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おかわり!…「年金月25万円の70代夫婦」まもなく老人ホーム入りのはずが、40代娘一家の毎週恒例行事〈恐怖の食べ放題〉で頓挫。「孫の顔が見られる」の大きな代償【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月30日 10時45分

おかわり!…「年金月25万円の70代夫婦」まもなく老人ホーム入りのはずが、40代娘一家の毎週恒例行事〈恐怖の食べ放題〉で頓挫。「孫の顔が見られる」の大きな代償【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、人手不足や気候変動により食料品の物価が高騰し続けています。特に米は31年ぶりの高値を記録、日本人の主食に大打撃です。本記事では、Aさんの事例とともに、昨今の物価高による影響をFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

娘家族に押しかけられて「食べ放題」される老夫婦

中部地方に住むAさん(75歳)。定年退職後は、妻(73歳)と2人で40年ほど前に建てた戸建て住宅を退職金で一部リフォームなどし、夫婦仲よく暮らしていました。年金は夫婦で月に約25万円受け取っています。2人ともいまのところは健康ですが、年齢も年齢なので、もうまもなくしたら夫婦2人で老人ホームにでも移ろうか、と話をしているところでした。

息子(47歳)は東京で家庭を持っており、年に1、2回ほどしか会えませんが、娘(44歳)はAさんの住まいから車で10分ほどの場所に10年前に分譲住宅を購入して住んでいます。Aさんの娘の夫(50歳)はサラリーマンで、子どもはまだ小6と小4の男の子2人です。Aさん夫婦が最近頭を悩ませているのは、この娘のほうだといいます。

「孫の顔が見られる!」と喜んだが…

Aさんが定年退職後、家が近いせいか孫を連れてちょくちょく遊びに来ていたのはいいのですが、最近は頻度が上がっていることで悩んでいます。以前は2、3週間に一度、家族で週末やってきて食事をして帰っていったのですが、去年くらいからは週に2、3回はやってきます。

娘は5年ほど前から家計を助けるためにパートで働いているのですが、「夕食の用意をする時間がなくって大変で。お母さんの手料理、おいしいのよね!」と言って平日は息子2人を連れてやってきます。週末などは夫も一緒に家族全員で押しかけてきます。

最初は「孫の顔が見られる」と喜んでいたAさん夫婦ですが、頻度が度を越して上がってくると、さすがにストレスになってきます。やがてAさんの妻からは、「孫は育ち盛りだから食べる食べる! 食事の用意も大変よ。帰ったら帰ったで、後片付けやら掃除やらで大変なのよ。娘は『パートで疲れているから』とかなんとかいって食べたらさっさと帰っちゃうんだから。こっちは若くないから早く寝たいのに。それから、なにより食費が大変なのよ。夫婦2人で年金暮らしなのに、作る量は多くなるし、私たちの食べたくないものを作らないといけないし。特に今年はお米の値上げがキツいのよ。スーパーで値段見て腰が抜けそうになったわ」と小言が止まりません。

Aさんも最初は妻をなだめていましたが、最近は元気な孫2人の相手をするのも疲れてしまい、先日など食事をしながら居眠りしてしまい、箸を落として孫に笑われてしまったこともありました。

新米価格が31年ぶりの高値

農林水産省が10月18日に発表した2024年産米の9月の相対取引価格は、玄米60㎏あたり2万2,700円でした。これは、記録的な冷夏が原因で2万3,607円を付けた「平成の米騒動」(1993年)以来31年ぶりの高値です。タイ米などを緊急輸入したことで、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

また、総務省が発表した9月の全国消費者物価指数によると、コメ類は前年同月比44.7%の上昇となっています。近年は、猛暑は当たり前のようになってきていますし、人手不足も深刻で、私たち日本人にとって重要な主食であるお米が手に入りにくくなっているようです。これは食卓の危機でもあります。さらに、帝国データバンクによると、2024年10月の食品の値上げは2,911品目に上っており、12月までの値上げ予定を含めると2024年の値上げの累計品目数は1万2,401品目に達する見込みです。

大企業を中心に賃上げが実施されているといっても、続く物価高を上回るものではなく、また、仕事を辞めて老後生活に入られた高齢者にとっては、急激な値上げラッシュはマネープランを大きく崩すものになります。

5年前とどのくらい食料品が値上がりしたのかを総務省の小売物価統計調査をもとに上昇率を計算しました(2019年9月と2024年9月との比較になっています)。わずか5年のあいだにこれだけ変わってしまったのか、と改めて数字で見ると驚きですね。

物価高に困窮する親世代、子世代

Aさんはいいます「可愛い娘だと思って小さいときから甘やかして育ててしまった。なにか言うと、もう来てくれないんじゃないか、と不安でしたが、自分たちのこれからの生活を考えると余計心配です。これじゃ、老人ホームに入る資金が足りないよ」。

Aさんの妻は意を決して、娘と話をすることにしました。娘は、「主人の収入が去年から減っちゃったの。下手したらリストラ候補よ。子どもたちはこれからもお金がかかってくるでしょ。それに住宅ローンも変動金利で組んじゃったから、これから返済額が増えないかと戦々恐々よ。でも、たしかにお母さんのいうとおりね。ちょっと甘えすぎちゃったわね。なんとか私たち家族で頑張ってみます。これからは迷惑がかからない程度に時々は顔は出すから。ごめんなさい」と、反省した様子だったといいます。

娘と話をしたあと、Aさん夫婦は「自分たちも住宅ローンを抱えながら子ども2人を育ててきたけれど、もっと家計や気持ちにもゆとりがあったよね。いつからこんな時代になっちゃったんだろうね」と寂しく語り合いました。  

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

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