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優しくしてくれるから、つい…〈年金月20万円、預貯金1,500万円〉堅実に暮らす71歳・元消防士の度重なる「家賃未払い」。駆けつけた息子が目にした「あまりに奇妙な光景」【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月24日 11時15分

優しくしてくれるから、つい…〈年金月20万円、預貯金1,500万円〉堅実に暮らす71歳・元消防士の度重なる「家賃未払い」。駆けつけた息子が目にした「あまりに奇妙な光景」【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚も珍しくなくなった昨今。厚生労働省の「令和4年度離婚に関する統計の概況」によると、同居期間が20年以上のカップルの離婚割合は上昇傾向にあり、令和2年度には離婚カップル全体の21.5%に達しています。離婚後に人生が好転する人もいれば、そうではないケースも少なからずあるでしょう。老後を「こんなはずじゃなかった……」としないための方策を、CFPでFP事務所MIRAI代表の山﨑 裕佳子氏が解説します。

退職と同時に「円満離婚」した71歳・元消防士

市川マサオさん(仮名:71歳)は高校卒業後、幼い頃からの夢であった消防士となり地元の町で働き始めます。

25歳のときに中学の同級生と結婚。一男一女を育て上げました。夫婦仲は悪いというわけではなかったものの、社交的な妻と内向的なマサオさんとの価値観の違いが長年の間に徐々に深まり、60歳の定年を機に離婚する決断をします。

子どもたちはすでに独立していて、2年前には両親も相次いで他界しています。マサオさんは、やっと重い荷物を下ろせるという気持ちとなり、一から第二の人生を始めるのも悪くないと考えたそうです。

いわゆる円満離婚です。

持ち家と資産の一部は財産分与で元妻へ

婚姻期間中、マサオさんの妻は、パート勤めで家計を助け、家事や育児も人並み以上に頑張ってきました。

法的には、婚姻中に築いた財産や負債はその名義にかかわらず共有の財産とみなし、半分ずつ分け合うとする原則があります。ただ、二人の合意があれば、財産分与は任意の割合で構いません。

マサオさんの資産は、家と退職金を含めた預金が2,500万円です。住宅ローンは完済しており、その他の負債はありません。二人は協議の上、預貯金のうち1,000万円と家を妻が取得し、マサオさんは1,500万円をもって隣市にマンションを借りて暮らすことになりました。

マサオさんの暮らしは老齢年金が支えていくことになりますが、マサオさんは妻への年金分割にも合意しているため、年金受給額は月20万円です。

年金分割とは?

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金保険料に相当する年金額を年金の多いほうから少ないほうへ分割する制度。特に、専業主婦(夫)や扶養内で働いてきて厚生年金の受給がない側にメリットがあります。年金分割には次の2つの方法があります。

合意分割

按分割合が当事者間の合意によって決められます。合意がまとまらない場合は、どちらかの請求により、裁判手続き(調停または審判)によって決定します。2007年4月1日以後の離婚が対象となります。

3号分割

当事者双方の合意は必要ありません。2008年4月1日以後の婚姻期間中の相手方の厚生年金金額から1/2を、国民年金第3号保険者である妻(夫)へ分割する制度です。

ともに、請求期限は離婚の翌日から2年以内となります。

家賃滞納で「老人性うつ」が発覚

現役中は仕事と家族一筋だったため、友人といえる人がほとんどいなかったマサオさん。社交的な性格でもなく、初対面の人とのコミュニケーションも得意なほうではありませんでした。

それでも自分を変えたいと一念発起。時間も体力も持て余していたため、体力維持と人脈作りを兼ねてスポーツジムに通った時期もありました。しかし、親密になると摩擦も起きやすくなるのが人間関係。仲間内のいざこざに巻き込まれたマサオさんは疲れを感じてしまい、スポーツジムを辞めてしまったそうです。

