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年金月22万円、貯金3,000万円で穏やかに暮らす60代夫婦が一転、老後破綻に脅える毎日へ。原因は離婚して実家に舞い戻った「35歳の甘ったれ娘」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月27日 7時15分

年金月22万円、貯金3,000万円で穏やかに暮らす60代夫婦が一転、老後破綻に脅える毎日へ。原因は離婚して実家に舞い戻った「35歳の甘ったれ娘」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

穏やかな年金生活が始まったと思った矢先、巣立ったはずの娘がまさかの帰還。我が子が困っているのなら、手を差しのべてやりたいと思うのが親心というものです。しかし、過度な援助がお互いにとって悲惨な結果をもたらすことも……。本記事では、離婚した一人娘とその孫と暮らすことになった小林清さんを例に、年金暮らしの60代後半夫婦とシングルマザーの娘の家計管理のポイントについて、南真理FPが解説します。

離婚した一人娘と孫が戻ってきたことで、平和な老後が一変

今、小林清さん(69歳)の頭を悩ませている問題があります。それは、1年前に離婚して帰ってきた一人娘のさおりさん(35歳)のことです。

さおりさんの離婚は、元夫の借金が理由でした。結婚当初は夫婦関係もうまくいっていたそうですが、ハードな仕事のストレス解消のためか、元夫は、休みの日は、寝るかパチンコに行く生活を繰り返すようになりました。

さおりさんは就業経験もほとんどなく、専業主婦で経済力がないため離婚は踏みとどまっていました。しかし、なんとパチンコに使うお金をこっそりキャッシングローンしていることが判明したのです。家庭を顧みず、借金までする元夫にとうとう耐え切れず、経済的な不安はあったものの離婚を決断しました。

1年前の離婚当初、一人娘と孫の圭太君(当時4歳)が、小林さんは不憫でならず、できる限りのことはしてやろうと迎い入れました。しかし、さおりさんは一向に働き始める様子もなく、食費や日用品費といった生活に必要なお金だけでなく、孫の幼稚園や習い事代、週末のレジャー代等々すべてを年金生活者である小林さんが支払うことになりました。

さらに家族が増えたことで、買い替えた車にかかった費用は約150万円。これも合わせると。娘と孫のために1年間で約300万円のお金を使ってしまったことになります。

「少しはあなたも働いて」と言っても、あれこれ言い訳をするだけで就職活動をする様子はなし。親にお金を払ってもらっても遠慮する様子はなく「娘は親に甘えて当たり前」という態度です。挙句の果てに、幼稚園のママ友に感化されて、中学校は私学へ進学させたいなどと言い出す始末……。最近では妻の美紀さん(67歳)との言い合いも絶えないそうです。

こんな生活を続けていては老後破綻待ったなしだ……限界を感じた小林さんは、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)に、今後どうすればいいのかを相談することにしました。

養育費の実情

さおりさんは、離婚時に元夫と養育費を月3万円支払うと取り決めをしたもののお金にだらしない元夫からの養育費の振込は滞っていると言います。

養育費は、離婚や別居した後に、親が子どもの生活費や教育費を負担するために支払うお金のことです。一般的には、子どもと一緒に暮らしていない親が、子どもを引き取って育てている親に対して支払います。『令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果』によると、離婚したときの養育費の取り決め状況は、「取り決めをしている」が、母子世帯では46.7%(*1) となっています。また、離婚した父親からの養育費の受給状況は「現在も受けている」が、28.1%(*2) です。このようにシングルマザーの多くは、養育費をもらっていないのが実情です。

養育費の取り決めは口約束ではなく書面化しておきましょう。書面は公正証書(公証役場で公証人に作成してもらう書面)で作成すれば、支払いがなされないときに給与や預金口座等の財産を差し押さえるといった強制執行が認められます。

娘さおりさんが経済的に自立するには?【FPの助言】

FPは、小林さん一家の生活を守るためにも、娘さおりさんの経済的自立が必要であると伝えます。

①家計現状の把握

まず、小林さん一家の家計状況を把握しましょう。

〈相談者プロフィール〉

夫 小林清さん(69歳):無職(元会社員)

妻 小林美紀さん(67歳):無職(専業主婦)

長女 小林さおりさん(35歳):無職

孫 小林圭太くん(5歳):幼稚園の年中

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〈家計の年間収入〉

年金合計額 約290万円(手取り年260万円、月22万円)

夫 清さん 年金:206万円

妻 美紀さん 年金:81万円

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〈家計の年間支出〉

年間支出合計:年445万円

生活費(食費・日用品費・光熱費・通信費等):年192万円

(子と孫にかかる生活費年100万円(※))

