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相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月10日 14時45分

相続税の申告期限は10ヵ月だが…「8,200万円はすべて長男へ」と遺言が。不満を持った二男が「遺留分請求」→驚愕の結果【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

遺留分を侵害されたら、遺留分侵害額請求をして侵害された遺留分相当の金銭を受け取ることができます。遺留分を受け取った場合、相続税はどうなるのでしょうか? また、相続税の申告期限を過ぎてから遺留分を受け取った場合は、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、遺留分と相続税について、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺留分の基本

はじめに、遺留分の基本について解説します。

「遺留分」とは?

遺留分とは、その相続の対象である故人(「被相続人」といいます)の配偶者や子どもなど一部の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。遺留分を侵害する内容の遺言書や生前贈与であるからといって、これが無効となるわけではありません。

しかし、遺留分を侵害された者は、遺言書や生前贈与で財産を多く受け取った者に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう請求することです。

なお、以前は請求者が目的物の一部を取り戻すことになる物権的請求権とされていましたが、2019年7月に施行された改正民法により、現在は金銭での請求へと性質が変わっています。

遺留分がある人

遺留分があるのは、次の相続人です。

・被相続人の法律上の配偶者

・第1順位の相続人:被相続人の子ども。子どもが被相続人の死亡以前に死亡するなどして相続権を失った場合は、その子どもの子ども(被相続人の孫。代襲相続)。代襲者である孫が同様に相続権を失った場合は、孫の子どもも相続人となり得ます(再代襲)。

・第2順位の相続人:被相続人の父母。父母がいずれも死亡している場合は、存命の祖父母

遺留分がない人

遺留分の権利は、相続人であることを前提としています。そのため、そもそも相続人でない人に遺留分はありません。また、第3順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹や甥姪)は、相続人となる場合であっても遺留分はありません。

遺留分割合

遺留分割合は、原則として2分の1です。これに法定相続分を乗じて、個々の遺留分割合を計算します。たとえば、配偶者と長男、長女の3名が相続人である場合、それぞれの遺留分割合は次のとおりです。

・配偶者:2分の1(全体の遺留分割合)×2分の1(法定相続分)=4分の1

・長男:2分の1(全体の遺留分割合)×4分の1(法定相続分)=8分の1

・長女:2分の1(全体の遺留分割合)×4分の1(法定相続分)=8分の1

ただし、第2順位の相続人だけが相続人となる場合は、遺留分割合が例外的に3分の1となります。

遺言書で遺留分を侵害されると…

遺言書で遺留分を侵害された場合どうなるのでしょうか? 先ほど解説したものと重複する部分もありますが、改めて解説します。

遺留分を侵害する遺言書も有効である

遺留分を侵害したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。遺留分を侵害する内容の遺言書であっても有効です。

たとえば、相続人が長女と長男である場合、「長女に全財産を相続させる」という内容の遺言書は長男の遺留分を侵害しています。しかし、それでもこの遺言書は有効であり、長女はこの遺言書を使って遺産である不動産を自身の名義に変えたり、被相続人の預貯金口座を解約したりすることができます。

遺留分侵害額請求の対象となる

遺留分を侵害する内容の遺言は、遺留分侵害額請求の対象となります。遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう請求することです。先ほど挙げた例の場合には、遺留分を侵害された長男は遺産を多く受け取った長女に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。この請求をされたら、長女は長男に対して、遺留分侵害額相当の金銭を実際に払わなければなりません。ただし、交渉などによって分割払いとすることはできます。

なお、遺留分侵害額請求をするかどうかは、遺留分権利者の自由です。長男が遺留分侵害額請求をしなければ、長女は遺留分相当額を長男に支払う必要はありません。実際に、遺留分権利者が遺言の内容に納得している場合や相続人間で良好な関係を維持したいと考えている場合、遺留分侵害額請求をしないことも有力な選択肢となります。

相続税の基本

遺留分と相続税について解説をする前に、相続税の概要について解説します。

「相続税」とは?

相続税とは、遺産に対してかかる税金です。もう少し厳密にいうと、次の式で計算される「課税価格の合計額」が相続税の対象となります。

課税価格の合計額=遺産総額+死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産(一定の非課税枠あり)+被相続人が過去にした一定の贈与財産の価額-債務と葬式費用

相続税は、「土地にいくら、預貯金にいくら」と個別で計算するのではなく、この「課税価格の合計額」を基礎として計算します。

相続税がかかるケース

相続税がかかるのは、先ほど解説した「課税価格の合計額」が基礎控除額を超える場合です。相続税の基礎控除額は、次の式で算定します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

課税価格の合計額からこの基礎控除額を控除した残りをベースに、相続税が計算されます。

なお、課税価格の合計額を基礎控除額が超える場合であっても、特例の適用などを受けることで結果的に相続税がゼロとなることはあります。相続税を自分で正確に計算することは容易ではないため、相続税がかかりそうな場合は税理士へご相談ください。

相続税がかからないケース

課税価格の合計額が「相続税の基礎控除額」を下回る場合は、相続税はかかりません。ただし、課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を下回るかどうかを正しく判断するには、遺産を正確に評価する必要があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家へご相談ください。

相続税の計算方法

相続税の計算の流れと概要は次のとおりです。ここでは、次の例を使って解説します。

・法定相続人:長男、二男の2名

・課税価格の合計額:8,200万円

・遺言書で長男が全財産を相続した

・その他特記事項なし

課税価格の合計額を計算する

はじめに、各遺産などの評価額を合計して、課税価格の合計額を計算します。

なお、一定の要件を満たすことで土地を最大8割減で評価できる「小規模宅地等の特例」を適用する場合は、この段階で適用します。ただし、相続税の申告が必要かどうかを判定する際は、特例の適用がないものとして判定しなければなりません。ここでは、すでに「8,200万円」として計算結果が出ているものとします。

