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孫娘の喜ぶ顔が見たくて…「毎年100万円」の“贈与”を続けた82歳のおじいちゃん、税務調査で〈追徴税400万円〉を課され「何かの間違いでは」【税理士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月27日 11時15分

孫娘の喜ぶ顔が見たくて…「毎年100万円」の“贈与”を続けた82歳のおじいちゃん、税務調査で〈追徴税400万円〉を課され「何かの間違いでは」【税理士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「贈与税は年間110万円の基礎控除がある」という理由で、「年間110万円までの贈与であれば非課税」と思っている方も多いでしょう。しかし、いくつかのポイントに気をつけておかないと、あとになって税務調査によって多額の追徴税を課せられてしまうケースが少なくないと、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士はいいます。溺愛する孫に年間100万円の贈与を続けていたA夫妻は、なぜ生前贈与が認められなかったのでしょうか。みていきましょう。

愛する妻を亡くし、1人遺されたAさん

Aさんには、5歳年上の妻Bさんがいました。会社で出会った2人は結婚後も喧嘩することはほとんどなく、周囲からは「おしどり夫婦」と呼ばれるほど仲睦まじい生活を送ってきました。

Aさんが定年退職し、2人の時間ができてからも、毎日散歩やショッピングに出かけます。ときどき海外旅行にも足を伸ばすなど、幸せな日々が続いていました。

しかし、そんな暮らしは突然終わりを迎えます。85歳になったBさんが心筋梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまったのです。

当時80歳のAさんは、突然のことで大きなショックを受け憔悴しましたが、東京で暮らす長男の協力もあってなんとかお通夜とお葬式を済ませました。相続税の申告書についても、息子さんが「俺がやるよ」と言ってくれたこともあり、長男にお任せ。相続の諸手続きも無事終わったかにみえました。

心当たりはないが…2年後、税務署から来た「1本の電話」

妻の死から2年ほど経ったある日のことです。Aさんのもとに、税務署から連絡がありました。聞けば、「税務調査に伺いたい」といいます。

「よく覚えていないけど、まったく心当たりがないなあ。どうしてウチなんかに調査に来るのだろう?」……Aさんは疑問に思いながらも、特に断る理由もなかったため受け入れることにしました。

そして調査当日、2人の税務調査官がAさんの家を訪ねてきました。他愛のない世間話から始まり、徐々にAさんの警戒心もほぐれてきたころ、調査官は次のように尋ねました。「この通帳はなんでしょうか? お孫さんの名義のようですが……」。

Aさんは、「あぁ、これはですね、贈与ですよ贈与」と答え、通帳を作った目的について笑顔で話しました。

Aさん「孫が生まれたときに、『将来大学に進学したときや結婚するときに使ってほしい』と思ってね、家内と相談して口座を作ったんです。結局は家内が毎年100万円ずつコツコツと入金してくれていたみたいなんだけれどね。『孫が大きくなったときにびっくりさせよう』ということで、孫には内緒でこっそりやりましたよ。

最近はほら、なんでも高くなって、教育費もばかにならんでしょう。もう孫もずいぶん大きくなって、子どもより生前の家内に顔が似てきているように感じてね……。そろそろあげる頃かなぁなんて思ってるんですけれど。喜んだ顔を想像すると、いまからすごく楽しみなんです (笑)」

すると、さきほどまで楽しく雑談していたはずの調査官は、渋い顔で言いました。「なるほど……。Aさんのお気持ちは非常によくわかりますが、これは残念ながら生前贈与とは認められませんね」。

Aさんは、「あれ? どうしてかなあ。知り合いに『毎年110万円までの贈与は非課税だ』って聞いたから、100万円に決めたんですよ。どうして贈与にならんのですか?」

Aさんは納得がいかない様子ですが、結局、相続税本税と加算税を含め、400万円もの追徴税を課されることになってしまいました。

贈与は、「あげる人」「もらう人」両方の意思確認が必要

「贈与」とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、初めて成り立ちます。簡単にいえば、「あげます」「もらいます」というお互いの意思表示が必要ということです。

口頭・書面どちらでも構いませんが、民法では「書面の契約書による贈与でない場合は、実際にそれを実行しなければ、あとで取り消すことができる」とされていることから、万が一税務調査があったときのことを考慮すると、書面による贈与契約書を作成しておいたほうが無難でしょう。

Aさんのもとに税務調査が入ったワケ

今回のAさんのように、子や孫に「贈与」のつもりで金銭を渡している親や祖父母があとになって税務調査を受け、贈与だとは認められず「名義預金」であると指摘されるケースは多いです。

「名義預金」とは、所有者本人とは異なる名義の預金のことをいいます。税務調査において、子や孫に渡したお金がこの名義預金だと指摘されると、名義は異なるものの、実質的には本人の預金であると認定されてしまうのです。

たとえば子や孫の口座を作成し、そこに毎年お金を振り込んでおいたとしても、それをAさんのように本人に知らせていない場合、贈与ではなく名義預金とみなされて相続税の課税対象になってしまいます。

また、税務署は税務調査に入る前に、念入りに下調べを行っています。その職権により亡くなった人やその家族の預金通帳をチェックし、預金の流れを把握することができるのです。

そこで今回の事例のように、毎年100万円単位の大きな動きがある場合は、「これは贈与なのだろうか? あるいは名義預金なのではないだろうか?」などと疑問をもたれ、税務調査に入られやすくなってしまいます。

A夫妻が注意すべきだった「3つ」のポイント

では、AさんとBさんは、孫に贈与するにあたってどんな点に気をつければよかったのでしょうか? 

1.贈与契約書を作成する

まず、先述のように、贈与を始める際に双方(お孫さんが小さい場合は父母と)合意をとることが必要です。この際、贈与について合意があったことを第三者に示すためにも、「贈与契約書」を作成しておくといいでしょう。

さらに、公証人役場に行って「確定日付」をとっておくと、より客観性が高まります。確定日付とは、その日付に書類が存在していたことを証明するもので、契約書の証拠能力を高める役割があります。

1部700円の手数料が発生しますが、公証人役場や法務局に契約書を持参すれば、その場で取得することが可能です。

2.手渡しではなく、「口座振り込み」にする

お金を渡す場合は、現金を直接渡すのではなく、銀行口座に送金するとよいでしょう。日付や金額、贈与者・受贈者の情報が記録されるため、客観的な証拠となりえます。

3.贈与する時期や金額を毎年変更する

毎年決まった時期に同じ額を贈与していると、「定期贈与」とみなされることがあります。たとえば「1,000万円の財産を100万円ずつ贈与する」と約束し実行していった場合、毎年100万円の贈与ではなく合計額である1,000万円の贈与を受けたとみなされる恐れがあるのです。

したがって、毎年贈与の時期や金額を変えることをおすすめします。

贈与を行う際は、必ず「証拠」を残して

今回のAさんのように、孫に生前贈与をしているつもりが、後日税務調査により贈与と認められず、多額の追徴税が課されるケースは珍しくありません。

相続税の調査の際は、家族名義の口座残高も調べられますので、働いていない子どもや孫の口座に多額の預金がある場合、名義預金ではないかと疑われ調査されます。

したがって、贈与を行う際には、万が一の税務調査に備え今回紹介したような客観的な贈与の証拠を残すことを心がけてください。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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