住居費(含む固定資産税):年10万円

保険料(医療保険):年6万円

車両費(保険代・ガソリン代):年22万円

車の買替費用(※):150万円

幼稚園代(※):年19万円

習い事代(※):年12万円

レジャー・旅行代(※):年34万円

(※)は、子と孫にかかった費用:合計約300万円  

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〈小林さん夫婦の貯蓄額〉

預貯金:2,800万円(同居する前は貯蓄額3,000万円)

車の買替費用150万円があったため、同居1年目の家計収支は約200万円の赤字です。来年以降も小林さん夫婦が子や孫にかかるすべての費用を含む家計の支出を負担するのであれば、小林さん83歳・妻美紀さん81歳時 までに、約1,100万円貯蓄の取り崩しをせざるを得ず、貯蓄額は2,000万円を下回ります。

小林さん夫婦だけであれば、80歳を超えて2,000万円の預貯金と公的年金があるため、介護等も含め生活は成り立つ可能性は高いです。しかし、夫婦亡き後のさおりさんの生活までとなった場合には、今のまま仕事もせず無収入となれば、厳しい現実が待っているのではないでしょうか。

②経済的自立

さおりさんは、経済的に自立し、長期的に安定した収入源の確保をする必要があります。ひとり親の経済的支援として、児童扶養手当があります。児童扶養手当は、離婚などを理由にひとり親家庭となった場合、子が18歳に達する日以後の最初の3月31日まで支給されます(*3)。

全部支給であれば、月額4万5,500円、一部支給であれば月額4万5,490円~1万740円となっています(令和6年4月時点)。所得制限が設けられており、収入によって受給額が決まります。加えて、ひとり親に関わらず児童手当が月1万円支給されます。

しかし、児童扶養手当と児童手当だけでは経済的自立は実現しません。さおりさんは仕事を見つけ働く必要があります。シングルマザーを対象とした就業支援には、国や自治体、NPO団体などが提供する様々なプログラムがあります。

例えば、ハローワークにはマザーズハローワーク (*4)という子育て中の母親に特化した就業支援を行っている専門窓口があります。求人の紹介やキャリアカウンセリング、職業訓練の案内を受けることができ、子連れで相談ができるキッズスペース付きの施設もあります。

また、自立支援教育訓練給付金(*5)という制度をご存じでしょうか。母子家庭の母又は父子家庭の父の能力開発の取組みを支援するもので、対象の教育訓練を受講し、終了した場合にその経費の6割が支給されます。なお、支給には要件がありますので、事前にお住いの自治体に相談するようにしましょう。

さおりさんがこれから経済的自立を目指すには、厳しい現実が待っているかもしれません。しかし、幸いにも家族がそばにいてくれています。様々な支援を活用しながら、長期的に安定した収入を得られるよう今から行動する必要があります。

出戻ったとしても、親子の関係は“自立”が前提

小林さんは、「今説明してくれたことを直接娘に伝えてほしい」と、FPにお願いしました。「娘とは距離も近くなり、遠慮もないだけに、最近は喧嘩になることが多く……。誰かに入ってもらうほうがスムーズです」とのこと。数日後、FPはさおりさんと小林さん夫婦と面談し、同様の説明をしました。

さおりさんは「今のままではダメだとはわかっていましたが、両親に甘えてしまう自分がいます。でも、いつまでも親がいてくれるわけではないですもんね。不安はついて回るけれど、できることを始めてみます」とのこと。また、小林さんも娘が離婚し、「どうにかしてあげたい」の一心で経済的援助をされていたと言います。しかし、それが逆に娘の自立を遠ざけていたということに今回FPの話を聞いて気づきました。

親が子どもの幸せを願うのは当然かもしれませんが、今回の小林さんのケースのように、すべての金銭的サポートをすることが必ずしも子どものためになるとは限りません。それが、自分たちの生活を苦しめる場合もあります。実際さおりさんが出戻ってきた時に、きちんとお金についての話をしていれば、こんなことにはならなかったはずです。

当然、親の亡き後も子どもと孫の生活は続いていくのでその時、困ることがないように、子どもの自立を促せる良い距離感を保つことが、安心した生活を手に入れることに繋がるのではないでしょうか。子どもが独立した後は、たとえ出戻ったとしても親子の関係は“自立”が前提と肝に銘じておきましょう。

<参照>

*1*2「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」p.3~4 厚生労働省https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf

*3「ひとり親家庭の支援について」p.73 こども家庭庁https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0a870592-1814-4b21-bf56-16f06080c594/1a35e485/20240911_policies_hitori-oya_62.pdf

*4マザーズハローワーク事業厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21046.html

*5「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」こども家庭庁https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/jiritsu-shien-kyuufukin

執筆/南真理  ファイナンシャル・プランナー

監修/伊達有希子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)  

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