その後のマサオさんは、一人でいる時間が長くなってしまい、身体を動かさなくなったことで食欲も落ちました。夜もよく眠れていません。人と話す機会が極端に減って、TVの前で過ごす時間が増えました。気分が落ち込むことが増え、このままではいけないと思うものの、なかなか行動に移せなくなっていたようです。

そんなある日、マンションの管理会社から、隣県に住む息子に一本の電話が入ります。

「お父様が3ヵ月分の家賃を滞納しています。ご確認いただけますか?」とのこと。マンションを借りる際、息子が保証人になっていたのです。

慌てた息子は、父の住むマンションに向かいました。そして、玄関を開けて唖然としました。

男の一人暮らしのため、整理整頓されているとは思っていなかったものの、それにしても、という状態です。未開封の大きな段ボールがあちこちに散乱し、廊下はホコリがたまり放題です。

息子:「父さん、この段ボールは何? 何があったの?」

マサオさん:「通販で買ったんだ。便利なんだよ、通販って。すぐ届けてくれるんだ……。電話で話す女の子がとにかく親切で、話していると楽しくてさ……」

どうやら、家にこもりがちになってから、TVショッピングにはまってしまったようでした。人恋しさも手伝って、電話口に出る担当者との会話に寂しさを紛らわせていたようです。年齢的なこともあるのかもしれません、物忘れがひどくなり、支払い期日を把握することが難しくなっているようでした。

マサオさんは「老人性うつ」の症状を発症していました。

家賃を口座振替にしていなかったことが、家族がマサオさんの異変に気づくきっかけになりました。不幸中の幸いと考えるようにしたそうです。

一人暮らしの高齢者の住まいの選択肢

令和6年版高齢社会白書によると、2023年10月1日現在の高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は29.1%です。

65歳以上で一人暮らしをしている人の比率は、男女それぞれの人口に占める割合で2020年には男性15%、女性22.1%となっています。図表にもあるように、今後、高齢者の一人暮らしは増加する傾向にあると推測されています。

離婚や死別など一人暮らしとなる理由は違っても、終の棲家問題は歳を重ねれば誰もが直面する問題といえます。

マサオさんは、円満離婚の妻の老後の生活を案じて、離婚の際に持ち家を手放しました。自分には十分な年金と預金があると考えていたためです。

実際、マサオさんは金銭的な面で生活に困ることはありませんでしたが、精神的には一人暮らしを謳歌することはできなかったようです。

子の立場から見ると、一人暮らしが難しくなった親をどのようにサポートしたらいいのかは悩ましい問題です。同居という選択は双方ともに抵抗を感じる人が増えている昨今、施設という選択が現実味を帯びてきます。しかし、施設は特性や費用がさまざまで選び方が難しくなっているという側面もあります。

現時点で施設に入る意思がなくとも、不測の事態となったとき慌てることのないよう、親の希望に耳を傾け、資金面を把握して、介護施設についての一般的知識を備えておいたほうがよいのではないでしょうか。

介護施設は「民間施設」と「公的施設」に大別されます。民間施設のほうが入居条件はゆるいですが、利用料は高めです。資金面から公的施設を希望したとしても、たとえば、自立可能な人は特別養護老人ホームへの入居はできないなど、一定の制限が設けられていることは知っておきたいところです。

長生きリスクを考えた資金面の整理も必要です。途中で資金が底をつく可能性があっては安心して生活できません。自宅介護も含め、いざというときどうするのか、元気なうちに話し合い、親子の共通認識としておくことが理想的です。  

【参考】

厚生労働省令和4年度離婚に関する統計の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/dl/suii.pdf

離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-02.html

離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-03.html

令和6年版 高齢社会白書(全文)(PDF版) (cao.go.jp)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf

令和6年版 高齢社会白書(全文)(PDF版) (cao.go.jp)

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s1s_03.pdf

山﨑 裕佳子

FP事務所MIRAI

代表

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