相続税の基礎控除額を計算する

次に、先ほど解説した相続税の基礎控除額を計算します。例の場合は法定相続人が2名であるため、相続税の基礎控除額は次のとおりです。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×2名=4,200万円

課税遺産総額を計算する

次に、「課税価格の合計額」から基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。例の場合は、次のとおりです。

課税遺産総額=8,200万円(課税価格の合計額)-4,200万円(基礎控除額)=4,000万円

「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を計算する

次に、「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を計算します。この段階では、実際に誰がどれだけ遺産を受け取ったかどうかに関わらず、課税遺産総額に法定相続分を乗じた価額を算定します。例の場合は、次のとおりです。

・長男:4,000万円(課税遺産総額)×2分の1(法定相続分)=2,000万円

・二男:4,000万円(課税遺産総額)×2分の1(法定相続分)=2,000万円

相続税の総額を計算する

次に、「各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額」を速算表にあてはめて税額を算出します。

例の場合は、次のとおりです。

・長男:2,000万円×15%-50万円=250万円

・二男:2,000万円×15%-50万円=250万円

ただし、これはあくまでも計算過程で算出された税額であり、実際に長男が250万円、二男が250万円を納税するということではありません。そこでいったん、ここで算出された税額を合計します。

250万円+250万円=500万円

これが、この相続における相続税の総額となります。

各人の相続税額を計算する

最後に、算出した相続税の総額(500万円)を、実際に遺産を受け取った割合で按分します。例の場合には、長男が全財産を相続するため、この500万円はすべて長男が納税します。一方、二男が納付すべき税額はありません。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は、被相続人の死亡日)の翌日から10ヵ月以内です。10ヵ月と聞くと、余裕があると感じる人もいるでしょう。しかし、このあいだに遺産を洗い出して評価し、遺言書がない場合は遺産わけの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をまとめ、相続税を計算し、納税資金を準備する必要があり、実際にはさほど余裕があるものではありません。

そのため、特に相続税がかかりそうなケースでは、相続が起きたら早期に専門家へ相談し、準備を進めることをおすすめします。

遺留分侵害額請求した場合の相続税

遺留分侵害額請求をすると、各人が受け取る遺産額に変動が生じます。これに連動して、各人が納めるべき相続税にも変動が生じることとなります。なぜなら、先ほど解説したとおり、各人が納付すべき相続税額は、「相続税の総額」を受け取った遺産の割合で按分して決めるためです。ここでは、遺留分侵害額請求で遺留分侵害額が確定した時期ごとに、相続税に関して行うべき手続きを解説します。

なお、その相続における「課税価格の合計額」が基礎控除額を下回る場合は、相続税がかかりません。その場合は、遺留分侵害額請求をしても、相続税に関する手続きは不要です。

ただし、先ほども解説したように、課税価格の合計額が基礎控除額を下回るかどうか正確に判断することは容易ではないでしょう。そのため、無理に自分で判断しようとせず、早期に弁護士や税理士へご相談ください。

相続税申告の前に授受される遺留分侵害額が確定した場合

相続税を申告する前に遺留分侵害額が確定した場合は、遺留分侵害額請求の結果を踏まえた内容で相続税を申告します。なお、先ほど紹介したように、遺留分侵害額請求は金銭の請求であり、遺産そのものを取り戻すわけではありません。

ただし、相続税の計算上は、遺留分侵害額請求で受け取った金銭を相続などで取得した遺産と考え、税額を算定します。一方、遺留分を支払った側は、取得した遺産などの価額から支払った遺留分相当額の金銭を差し引いて取得額を算定します。

相続税申告をしてから授受される遺留分侵害額が確定した場合

相続税申告をしてから遺留分侵害額が確定した場合は、すでに行った相続税申告の内容に変更が生じます。つまり、遺留分を受け取った側は支払うべき税金を支払っていない一方で、遺留分を支払った側は相続税を多く払いすぎている状態となっています。そのため、この場合は当事者がそれぞれ次の対応を行います。

・遺留分を受け取った者:修正申告をして不足分の税額を支払う

・遺留分を支払った側:更正の請求をして払いすぎた税額の還付を受ける

これにより、相続税の過不足が調整されます。

遺留分侵害額請求がされたものの、申告期限までに具体的な侵害額が確定していない場合

相続税の申告期限までに遺留分侵害額請求がされていない場合や、遺留分侵害額請求がされたものの具体的な遺留分侵害額が定まっていない場合もあります。

この場合は、遺留分を考慮せず、申告期限までに相続税申告と納税を行います。「遺留分侵害額請求をされる可能性がある」ことや、「遺留分侵害額請求をされたものの具体的な金額の確定までに時間がかかる」ことなどを理由に、相続税の申告期限を伸長することはできないためです。

その後遺留分侵害額が確定したら、先ほど解説したように、修正申告と更正の請求を行います。

遺留分侵害額が確定していなくても申告期限は伸長されない

遺留分と相続税について解説しました。遺留分侵害額請求をして遺留分を受け取ったら、これが相続税の対象となります。また、すでに相続税の申告が済んでいる場合は、遺留分を受け取った側は「修正申告」、遺留分を支払った側は「更正の請求」を行いましょう。これらの手続きによって、納税額の過不足を調整します。

遺留分侵害額が確定していないことを理由に、相続税の申告期限が伸長されることはありません。このことには注意が必要です。

堅田 勇気

Authense法律事務所

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