても…
何度となく、もうやめようと考えました。しかし、まわりの人から、「毎年楽しみにしていたのに、今年はまだいただいてない」「いままで協力してきたのに」といわれると、ノルマをクリアしなければならないということもなくなったのに、購入をやめることができませんでした。「ノルマがいまだに追いかけてくる……」とAさんは嘆きます。
大人しい性格のAさんは、定年を機にきっぱりとお付き合いをやめるということができずに購入を続け、わずか3年あまりで資産の大半を失ってしまいます。もう必要以上に購入することもないはずのAさんですが、やめることができない苦悩は、年金受給後も続いているのです。現役時代はノルマが心配で眠れなかったそうですが、貯金が日に日に減る現在はこのままでは老後破産だ、という悪夢をみて眠れない日もあるそうです。
当然、現役時代と老後は同じ支出を保てない
一度贈り物をはじめると、止めることができなくなってしまったAさん。現役時代の収支と老後では大きく異なることをしっかりと実感すべきでしょう。自分の持っているお金以上のことはできません。現役時代は足りない分があれば、働くことで賄えていたかもしれません。しかし、老後になってからの収入増は年齢的にも見込みは立ちづらいでしょう。資産運用などで収入を増やす手もありますが、まずは目前の問題の根本原因を解決すべきです。
お願いした経緯があったとしても、理由をきちんと伝えれば、わかってもらえるはずです。Aさんが勇気を出して、一歩を踏み出してほしいと願うばかりです。
<参考>
※2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表
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