お前、正気か?〈年金月18万円〉〈貯蓄2,000万円〉の67歳定年サラリーマン、安泰の老後を一気に崩壊させた、大企業で働く「39歳息子のひと言」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月22日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
5年ほど前に世間を騒がせた「老後資金2,000万円不足問題」の影響からか、老後を見据えて「2,000万円の貯蓄」がひとつの目標になっています。しかし、2,000万円の蓄えがあるからといって、老後が安泰かといえば、そんなことはなさそうです。
自宅をバリアフリーにリフォーム…それでも「貯蓄2,000万円」の老後は安泰
老後の生活設計について話をしてくれた井上浩一さん(仮名・67歳)。65歳で完全に引退をしたという現在、年金は月18.5万円。同い年の妻・由美子さん(仮名)の年金が月10万円ほどで、合わせて28.5万円。手取りにすると月24.5万円ほどが生活のベースになるといいます。
退職金で住宅ローンを完済し、さらにバリアフリーのリフォームを行い、もう20年は快適に暮らすことができそうだといいます。
――老後2,000万円不足問題とか騒がれたじゃないですか。だからリフォームなどしても、最終的に2,000万円の貯蓄が残るように頑張りました
老後2,000万円不足問題。2019年にセンセーショナルに報じられた話題はインパクトが強く、老後のための貯蓄として「夫婦で2,000万円」がひとつの基準になっています。
ちなみに、この際にベースになったのは、総務省による2017年の『家計調査 家計収支編』。ここで65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な家計収支が月24万3,838円で、それに対し税金や社会保険料などを除いた可処分所得が18万0,421円。月5万円ほどが足りないという結果から、老後30年と考えると約2,000万円足りないという報告がされ、その結果だけがひとり歩きしてしまいました。
2023年の最新調査結果でみてみると、1ヵ月の支出は25万0,959円に対し、可処分所得は21万3,042円。1ヵ月3万7,916円が不足するという計算で、老後30年だと1,300万円ほどが不足するという計算です。
いずれにせよ、老後、安心して住むことのできる住まいがあるうえで、貯蓄が2,000万円ある井上さん夫婦のこれからは、安泰といっても過言ではないようです。
ひとりで実家にやってきた「39歳長男」が突然、親に土下座して…
そんな万全の生活設計をしていた井上さんですが、思わぬ事態で安泰の老後が一気に崩壊したといいます。その原因をつくったのが、長男の翔太さん(仮名・39歳)。有名企業に勤務し、来春には第1子が小学校に入学予定。井上さん以上に順調に人生を歩んでいる、そう見えていたのですが……
ある日、翔太さんがわざわざひとりで井上さんの自宅に訪れたかと思ったら、「お金を援助してくれ」と土下座。突然の展開に何が何だかわからない井上さん夫婦。「奥さんに内緒で借金でも作ったのか」など、いろいろと考えてみたといいますが、
・マンションを買うことになったが、どうしても頭金が1,000万円ほど足りない
・住宅ローン審査はすでに通っている
・家族も新しい家に住めるとテンションが上がっている。いまさらお金が足りないとはいえない
という話でした。「変なところで借金をしたのではなくてよかった」と思いましたが、1,000万円を貸してほしいではなく、援助してほしいという話。つまり井上さんの老後資金が2,000万円から1,000万円に半減してしまうという話なので、すぐに首を縦に振るわけにはいきません。
――そのマンション、いくらするんだ
――1億円ほど
――おっ、おっ、お前、正気か? そんな高いマンションを買うなんて
――それくらい出さないと、いまどき、東京でマンションなんて買えないよ
不動産経済研究所によると、2023年に発売された新築マンションの1戸あたりの平均価格は1億1,483万円と初めて1億円の大台を突破しました。高額物件が多数販売され、平均値を押し上げたという一面もありますが、地価のほか、資材や建築費の高騰により、全国的にマイホームの値段は上昇の一途。今や少々無理でもしないと東京で家を持つことは不可能で、1億円を超える物件であっても、たとえば夫婦ペアローンを利用して購入するというケースも当たり前になっています。
親の援助で住宅購入の場合の非課税措置とは
親に住宅資金を援助してもらうなら、気にしておきたいのは税金のこと。無制限に援助してもらうと贈与税がかかります。贈与税を払うのは受贈者=財産をもらった人です。目安は1,000万円。
親や祖父母などから住宅購入や増改築のための資金援助があっても、一定額まで贈与税が非課税となる制度が「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」。上限額は省エネ・耐震性・バリアフリーの住宅であれば1,000万円、その他の場合は500万円となっています。贈与を考えているなら、特例を活用する要件を細かくチェックしておきたいもの。
また贈与税そのものの基礎控除を利用してプラス110万円、さらに「相続時精算課税制度」も利用すれば、実際の非課税枠は3,500万円以上となります。将来、不利なことが生じないよう、活用の際にはお金のプロに相談をしたほうが安心です。
どちらにせよ、1,000万円の援助を頼まれた井上さん。断ればマンション購入は断念するしかありません。もう大人になった息子はさておき、ただただ可愛い、孫を落胆させてしまう……そう考えると、承諾するしかなかったといいます。
老後資金が一気に1,000万円も減ってしまう井上さん。懸念はさらに。井上さんには長男のほか、次男もいます。まだ新婚で夫婦水入らずの生活を送っていますが、いずれ家族が増えれば「そろそろマイホームを」という話になるでしょう。そのとき、長男には1,000万円の資金援助をしたのに、次男にしないわけにはいかない……老後資金は一気にゼロとなり、不安定さはさらに増します。
――2,000万円あれば、老後は安泰だと思ったんですけど
昨今の不動産価格上昇が、思わぬ形で影を落とす形になりました。
[参考資料]
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